源氏物語 第49帖 宿木(2)
女二の宮の婿選び
帝は毎日女二の宮のもとにいらしてはご覧になる。黒い喪服にやつれていらっしゃる様子は、ますます可愛らしく上品な様子がまさっている。お心の様子もたいそう大人びて、母女御よりももう少し落ち着いて重々しいところはまさっていらっしゃるのを、帝は安心してご覧になるが、実のところ母方にも後見として頼りになる叔父などのしっかりした人もいない。わずかに大蔵卿や修理大夫などという者は、女御とは腹違いの兄弟だった。特に世の評判も重くなく、高貴でもない人々を頼みの人としていらっしゃるのでは、女は気の毒なことが多いだろうと、帝はお一人の心で思い悩むのも穏やかでなかった。御前の菊がまだすっかり色変わりせず盛りの頃、空の気配も哀れに時雨れるにつけても、まずこの宮の御方にいらして昔のことなどを話すと、お返事などもおっとりしているものの、子どもっぽくなく申し上げるのを、帝は可愛くお思いになる。このようなご様子を分かってくれそうな人が大切にしてくれるのも、どうしていけないことがあろう。帝は、朱雀院の姫宮(女三の宮)を六条院(光源氏)に譲った折の評定などを思い出すと、しばらくは、いやはや物足りない、そうでなくてもいらしただろうにと言われることもあったが、源中納言(薫)が人より格別な様子でこうして万事を後見申し上げるからこそ、昔のご威勢も衰えず高貴な様子で生き長らえていらっしゃるようだ、そうでなければ心外なことも起きて自然と人に軽んじられることもあったろうなどと思い続けて、ともかくも自分の見ている世のうちに定めてしまおうかとお思い寄りになると、そのまま順序として、この中納言以外にふさわしい人はまたいなかった。皇子たちのそばに並べても何事も見劣りはしないだろうし、もとから思う人がいるといって聞き苦しいことを混ぜることもなさそうだが、ついにはそういうこともないではいられまい、そうならないうちにほのめかそうかなどと、折々お思いになった。
- 1日日ひ々々びににに渡渡わたらららせせせ給給たまひひいつゝつゝつつ見見み奉奉たてまつらららせせせ給給たまふふう。。。黑黑くろききき御御おんぞぞぞにににやつれやつれやつれててておはするおはするおわするさまさまさまいとゞいとゞいとどらうたげらうたげろうたげにににあてあてあてなるなるなる氣色氣色けしきまさりまさりまさり給給たまへへえりりり。。。御御おん心心こころざまざまざまもももいといといとよくよくよくおとなびおとなびおとなび給給たまひひいててて母母はは女女にょう御御ごよりよりよりももも今今いま少少すこししししづやかしづやかしずやかにににおもりかおもりかおもりかなるなるなる所所ところはははまさりまさりまさり給給たまへへえるるるををを、、、うしろうしろうしろ安安やすくくくははは見見み奉奉たてまつらららせせせ給給たまへへえどどど、、、誠誠まことにににははは御御おん母母はは方方かたとてとてとてももも後後うしろ見見みととと賴賴たのままませせせ給給たまふふうべきべきべきをぢをぢおじなどなどなどやうやうようのののはかばかしきはかばかしきはかばかしき人人ひともももなしなしなし。。。僅僅わずかににに大大おお藏藏くら卿卿きょうすりすりすりのののかみかみかみなどなどなどいふいふいうははは女女にょう御御ごにににもももことことこと腹腹ばらなりなりなりけりけりけり。。。殊殊ことににに世世よののの覺覺おぼえええおもりかおもりかおもりかにににもももあらあらあらずずずやんごとなからやんごとなからやんごとなからぬぬぬ人々人々ひとびとをををたのもしたのもしたのもし人人びとにてにてにておはせおはせおわせむむんににに、、、女女おんなははは心苦心苦こころぐるしきしきしき事事こと多多おおかりかりかりぬぬぬべきべきべきこそこそこそいとほしけれいとほしけれいとおしけれなどなどなど、、、御心御心みこころひとつひとつひとつなるなるなるやうやうようにににおぼしおぼしおぼしあつかふあつかふあつかうももも安安やすからからからざりざりざりけりけりけり。。。おおお前前まえののの菊菊きくうつろひうつろひうつろいはてはてはてゞゞで盛盛さかりなるなるなる頃頃ころ空空そらののの氣色氣色けしきももも哀哀あわれにににうちうちうちしぐるゝしぐるゝしぐるるにににももも、、、まづまづまずこのこのこの御御おん方方かたににに渡渡わたらららせせせ給給たまひひいててて昔昔むかしのののことことことなどなどなど聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふうににに、、、御御おんいらへいらへいらえなどなどなどもももおほどかおほどかおおどかなるなるなるものものものからからからいはけなからいはけなからいわけなからずずずうちうちうち聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふうをををうつくしくうつくしくうつくしく思思おもひひい聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふう。。。かやうかやうかようなるなるなる御御おんさまさまさまををを見見み知知しりりりぬぬぬべからべからべからむむん人人ひとのののもてもてもてはやしはやしはやし聞聞きこえええむむんもももなどなどなどかかかはははあらあらあらざらざらざらむむん。。。
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現代語訳
帝は毎日いらっしゃってはご覧になる。黒いお召し物にやつれていらっしゃる様子は、ますます可愛らしく、上品な様子がまさっていらっしゃる。お心の様子もたいそうよく大人びていらっしゃって、母女御よりも、もう少し落ち着いて重々しいところはまさっていらっしゃるのを、安心してご覧になるけれど、実のところ、御母方にも後見として頼りになさるべき叔父などのような、しっかりした人もいない。わずかに大蔵卿や修理大夫などという者は、女御とは腹違いの兄弟だった。特に世の評判も重くなく、高貴でもない人々を頼みの人としていらっしゃるのでは、女は気の毒なことが多いだろうのがかわいそうだなどと、帝のお心一つでお思い悩みになるのも穏やかでなかった。御前の菊がまだすっかり色変わりせず盛りの頃、空の気配も哀れに時雨れるにつけても、まずこの御方にいらっしゃって、昔のことなどを申し上げなさると、お返事などもおっとりしているものの、子どもっぽくなく申し上げなさるのを、可愛くお思い申し上げなさる。このようなご様子を分かってくれそうな人が、大切にして差し上げるのも、どうしていけないことがあろうか。
朱雀院の姫宮を六条院にお譲り申し上げなさった折の評定などを思い出しなさると、しばらくは、いやはや物足りないことだ、そうでなくてもいらっしゃれただろうにと申し上げることどもがあったけれど、源中納言が人より格別な様子で、こうして万事を後見申し上げるからこそ、昔のご威勢も衰えず、高貴な様子で生き長らえていらっしゃるようだ、そうでなければ、お心の外のことどもも起こって、自然と人に軽んじられなさることもあったろうなどと思い続けなさって、ともかくもご自分のご覧になる世のうちに定めてしまおうかとお思い寄りになると、そのまま順序として、この中納言以外にふさわしい人はまたいなかった。皇子たちのおそばに並べたとしても、何事も見劣りはしないだろうし、もとから思う人がいるといっても、聞き苦しいことなどを混ぜることもなさそうだが、ついにはそういうこともないではいられまい、そうならないうちに、そのようにほのめかしてみようかなどと、折々お思いになった。
意訳
帝は母を失った女二の宮を毎日見舞い、その成長ぶりを喜ぶが、母方に頼れる後見がいないことを案じる。かつて朱雀院が女三の宮を光源氏に託したように、自分も存命中に女二の宮の婿を決めようと考え、薫こそふさわしいと思い至る。
語釈・文法注
文法
- 「すりのかみ」(大藏卿すりのかみなどいふは)
- 修理大夫。宮中の修理を担当する役所の長官。
- 「うつろひはてゞ」(お前の菊うつろひはてゞ盛なる頃)
- 菊がまだ色変わりしきらないで。霜で色が変わる前の菊。
- 「朱雀院の姫宮」(朱雀院の姫宮を六條院に讓り聞え給ひしをり)
- 女三の宮。薫の母。朱雀院が光源氏に降嫁させた。
解説
帝は、朱雀院が女三の宮を光源氏に託した前例を思い出す。その女三の宮の子である薫に、今度は自分の娘を託そうとする。歴史が繰り返されようとしている。
帝は、薫に思う人がいることを知りながら、それでもいずれは結婚するだろうと考える。大君を失った薫の心を、帝は知らない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1004–1005頁(コマ213)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日