源氏物語 第48帖 早蕨(13)
六の君の裳着
左大臣(夕霧)は、六の君を匂宮に差し上げることをこの月にと決めていたのに、匂宮がこのように思いのほかの人を、この縁談より先にと言わんばかりに大切に据えて、六の君から離れていらっしゃるので、たいそう不快にお思いだと聞くのも気の毒なので、匂宮は手紙だけは時々差し上げる。六の君の裳着のことは、世に評判になって急いで準備していたのを延期するのも人の笑いものになるだろうから、二十日過ぎに着せた。夕霧は、同じ一族で珍しげはなくとも、この中納言(薫)をこそ他人に譲るのは惜しいので、婿にしようか、長年人知れず思っていた人も亡くして心細く物思いにふけっているそうだからなどと思い寄って、然るべき人を介して意向を探らせたが、薫は、世のはかなさを目の当たりにして、ひどくつらく、我が身も不吉に思われるので、どうしてもそういうことは気が進まないと、興ざめな様子だと聞いて、夕霧は、どうしてこの君までが、こちらから真剣に申し出たことを気乗りしない様子で扱うのかと恨んだが、親しい間柄ながら、人柄がたいそう気後れするほど立派なので、強いて説き伏せることもできなかった。
- 1左左ひだりのののおほおほおお殿殿とのははは、、、六六ろくののの君君きみををを宮宮みやににに奉奉たてまつりりり給給たまははわむむんことことことこのこのこの月月つきにににとととおぼしおぼしおぼし定定さだめめめたりたりたりけるけるけるににに、、、かくかくかく思思おもひひいののの外外ほかののの人人ひとをををこのこのこの程程ほどよりよりよりさきさきさきにににとととおぼしおぼしおぼし顏顏がおにににかしづきかしづきかしずきすゑすゑすえ給給たまひひいててて離離はなれれれおはすれおはすれおわすればばば、、、いといといと物物ものしげしげしげにににおぼしおぼしおぼしたりたりたりととと聞聞きききき給給たまふふうもももいとほしけれいとほしけれいとおしければばば、、、御御おん文文ふみははは時々時々ときどき奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。おんおんおん裳裳も着着ぎのののことことこと、、、世世よににに響響ひびきききててて急急いそぎぎぎ給給たまへへえるるるをををのべのべのべ給給たまははわむむんももも人人ひとわらへわらへわらえなるなるなるべけれべけれべければばば、、、廿廿はつか餘餘あまり日日にににに着着きせせせ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。同同おなじじじゆかりゆかりゆかりににに珍珍めずしげしげしげなくなくなくともともともこのこのこの中中ちゅう納納な言言ごんをををこそこそこそ人人ひとににに讓讓ゆずらららむむんががが口口くち惜惜おしきしきしきににに、、、さささもももやややなしなしなしてててましましまし、、、年年とし頃頃ごろ人人ひとしれしれしれぬぬぬものものものににに思思おもひひいけむけむけん人人ひとをををもももなくなくなくなしなしなしててて物物もの心心こころぼそくぼそくぼそくながめながめながめ居居い給給たまふふうなるなるなるをををなどなどなどおぼしおぼしおぼしよりよりよりててて、、、さるべきさるべきさるべき人人ひとしししててて氣色氣色けしきとらとらとらせせせ給給たまひひいけれけれけれどどど、、、世世よのののはかなさはかなさはかなさををを目目めににに近近ちかくくく見見みしししにににいといといと心心こころ憂憂うくくく身身みもももゆゝしくゆゝしくゆゆしくおぼゆれおぼゆれおぼゆればばば、、、いかにいかにいかにもももいかにいかにいかにもももさやうさやうさようののの有有あり樣樣さまははは物物ものうくうくうくなむなむなんとととすさまじげすさまじげすさまじげなるなるなるよしよしよし聞聞きききき給給たまひひいててて、、、いかでいかでいかでかかかこのこのこの君君きみさへさへさへおふなおふなおふなおふなおうなおうなことことこと出出いづるづるずることことことををを、、、物物もの憂憂うくくくはははもてもてもてなすなすなすべきべきべきぞぞぞととと恨恨うらみみみ給給たまひひいけれけれけれどどど、、、親親したしきしきしき御御おん中中なからひらひらいながらながらながらももも、、、人人ひとざまざまざまのののいといといと心心こころはづかしげはづかしげわずかしげににに物物ものししし給給たまへへえばばば、、、えええ强强しひひいてててももも聞聞きこえええ動動うごかしかしかし給給たまははわざりざりざりけりけりけり。。。
現代語訳
左大臣は、六の君を匂宮に差し上げることを、この月にとお決めになっていたのに、匂宮がこのように思いのほかの人を、この縁談より先にと言わんばかりにかしずき据えなさって、六の君から離れていらっしゃるので、たいそう不快にお思いになっていると匂宮がお聞きになるのも気の毒なので、お手紙は時々差し上げなさる。六の君の御裳着のことは、世に評判になって急いで準備していらっしゃったのを、延期なさるのも人の笑いものになるだろうから、二十日過ぎに着せて差し上げなさる。夕霧は、同じ一族で珍しげはなくとも、この中納言をこそ、他人に譲るのは惜しいので、婿にでもしようか、長年人知れず思っていたらしい人も亡くして、心細く物思いにふけっていらっしゃるそうだからなどとお思い寄りになって、然るべき人を介して意向を探らせなさったが、薫は、世のはかなさを目の当たりに見たので、たいそうつらく、我が身も不吉に思われるので、どうしてもそのようなことは気が進まないと、興ざめな様子だということをお聞きになって、どうしてこの君までが、こちらから真剣に申し出たことを、気乗りしない様子で扱うのかと恨みなさったが、親しい間柄ながらも、薫の人柄がたいそう気後れするほど立派でいらっしゃるので、強いて説き伏せ申し上げることもおできにならなかった。
意訳
夕霧は六の君を匂宮に嫁がせるつもりだったが、匂宮が中の君を迎えたので不快に思う。匂宮は気を遣って手紙だけは送る。夕霧は予定どおり六の君の裳着を行い、代わりに薫を婿にしようと打診するが、薫は大君の死で心を閉ざしており断る。夕霧は恨むが、薫の人柄に気後れして強くは言えない。
語釈・文法注
文法
- 「おぼし顏」(この程よりさきにとおぼし顏に)
- 思っていると言わんばかりの顔つきで。
- 「裳着」(おん裳着のこと)
- 女子の成人式。結婚の準備でもある。
- 「おふなおふな」(おふなおふなこと出づることを)
- 誠意を込めて、一生懸命に。
解説
中の君の二条院入りは、夕霧の六の君との縁談に影を落とす。この確執は、次の宿木の帖で匂宮と六の君の結婚として現実化し、中の君を苦しめることになる。
薫は夕霧の婿取りの申し出を断る。大君を失った薫は、世のはかなさを思って結婚を避ける。しかし宿木の帖では、帝の女二の宮との結婚が薫を待っている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1000–1001頁(コマ211)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日