源氏物語 第48帖 早蕨(6)
喪明けと薫の贈り物
喪服も期限のあることなので脱ぎ捨てるが、禊ぎも浅い気がする。母君は顔も見なかったので恋しいとも思われず、その代わりにもこのたびの喪服を深く染めようと心には思い言いもするが、さすがにそうする理由もないことなので、飽かず悲しいことこの上ない。中納言殿から、御車や前駆の人々、陰陽師の博士などを差し向けた。薫は、はかないことよ、霞の衣を裁ったばかりなのに、花の紐を解く折も来てしまったと詠む。本当に色とりどりにたいそう美しい衣を差し上げた。お移りの時の禄なども、大げさではないものの、品々を細やかに考えてたいそう多い。折につけて忘れない様子のお心寄せがめったになく、「ご兄弟などでも、とてもこうまではなさらないものですよ」などと女房たちは申し上げる。地味な老女房たちの心には、こういう方面を心にしみて申し上げる。若い女房たちは「時々お見かけ慣れていたのに、今はとよそになってしまわれるのを、どんなに寂しく恋しくお思いになるでしょう」と言い合っている。
- 1御御おんぶくぶくぶくもももかぎりかぎりかぎりあるあるあることことことなれなれなればばば脫脫ぬぎぎぎすてすてすて給給たまふふうににに、、、みそぎみそぎみそぎももも淺淺あさききき心心こころちちちぞぞぞするするする。。。おやおやおやひとひとひと所所ところははは見見み奉奉たてまつらららざりざりざりしかしかしかばばば戀戀こいしきしきしきことことこともももおもほえおもほえおもおえずずず、、、そのそのその御御おんかはりかはりかわりにににもももこのこのこの度度たびののの衣衣きぬををを深深ふかくくく染染そめめめむむんととと心心こころにににはははおぼしおぼしおぼしのたまへのたまへのたまえどどど、、、さすがさすがさすがにににさるべきさるべきさるべきゆゑゆゑゆえもももなきなきなきわざわざわざなれなれなればばば飽飽あかかかずずず悲悲かなしきしきしきことことことかぎりかぎりかぎりなしなしなし。。。中中ちゅう納納な言言ごん殿殿どのよりよりより御御おん車車くるまごごごぜんぜんぜんののの人々人々ひとびとはかせはかせはかせなどなどなど、、、奉奉たてまつれれれ給給たまへへえりりり。。。「「「はかなしはかなしはかなしやややかすみかすみかすみののの衣衣ころもたちたちたちしししまにまにまに花花はなのののひもひもひもとくとくとくをりをりおりももも來來きにににけりけりけり」」」。。。げにげにげにいろいろいろいろいろいろいといといと淸淸きよらにらにらにててて奉奉たてまつれれれ給給たまへへえりりり。。。御御おんわたりわたりわたりののの程程ほどのののかづけかづけかずけものものものどもどもどもなどなどなど、、、ことごとしからことごとしからことごとしからぬぬぬものものものからからから品品しな々々じなこまやかこまやかこまやかにににおぼしおぼしおぼしやりやりやりつゝつゝつついといといとおほかりおほかりおおかり。。。折折おりにににつけつけつけてててははは忘忘わすれれれぬぬぬさまさまさまなるなるなる御心御心みこころよせよせよせのののありがたくありがたくありがたく、、、「「「はらからはらからはらからなどなどなどももも、、、えええいといといとかうかうこうまでまでまではははおはせおはせおわせぬぬぬわざわざわざぞぞぞ」」」などなどなど人々人々ひとびとははは聞聞きこえええしらすしらすしらす。。。あざやかあざやかあざやかならならならぬぬぬふるふるふる人人びとどもどもどもののの心心こころにににははは、、、かゝるかゝるかかる方方かたををを心心こころにににしめしめしめててて聞聞きこゆゆゆ。。。若若わかききき人々人々ひとびとははは「「「時々時々ときどきももも見見み奉奉たてまつりりりならひならひならいててて、、、今今いまはははとととことことことざまざまざまににになりなりなり給給たまははわむむんをををさうざうしくさうざうしくそうぞうしくいかにいかにいかに戀戀こいしくしくしく覺覺おぼえええさせさせさせ給給たまははわむむん」」」ととと聞聞きこえええあへあへあえりりり。。。
現代語訳
喪服も期限のあることなので脱ぎ捨てなさるにつけ、禊ぎも浅い心地がする。母君一人は見申し上げなかったので、恋しいことも思われず、その代わりにも、このたびの喪服を深く染めようと、心にはお思いになりおっしゃるけれど、さすがにそうすべき理由もないことなので、飽かず悲しいことこの上ない。中納言殿から、御車や前駆の人々、博士などを差し向けなさった。「はかないことよ、霞の衣を裁ったばかりなのに、花の紐を解く折も来てしまった」。本当に色とりどりに、たいそう美しい衣を差し上げなさった。お移りの際の禄なども、大げさではないものの、品々を細やかにお考えになって、たいそう多い。折につけて忘れない様子のお心寄せがめったになく、「ご兄弟などでも、とてもこうまではなさらないものですよ」などと女房たちは申し上げ知らせる。地味な老女房たちの心には、このような方面を心にしみて申し上げる。若い女房たちは「時々お見かけし慣れていたのに、今はとよそになってしまわれるのを、どんなに寂しく恋しくお思いになるでしょう」と申し上げ合っている。
意訳
中の君は姉の喪服を脱ぐ。母の顔を知らない中の君にとって、姉は母代わりであり、その喪服をもっと深く染めたいと思う。薫は、喪明けと移転のための車や衣装、禄を細やかに贈り、霞の衣を脱いで花の衣を着る時が来たと歌を添える。女房たちは薫の心づかいをほめ、別れを惜しむ。
語釈・文法注
文法
- 「おやひと所は見奉らざりしかば」(おやひと所は見奉らざりしかば)
- 母君。中の君は生まれてすぐ母を亡くしたので、母の喪には服していない。
- 「はかせ」(御車ごぜんの人々はかせなど)
- 博士。移転の日取りなどを占う陰陽師。
- 「かすみの衣」(はかなしやかすみの衣たちしまに)
- 霞の衣。喪服。「たち」に「裁ち」と「(霞が)立ち」を掛ける。
解説
中の君は、母の代わりに姉の喪服を深く染めたいと思う。大君は中の君にとって姉であると同時に、母でもあった。
薫の贈り物は、喪明けと移転の両方を気づかう。兄弟以上の心づかいと女房たちはほめるが、薫の心には大君への思いと中の君への微妙な思いが混じり合っている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、994–995頁(コマ208)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日