源氏物語 第48帖 早蕨(2)
姉に似る中の君
たいそう盛りで美しさの多い中の君が、さまざまな物思いに少し面痩せしているのが、かえってたいそう上品で優美な様子がまさって、亡き大君にも似て見える。姉妹が並んでいらした時は、それぞれに違っていて全く似ているとも見えなかったのに、ふと忘れると大君かと思われるほど似通っているのを、女房たちは、中納言殿が、亡骸だけでも留めて見られたらと朝夕に恋い慕っていらっしゃるようなのに、同じことなら中の君が薫とご縁を結ぶ宿縁でなかったことよと残念がる。薫のお付きの人が宇治に通ってくる便りに、互いの様子は絶えず聞き交わしている。薫が尽きることなく悲しみに沈んで、新年とも言わずに泣き顔になっていると聞いても、中の君は、本当にその場限りの浅い心ではなかったのだと、今になって哀れも深く思い知られる。匂宮は宇治へ通うことがたいそう窮屈でめったにできないので、中の君を京にお移ししようと思い立った。
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現代語訳
たいそう盛りで、美しさの多くいらっしゃる中の君が、さまざまなお物思いに少し面痩せしていらっしゃるのが、かえってたいそう上品で優美な様子がまさって、亡き大君にも似てお見えになる。姉妹が並んでいらっしゃった時は、それぞれで、全く似ていらっしゃるとも見えなかったのに、ふと忘れると、大君かと思われるほど似通っていらっしゃるのを、女房たちは、中納言殿が、亡骸だけでも留めて拝見できるものならばと、朝夕に恋い慕い申し上げていらっしゃるようなのに、同じことなら、中の君が薫と結ばれ申し上げなさるご宿縁ではなかったことよと、拝見する女房たちは残念がる。あの薫のお付きの人が通ってくる便りに、ご様子は絶えず聞き交わしていらっしゃった。薫が尽きることなく悲しみに沈みなさって、新年とも言わず、泣き顔になっていらっしゃると聞きなさっても、中の君は、本当にその場限りの浅い心ではいらっしゃらなかったのだと、今になってますます哀れも深く思い知られる。匂宮は、宇治へお通いになることがたいそう窮屈でめったにできないので、中の君を京にお移し申し上げようと思い立ちなさった。
意訳
物思いに面痩せした中の君は、亡き姉に似てくる。女房たちは、中の君が薫と結ばれていればと惜しむ。中の君は、新年にも泣き暮らす薫の深い心を思い知る。匂宮は、宇治に通いにくいので中の君を京に迎えようと決める。
語釈・文法注
文法
- 「うちおも瘠せ」(少しうちおも瘠せ給へるしも)
- 面痩せ。顔がやつれること。
- 「からをだに」(からをだに留めて見奉るものならましかば)
- 亡骸だけでも。薫の大君への執着。
- 「いやめ」(いやめになむなり給へる)
- 泣き顔。
解説
中の君が姉に似てくることは、のちに薫が中の君に心を寄せるきっかけとなる。亡き人の面影を生きている人に求める薫の心は、この帖から始まり、浮舟の物語へと続いていく。
中の君は、薫の悲しみの深さを知って、その誠実さを改めて思う。姉が拒み続けた薫の心が、姉の死後に初めて中の君に伝わる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、992–993頁(コマ207)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日