源氏物語 第46帖 椎本(31)
喪服の姉妹の垣間見
まず一人が出てきて、几帳から覗いて、薫のお供の人々があちこち行き交い涼み合っているのを見ている(中の君)。濃い鈍色の単衣に、萱草色の袴が引き立っているのが、かえって趣が変わって華やかに見えるのは、着こなしている人柄のせいだろう。帯をはかなげに結んで、数珠を引き隠して持っている。たいそうすらりとして姿の美しい人で、髪は袿の丈に少し足りないほどだろうと見えて、末まで乱れもなく、つやつやとたっぷりと美しい。横顔などもああかわいらしいと見えて、つややかで柔らかくおっとりとした雰囲気は、女一の宮もこのような様子でいらっしゃるだろうと、ほのかに拝見したのとも思い比べられて嘆息が漏れる。またもう一人が膝行して出てきて、「あの障子は丸見えになりませんか」とこちらを見やる心づかいは、うちとけない様子で、趣がありそうだと思われる(大君)。頭の形や髪の生え際は、もう少し上品で優美な様子である。「あちらには屏風も添えて立てておきました。急いで覗きなさることもないでしょう」と若い女房たちが無心に言うのがいる。大君は「ひどいことになりそうなこと」と言って、気がかりそうに膝行して入る様子は、気高く奥ゆかしい気配が添って見える。黒い袷を一重ね、同じような色合いを着ているが、こちらは親しみやすく優美で、しみじみと痛々しく思われる。髪はさっぱりするほど抜け落ちたのだろう、末が少し細って、色つやとかいうのか翡翠のようで、たいそう美しく、糸を縒りかけたようだ。紫の紙に書いた経を片手に持っている手つきは、あの人よりも細くて、痩せ痩せとしているようだ。立っていた君(中の君)も障子口に座って、何事だろうか、こちらを見やって笑っているのが、たいそう愛嬌がある。
- 1まづまづまず一一ひと人人りたちたちたち出出いでででゝゝて、、、几几き帳帳ちょうよりよりよりさしさしさしのぞきのぞきのぞきててて、、、このこのこの御御おん供供ともののの人人ひと人人びとのののとかうとかうとこう行行ゆきききちがひちがひちがい凉凉すずみみみあへあへあえるるるををを見見み給給たまふふうなりなりなりけりけりけり。。。濃濃こきききにびにびにび色色いろのののひとへひとへひとえににに、、、くわざうくわざうかんぞうののの袴袴はかまのののもてもてもてはやしはやしはやしたるたるたる、、、なかなかなかなかなかなかさまさまさまかはりかはりかわりててて、、、花花はなやかやかやかなりなりなりととと見見みゆるゆるゆるははは、、、着着きなしなしなし給給たまへへえるるる人人ひとがらがらがらなめりなめりなめり。。。帶帶おびはかなげはかなげはかなげにににしししなしなしなしててて、、、珠珠ず數數ずひきひきひき隱隱かくしししてててももも給給たまへへえりりり。。。いといといとそびやかそびやかそびやかににに、、、やうだいやうだいようだいをかしげをかしげおかしげなるなるなる人人ひとののの、、、かみかみかみうちきうちきうちきににに少少すこしししたへたへたえぬぬぬ程程ほどならならならむむんととと見見みえええててて、、、末末すえまでまでまで塵塵ちりのののまよひまよひまよいなくなくなく、、、つやつやつやつやつやつやとととこちたうこちたうこちとう美美うつくしげくしげくしげなりなりなり。。。かたはらかたはらかたわらめめめなどなどなどあなあなあならうたげらうたげろうたげととと見見みえええててて、、、匂匂におひひいやかやかやかにににやはらかやはらかやわらかにににおほどきおほどきおおどきたるたるたるけはひけはひけはい、、、女女おんな一一いちの宮宮みやもももかうかうこうざまざまざまにににぞぞぞおはすおはすおわすべきべきべきとととほのほのほの見見み奉奉たてまつりりりしししももも思思おもひひいくらべくらべくらべられられられてててうちうちうちなげかなげかなげかるるる。。。
- 2またまたまたゐざりゐざりいざり出出いでででゝゝて、、、かのかのかのさうじさうじそうじはははあらはあらはあらわにににもももこそこそこそあれあれあれととと見見みおこせおこせおこせ給給たまへへえるるる用用よう意意い、、、うちうちうちとけとけとけたらたらたらぬぬぬさまさまさましししててて、、、よしよしよしあらあらあらむむんとととおぼゆおぼゆおぼゆ。。。頭頭かしらつきつきつきかんざしかんざしかんざしのののほどほどほど、、、今今いま少少すこしししあてあてあてににになまめかしきなまめかしきなまめかしきさまさまさまなりなりなり。。。「「「あなたあなたあなたににに屏屏びょう風風ぶももも添添そへへえててて立立たてててゝゝて侍侍はべりりりつつつ。。。急急いそぎぎぎてててしもしもしものぞきのぞきのぞき給給たまははわじじじ」」」ととと若若わかききき人々人々ひとびと何何なに心心こころなくなくなくいふいふいうありありあり。。。「「「いみじういみじういみじゅうもももあるあるあるべきべきべきわざわざわざかなかなかな」」」とてとてとて、、、うしろめたげうしろめたげうしろめたげにににゐざりゐざりいざり入入いりりり給給たまふふう程程ほど、、、けけけ高高だこううう心心こころにくきにくきにくきけはひけはひけはい添添そひひいててて見見みゆゆゆ。。。黑黑くろきききあはせあはせあわせ一一ひとかさねかさねかさね同同おなじじじやうやうようなるなるなる色色いろあひあひあいををを着着き給給たまへへえれれれどどど、、、これこれこれはははなつかしうなつかしうなつかしゅうなまめきなまめきなまめきててて、、、哀哀あわれげげげににに心苦心苦こころぐるしうしうしゅうおぼゆおぼゆおぼゆ。。。髮髮かみさばらかさばらかさばらかなるなるなる程程ほどににに落落おちちちたるたるたるなるなるなるべしべしべし、、、末末すえ少少すこしししほそりほそりほそりててて、、、色色いろなりなりなりとととかかかいふいふいうめるめるめるひすゐひすゐひすいだちだちだちててていといといとをかしげをかしげおかしげにににいといといとをををよりよりよりかけかけかけたるたるたるやうやうようなりなりなり。。。紫紫むらさきののの紙紙かみににに書書かきききたるたるたる經經きょうををを、、、片片かた手手てににに持持もちちちたまへたまへたまえるるる手手てつきつきつき、、、かれかれかれよりよりよりもももほそほそほそさささまさりまさりまさりてててやせやせやせやせやせやせなるなるなるべしべしべし。。。立立たちちちたりたりたりつるつるつる君君きみもももさうじさうじそうじ口口ぐちににに居居いててて、、、何何なに事事ごとにににかかかあらあらあらむむん、、、こなたこなたこなたををを見見みおこせおこせおこせててて笑笑わらひひいたるたるたる、、、いといといとあいぎやうあいぎやうあいきょうづきづきずきたりたりたり。。。
現代語訳
まず一人が立ち出て、几帳から覗いて、このお供の人々があちこち行き交い、涼み合っているのをご覧になっているのであった。濃い鈍色の単衣に、萱草色の袴が引き立っているのが、かえって趣が変わって華やかだと見えるのは、着こなしていらっしゃる人柄のせいなのだろう。帯をはかなげに結んで、数珠を引き隠して持っていらっしゃった。たいそうすらりとして、姿の美しい人で、髪は袿の丈に少し足りないほどだろうと見えて、末まで塵ほどの乱れもなく、つやつやとたっぷりと美しい。横顔なども、ああかわいらしいと見えて、つややかで柔らかく、おっとりとした雰囲気は、女一の宮もこのような様子でいらっしゃるのだろうと、ほのかに拝見したのとも思い比べられて、嘆息が漏れる。
またもう一人が膝行して出てきて、「あの障子は丸見えになりませんか」とこちらを見やりなさる心づかいは、うちとけない様子で、趣がありそうだと思われる。頭の形や髪の生え際は、もう少し上品で優美な様子である。「あちらには屏風も添えて立てておきました。急いで覗きなさることもないでしょう」と、若い女房たちが無心に言うのがいる。「ひどいことにもなりそうなことね」と言って、気がかりそうに膝行してお入りになる様子は、気高く奥ゆかしい気配が添って見える。黒い袷を一重ね、同じような色合いを着ていらっしゃるが、こちらは親しみやすく優美で、しみじみと痛々しく思われる。髪はさっぱりするほど抜け落ちたのだろう、末が少し細って、色つやとかいうのか、翡翠のようで、たいそう美しく、糸を縒りかけたようである。紫の紙に書いた経を片手に持っていらっしゃる手つきは、あの人よりも細さが勝って、痩せ痩せとしているようだ。立っていた君も障子口に座って、何事だろうか、こちらを見やって笑っているのが、たいそう愛嬌がある。
意訳
薫がのぞくと、中の君が几帳からお供の人々を見ている。喪服を華やかに着こなし、つややかでおっとりとした美しさは、女一の宮を思わせる。大君は障子が丸見えではと気づかい、膝行して奥へ入る。大君は気高く奥ゆかしく、悲しみに痩せて、紫の紙の経を手にしている。中の君は障子口でこちらを見て愛嬌よく笑う。
語釈・文法注
文法
- 「くわざうの袴」(くわざうの袴のもてはやしたる)
- 萱草色の袴。黄みがかった赤色。喪に用いる。
- 「かみうちきに少したへぬ程」(かみうちきに少したへぬ程ならむ)
- 髪が袿の丈に少し足りないほど。長く豊かな髪。
- 「ひすゐだちて」(ひすゐだちていとをかしげに)
- 翡翠のように。つややかな黒髪の美しさ。
- 「あいぎやうづきたり」(いとあいぎやうづきたり)
- 愛嬌がある。
解説
椎本の巻は、薫の垣間見で閉じられる。中の君は華やかでおっとりとした美しさ、大君は気高く奥ゆかしい美しさと、姉妹の対照が鮮やかに描かれる。悲しみに痩せた大君の姿は、後の大君の運命を予感させる。
薫の目は、華やかな中の君よりも、痩せて経を手にする大君に引きつけられる。薫の大君への思いは、この垣間見でいっそう深まり、物語は総角の巻へと続いていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、930–932頁(コマ176–177)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日