源氏物語 第46帖 椎本(25)
匂宮の恋のとりなし
薫は「匂宮がたいそう妙に恨んでいらっしゃることがございます。亡き宮のしみじみとしたお一言を承っておいた様子などを、何かのついでに漏らし申し上げたのでしょうか。またたいそう抜け目のないご性分で推し量りなさったのでしょうか。私に、何とかうまく取り持ってくれと頼みにしているのに、つれない様子なのは私がしくじっているのだと、たびたび恨みなさるので、心外なことと思っておりますが、ここへの案内役として、それほど言い逃れもできませんのに、どうしてそんなにすげなくお扱いになるのでしょう。色好みでいらっしゃるように世間は言いふらしているようですが、心の底は不思議なほど深くいらっしゃる宮です。いい加減な言葉をかけなさる相手で、気軽に靡きやすいような者などは、珍しくもないものと見下していらっしゃるのではと聞くこともございます。何事にも成り行きに従って、我を通すこともなくおっとりしている人こそ、ただ世の扱いに従って、ああもこうも適当に見なして、少し心に違うことがあってもどうしようもない、そうなるべき縁なのだなどと思いなすようなので、かえって長続きする例にもなります。一度崩れ始めると、竜田川の濁るような悪い評判を立て、言いようもなく名残のないようなことなども皆混じるようですが、心が深くしみなさるようなお心にかない、意に背くことも多くなさらない方を、決して軽々しく始めと終わりが違うようなことはお見せにならないご様子です。人が存じ上げないことも私はよく存じ上げておりますので、もし似つかわしくそうでもとお思い寄りなら、その取り持ちなどは心の限り尽くしてお仕えいたしましょう。宇治への中道の往来で足は痛くなるでしょうが」とたいそう真剣に言い続けるので、大君は自分自身のこととは思いもかけず、親代わりのように答えようと思い巡らすが、やはり言うべき言葉もない気がして、「どのようにお答えしたものか、懸想めいたことを言い続けなさるので、かえって申し上げることも思いつきませんで」と笑うのも、おっとりしているものの、気配は趣深く聞こえる。
- 1「「「宮宮みやのののいといといとあやしくあやしくあやしく恨恨うらみみみ給給たまふふうことことことののの侍侍はべるるるかなかなかな。。。哀哀あわれなりなりなりししし御御おん一一ひとことことことををを承承うけたまわりりり置置おきききしししさまさまさまなどなどなど、、、事事ことののの序序ついでにににもももややや漏漏もらししし聞聞きこえええたりたりたりけむけむけん。。。又又またいといといと隈隈くまなきなきなき御心御心みこころのののさがさがさがにてにてにて推推おししし量量はかりりり給給たまふふうにににややや侍侍はべらららむむん。。。こゝこゝここににになむなむなんともかくもともかくもともかくも聞聞きこえええさせさせさせなすなすなすべきべきべきとととたのむたのむたのむををを、、、つれなきつれなきつれなき御御おん氣色氣色けしきなるなるなるはははもてもてもてそこなひそこなひそこない聞聞きこゆるゆるゆるぞぞぞととと度度たび々々たび怨怨えんじじじ給給たまへへえばばば、、、心心こころよりよりより外外ほかなるなるなる事事ことととと思思おもひひい給給たまへへえれれれどどど、、、里里さとのののしるべしるべしるべいといといとこよなうこよなうこよのうもももえええあらがひあらがひあらがい聞聞きこえええぬぬぬををを、、、何何なにかかかはははいといといとさしもさしもさしももてもてもてなしなしなし聞聞きこえええ給給たまふふうらむらむらん。。。すいすいすい給給たまへへえるるるやうやうようににに人人ひとははは聞聞きこえええなすなすなすべかべかべかめれめれめれどどど、、、心心こころののの底底そこ怪怪あやしうしうしゅう深深ふこうううおはするおはするおわする宮宮みやなりなりなり。。。なほざりなほざりなおざりごとごとごとなどなどなどのたまふのたまふのたまうわたりわたりわたりののの、、、心心こころがらうがらうがろうててて靡靡なびきききやすやすやすなるなるなるなどなどなどををを珍珍めずらしからしからしからぬぬぬものものものににに思思おもひひいおとしおとしおとし給給たまふふうにににやややとととなむなむなん聞聞きくくくことことことももも侍侍はべるるる。。。なになになに事事ことにににもももあるあるあるににに從從したがひひいててて心心こころをををたつるたつるたつる方方かたもももなくなくなくおどけおどけおどけたるたるたる人人ひとこそこそこそ、、、唯唯ただ世世よのののもてもてもてなしなしなしににに從從したがひひいてててとととあるあるあるもももかゝるかゝるかかるもももなのめなのめなのめににに見見みなしなしなし少少すこししし心心こころににに違違たがふふうふしふしふしあるあるあるにににもももいかゞいかゞいかがはははせせせむむん、、、さるべきさるべきさるべきぞぞぞなどなどなどももも思思おもひひいなすなすなすべかべかべかめれめれめればばば、、、なかなかなかなかなかなか心心こころ長長ながきききためしためしためしににになるなるなるやうやうようもももありありあり、、、
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現代語訳
薫は「宮がたいそう妙に恨んでいらっしゃることがございますよ。亡き宮のしみじみとしたお一言を承っておきました様子などを、何かのついでにでも漏らし申し上げたのでしょうか。またたいそう抜け目のないご性分で、推し量りなさったのでございましょうか。私をこそ、ともかくもうまく取り持ってくれる者だと頼みにしているのに、つれないご様子なのは、私がしくじり申し上げているのだと、たびたびお恨みなさるので、心外なことと存じておりますが、ここへの案内役として、それほど言い逃れも申し上げられませんのに、どうしてそんなにすげなくお扱い申し上げなさるのでしょう。色好みでいらっしゃるように世間は言いふらしているようですが、心の底は不思議なほど深くいらっしゃる宮です。いい加減な言葉などをおかけになる相手で、気軽に靡きやすいような者などを、珍しくもないものと見下していらっしゃるのではないかと聞くこともございます。何事にも成り行きに従って、我を通すこともなくおっとりしている人こそ、ただ世の扱いに従って、ああもこうも適当に見なし、少し心に違う点があっても、どうしようもない、そうなるべき縁なのだなどとも思いなすようなので、かえって長続きする例になることもあり、
一度崩れ始めると、竜田川の濁るような悪い評判も立て、言いようもなく名残のないようなことなども皆混じるようですが、心が深くしみなさるようなお心にかない、意に背くことも多くなさらないような方を、決して軽々しく、始めと終わりが違うようなことなどはお見せにならないご様子です。人が存じ上げないことも、私はたいそうよく存じ上げておりますので、もし似つかわしく、そうでもとお思い寄りになるならば、その取り持ちなどは、心の限り尽くしてお仕えいたしましょう。宇治への中道の往来で、足は痛くなるでしょうが」と、たいそう真剣に言い続けなさるので、大君はご自身のこととはお思いもかけず、親代わりのようにお答えしようとお思い巡らしなさるが、やはり言うべき言葉もない気持ちがして、「どのようにお答えしたものか、懸想めいたようにおっしゃり続けなさるので、かえって申し上げることも思いつきませんで」とお笑いになるのも、おっとりしているものの、気配は趣深く聞こえる。
意訳
薫は匂宮が姉妹のつれなさを恨んでいると伝え、匂宮は色好みと言われるが心は深く、気に入った相手には誠実な人だと説く。縁組みを望むなら仲立ちを尽くすと言う。大君は中の君のことと思い、親代わりに答えようとするが言葉が見つからず、笑ってはぐらかす。
語釈・文法注
文法
- 「里のしるべ」(里のしるべいとこよなうもえあらがひ聞えぬを)
- 宇治への案内役。薫が匂宮に宇治のことを教えたこと。
- 「龍田の川の濁る名」(龍田の川の濁る名をもけがし)
- 悪い評判。「竜田川」は紅葉の名所で、濁るという表現で浮き名を立てること。
- 「御中道」(御中道のほどみだりあしこそいたからめ)
- 京と宇治の間の道。取り持ちのために往来すること。
- 「かけがけしげに」(かけがけしげにのたまひ續くる)
- 懸想めいて、色恋めいて。
解説
薫は匂宮のために縁組みを取り持とうとする。匂宮の誠実さを説く薫の言葉は熱心だが、薫自身は大君を思っている。他人の恋を取り持ちながら、自分の恋は言い出せない薫の複雑な立場が表れている。
大君は薫の話を中の君のことと受け取り、自分のこととは思わない。大君は自分は結婚せず、妹の幸せを見届けようと考えている。この大君の思いが、後の総角の巻の展開を決定づけることになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、926–927頁(コマ174)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日