源氏物語 第46帖 椎本(22)
年の暮れの心細さ
それにしても、あきれるほど明け暮れていくのは月日であった。このように頼みにしがたかった父宮の命を、昨日今日のこととは思わずに、ただ世の常の定めないはかなさばかりを明け暮れのこととして見聞きしていたので、自分も父も、後れ先立つほどの間もそうはあるまいなどと思っていたことよ、過ぎた日々を思い続けると、何の頼もしい暮らしでもなかったが、ただいつとなくのどかに物思いにふけって過ごし、恐ろしく気がかりなこともなく過ごしてきたのに、風の音も荒々しく、見慣れない人影も連れ立って案内を乞うと、まず胸がつぶれて恐ろしく心細く思われることまで加わったのが、ひどく耐えがたいことだと、姉妹二人で語り合いながら、涙で袖の乾く間もなく過ごしているうちに、年も暮れてしまった。雪や霰の降りしきる頃は、どこでもこのような風の音だが、今初めて思い入った山住みのような心地がする。女房たちなどは、「ああ、年が変わろうとしています。心細く悲しいことばかりなので、改まる春を待ち迎えたいものです」と、気を落とさずに言うのも、姫君たちはありがたいことだと聞く。
- 1さてもさてもさてもあさましうあさましうあさましゅうててて明明あかししし暮暮くらさささるゝるゝるるははは月月つき日日ひなりなりなりけりけりけり。。。かくかくかく賴賴たのみみみ難難がたかりかりかりけるけるける御御おん世世よををを昨日昨日きのう今今け日日きょうとととははは思思おもははわででで、、、唯唯ただ大大おおかたかたかた定定さだめなきなきなきはかなさはかなさはかなさばかりばかりばかりををを明明あけ暮暮くれのののことことことににに聞聞きききき見見みしかしかしかばばば、、、我我わももも人人ひとももも後後おくれれれさきだつさきだつさきだつ程程ほどしもしもしもやややはははへへへむむんなどなどなどうちうちうち思思おもひひいけるけるけるよよよ、、、きききししし方方かたををを思思おもひひい續續つづくるくるくるももも、、、何何なにのののたのもしげたのもしげたのもしげなるなるなる世世よにににもももあらあらあらざりざりざりけれけれけれどどど、、、唯唯ただいついついつとととなくなくなくのどかのどかのどかににに眺眺ながめめめすぐしすぐしすぐし、、、物物もの恐恐おそろしくしくしくつゝましきつゝましきつつましきことことこともももなくなくなくててて經經へつるつるつるものものものををを、、、風風かぜののの音音おとももも荒荒あららからからかににに、、、例例れい見見みぬぬぬ人人ひとかげかげかげもももうちうちうちつれつれつれこわづくれこわづくれこわずくればばば、、、まづまづまず胸胸むねつぶれつぶれつぶれててて物物もの恐恐おそろしくしくしく侘侘わびしうしうしゅう覺覺おぼゆるゆるゆることことことさへさへさへそひそひそいにににたるたるたるががが、、、いみじういみじういみじゅう堪堪たへへえ難難がたきききことことことゝゝと、、、二二ふた所所ところうちうちうち語語かたらひらひらいつゝつゝつつほすほすほすよよよもももなくなくなくてててすぐしすぐしすぐしたまふたまふたまうににに年年としももも暮暮くれれれにににけりけりけり。。。雪雪ゆき霰霰あられふりふりふりまくまくまくころころころはははいづくいづくいずくもももかくかくかくこそこそこそはははあるあるある風風かぜののの音音おとなれなれなれどどど、、、今今いま始始はじめめめててて思思おもひひいいりいりいりたらたらたらむむん山山やま住住ずみののの心地心地ここちししし給給たまふふう。。。女女おんなばらばらばらなどなどなど、、、「「「あはれあはれあわれとしとしとしはははかはりかはりかわりなななむむんとととすすす。。。心心こころぼそくぼそくぼそく悲悲かなしきしきしきことことことををを、、、改改あらたまるまるまるべきべきべき春春はる待待まちちち出出いでででゝゝてしししがながながな」」」ととと心心こころをををけたけたけたずずずいふいふいうもももありがたきありがたきありがたきことことことかなかなかなととと聞聞きききき給給たまふふう。。。
現代語訳
それにしても、あきれるほど明かし暮らされていくのは月日であった。このように頼みにしがたかった父宮のお命を、昨日今日のこととは思わずに、ただ世の常の定めないはかなさばかりを、明け暮れのこととして聞いたり見たりしていたので、自分も父も、後れ先立つほどの間も、そうはあるまいなどと思っていたことよ、過ぎた日々を思い続けると、何の頼もしい暮らしでもなかったけれど、ただいつとなくのどかに物思いにふけって過ごし、恐ろしく気がかりなこともなく過ごしてきたのに、風の音も荒々しく、見慣れない人影も連れ立って案内を乞うと、まず胸がつぶれて、恐ろしく心細く思われることまで加わったのが、ひどく耐えがたいことだと、お二人で語り合いながら、涙で袖の乾く間もなくお過ごしになるうちに、年も暮れてしまった。雪や霰の降りしきる頃は、どこでもこのようである風の音だけれど、今初めて思い入った山住みのような心地がなさる。女房たちなどが、「ああ、年が変わろうとしています。心細く悲しいことばかりなので、改まるはずの春を待ち迎えたいものです」と、気を落とさずに言うのも、ありがたいことだとお聞きになる。
意訳
姉妹は、父の死がこれほど早く来るとは思っていなかったと語り合う。父がいた頃は寂しくても穏やかだったが、今は風の音や見知らぬ人影にも怯える。涙の乾く間もなく年が暮れ、女房たちは新しい春を待とうと励ます。
語釈・文法注
文法
- 「後れさきだつ程しもやはへむ」(我も人も後れさきだつ程しもやはへむ)
- 自分と父が死に後れたり先立ったりする時が、そう早くは来るまい。
- 「こわづくれば」(例見ぬ人かげもうちつれこわづくれば)
- 咳払いをして案内を乞う。訪問者が来ること。
- 「ほすよもなくて」(ほすよもなくてすぐしたまふに)
- 涙で濡れた袖を乾かす間もなく。
解説
父を失った姉妹にとって、宇治の山荘はかつての穏やかな場所ではなくなった。父がいたからこそ、寂しい山里でも安心して暮らせたのである。
年の暮れは、喪の一年の終わりでもある。女房たちが新しい春を待とうと言うのは、姉妹を励ます優しさである。悲しみの中にも、時は確実に流れていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、924–925頁(コマ173)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日