源氏物語 第46帖 椎本(10)
姫君たちとの語らい
薫はこちらで、あの問わず語りの老女房を呼び出して、残りの多い話などをさせる。沈みかけた月が隈なく差し込んで、透けて見える影が優美なので、姫君たちも奥に引っ込んでいる。世間並みの懸想めいたことではなく、心深く話をのどかに申し上げるので、姫君たちもしかるべき返事などを申し上げる。薫は、三の宮(匂宮)はたいそう会いたがっているのにと心の中で思い出しながら、自分の心ながらやはり人とは違うものだ、あれほど宮自身が許していることが、それほど急がれもしないことよ、全く縁がないことだとはさすがに思わない、このようにして話も交わし、折々の花や紅葉につけても情趣を通わすのに、憎からぬ方々なので、宿縁が違って他の人のものになってしまうのは、さすがに残念だろうと、もう自分のものにしてしまった気持ちがした。まだ夜深いうちに帰った。心細く残り少ないように思っていた宮の様子を思い出しながら、騒がしい時期を過ごしてから参ろうと思う。兵部卿の宮(匂宮)も、この秋の間に紅葉見物に行こうと、然るべき機会を考えめぐらしている。手紙は絶えず差し上げる。姫君たちは、本気で思っているとも思わないので、煩わしくもなく、ちょっとした扱いにして、折々に返事を交わしている。
- 1こなたこなたこなたにてにてにてかのかのかの問問とはははずずずがたりがたりがたりのののふるふるふる人人びとめしめしめし出出いでででゝゝてのこりのこりのこり多多おおかるかるかる物物もの語語がたりなどなどなどせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。入入いりりり方方がたののの月月つきははは隈隈くまなくなくなくさしさしさし入入いりりりてててすきすきすきかげかげかげなまめかしきなまめかしきなまめかしきににに、、、君君きん達達だちもももおくまりおくまりおくまりててておはすおはすおわす。。。世世よののの常常つねのののけさうけさうけそうびびびてててはははあらあらあらずずず、、、心心こころ深深ふこううう物物もの語語がたりのどやかのどやかのどやかににに聞聞きこえええつゝつゝつつものしものしものし給給たまへへえばばば、、、さるべきさるべきさるべき御御おんいらへいらへいらえなどなどなど聞聞きこえええたまふたまふたまう。。。三三さん宮宮のみやはははいといといとゆかしうゆかしうゆかしゅうおぼいおぼいおぼいたるたるたる物物ものをををととと、、、心心こころのののうちうちうちにににははは思思おもひひい出出いでででつゝつゝつつ、、、我我わががが心心こころながらながらながら猶猶なお人人ひとにににはははことことことなりなりなりかしかしかし、、、さばかりさばかりさばかり御心御心みこころもてもてもてゆるびゆるびゆるび給給たまふふうことことことのののさしもさしもさしもいそがいそがいそがれれれぬぬぬよよよ、、、もてもてもてはなれはなれはなれてててはははたたたあるあるあるまじきまじきまじき事事こととととはははさすがさすがさすがにににおぼえおぼえおぼえずずず、、、かやうかやうかようにてにてにて物物ものをををももも聞聞きこえええかはしかはしかわし、、、をりをりおりふしふしふしののの花花はな紅紅もみ葉葉じにににつけつけつけてててあはれあはれあわれをををもももなさけなさけなさけをををもももかよはすかよはすかよわすににににくからにくからにくからずずず物物ものししし給給たまふふうあたりあたりあたりなれなれなればばば、、、すくせすくせすくせことことことにてにてにてほかほかほかざまざまざまにににもももなりなりなり給給たまははわむむんはははさすがさすがさすがににに口惜口惜くちおしかるしかるしかるべくべくべくりやうじりやうじりょうじたるたるたる心心こころちちちしししけりけりけり。。。まだまだまだ夜夜よ深深ふかきききほどほどほどににに歸歸かえりりり給給たまひひいぬぬぬ。。。心心こころぼそくぼそくぼそくのこりのこりのこりなげなげなげにににおぼいおぼいおぼいたりたりたりししし御御おんけしきけしきけしきををを思思おもひひい出出いででで聞聞きこえええ給給たまひひいつゝつゝつつ、、、騷騷さわがしきしきしき程程ほど過過すぐしししてててまうでまうでもうでむむんとととおぼすおぼすおぼす。。。兵兵ひょう部部ぶ卿卿きょうののの宮宮みやもももこのこのこの秋秋あきのののほどほどほどににに紅紅もみ葉葉じ見見みにににおはしまさおはしまさおわしまさむむんととと、、、さるべきさるべきさるべきついでついでついでをををおぼしおぼしおぼしめぐらすめぐらすめぐらす。。。御御おん文文ふみははは絕絕たえええずずず奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。女女おんなはははまめやかまめやかまめやかににに思思おぼすすすらむらむらんとととももも思思おもひひい給給たまははわねねねばばば、、、煩煩わずらわしくしくしくもももあらあらあらででではかなきはかなきはかなきさまさまさまにににもてもてもてなしなしなしつゝつゝつつ折折おり々々おりににに聞聞きこえええかはしかはしかわし給給たまふふう。。。
現代語訳
薫はこちらで、あの問わず語りの老女房を呼び出して、残りの多い話などをおさせになる。沈みかけた月が隈なく差し込んで、透けて見える影が優美なので、姫君たちも奥に引っ込んでいらっしゃる。世間並みの懸想めいたことではなく、心深くお話をのどかに申し上げながらいらっしゃるので、姫君たちも然るべきご返事などを申し上げなさる。三の宮はたいそう会いたくお思いになっているのにと、心の中では思い出しながら、自分の心ながら、やはり人とは違うものだなあ、あれほど宮ご自身がお許しになることが、それほど急がれもしないことよ、全く縁がないことだとは、さすがに思われず、このようにして話も交わし、折々の花や紅葉につけても、情趣をも情けをも通わすのに、憎からずいらっしゃる方々なので、宿縁が違って、他の人のものにでもおなりになるのは、さすがに残念だろうと、もう自分のものにしてしまった気持ちがした。まだ夜深いうちにお帰りになった。心細く残り少ないようにお思いになっていた宮のご様子を思い出し申し上げながら、騒がしい時期を過ごしてから参ろうとお思いになる。兵部卿の宮も、この秋の間に紅葉見物においでになろうと、然るべき機会をお考えめぐらしになる。お手紙は絶えず差し上げなさる。姫君たちは、本気でお思いになっているとも思いなさらないので、煩わしくもなく、ちょっとした扱いにしながら、折々にお返事を交わしなさる。
意訳
薫は弁と昔話をし、姫君たちとものどかに言葉を交わす。匂宮が会いたがっているのを思い出しながら、宮の許しがあるのに急がない自分を不思議に思うが、姫君たちが他人のものになるのは惜しいと、自分のものと思い定める。薫は夜深く帰る。匂宮は紅葉見物を計画し、手紙を送り続ける。
語釈・文法注
文法
- 「すきかげ」(すきかげなまめかしきに)
- 透けて見える影。月光で御簾越しに姿が透けて見えること。
- 「御心もてゆるび給ふこと」(さばかり御心もてゆるび給ふことの)
- 八の宮がご自身の意志で許していらっしゃること。娘との結婚を許していること。
- 「りやうじたる」(口惜しかるべくりやうじたる心ちしけり)
- 領じたる。自分のものとした。
解説
薫は八の宮の許しがありながら、結婚を急がない。道心と恋心の間で揺れる薫は、姫君たちを自分のものと思いながらも、行動に移さない。この優柔不断さが、後の悲劇を招くことになる。
薫と匂宮の対照が鮮明になる。匂宮は紅葉見物を口実に会いに行こうと積極的に動き、薫は約束を心に秘めて急がない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、914–915頁(コマ168)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日