源氏物語 第46帖 椎本(8)
月夜の昔語り
夜更けの月が明るく差し出て、山の端が近い気がするので、宮はたいそうしみじみと念誦をして、昔話をする。「この頃の世の中はどうなっているだろう。宮中などで、このような秋の月に、御前の管絃の遊びの折に参り合わせた中で、楽の上手と思われる者ばかりがそれぞれに合わせる拍子など、大げさなものよりも、趣があると評判の女御や更衣の局々で、それぞれは張り合う気持ちを持ちながら表面上は情けを交わしているらしい中、夜が更けて人の気配が静まった頃に、もの思わしげにかき鳴らし、ほのかに漏れ出てくる楽の音など、聞きどころのあるものが多かったなあ。何事につけても女は慰みの種にしてよく、頼りないものの、人の心を動かす種であるにちがいない。だから罪が深いのだろうか。子を思う親の心の闇を思いやるにつけても、男の子はそれほど親の心を乱さないのではなかろうか。女は限りがあって、言ってもかいのない方面に思い捨ててよいはずでも、やはりたいそう心苦しいものだ」などと一般論としておっしゃるが、どうしてそうお思いにならないことがあろうかと、薫は気の毒に思いやられる宮の心の内である。
- 1夜夜よ深深ふかききき月月つきのののあきらかあきらかあきらかにににさしさしさし出出いでででゝゝて、、、山山やまのののははは近近ちかききき心心こころちちちするするするににに、、、ねんずねんずねんずいといといとあはれあはれあわれにににししし給給たまひひいててて昔昔むかし物物ものがたりがたりがたりししし給給たまふふう。。。「「「このこのこの頃頃ごろののの世世よはははいかゞいかゞいかがなりなりなりにににたらたらたらむむん。。。くぢうくぢうくじゅうなどなどなどにてにてにてかやうかやうかようなるなるなる秋秋あきののの月月つきににに、、、御御お前前まえののの御御おんあそびあそびあそびのののをりをりおりにににさぶらひさぶらひさぶらいあひあひあいたるたるたる中中なかににに、、、物物ものののの上上じょう手手ずとととおぼしきおぼしきおぼしきかぎりかぎりかぎりとりどりとりどりとりどりにににうちうちうちあはせあはせあわせたるたるたる拍拍ひょう子子しなどなどなどことごとしきことごとしきことごとしきよりよりよりももも、、、よしよしよしありありありとととおぼえおぼえおぼえあるあるある女女にょうご御御おん更更こう衣衣いののの御御おんつぼねつぼねつぼねつぼねつぼねつぼねののの、、、おのおのおのがががじゝじゝじしはははいどましくいどましくいどましく思思おもひひいうはべうはべうわべのののなさけなさけなさけをををかはすかはすかわすべかべかべかめるめるめるををを、、、夜夜よ深深ふかきききほどほどほどののの人人ひとのののけけけしめりしめりしめりぬるぬるぬるににに、、、心心こころやましくやましくやましくかいかいかいしらべしらべしらべ、、、ほのかほのかほのかにににほころびほころびほころび出出いでででたるたるたる物物ものののの音音ねなどなどなど聞聞きききき所所どころあるあるあるががが多多おおかりかりかりしかしかしかななな。。。何何なに事事ごとにににももも女女おんなはははもてもてもてあそびあそびあそびのののつまつまつまにににしししつつつべくべくべく、、、物物ものはかなきはかなきはかなきものものものからからから人人ひとののの心心こころををを動動うごかすかすかすくさはひくさはひくさわいににになむなむなんあるあるあるべきべきべき。。。さればさればされば罪罪つみののの深深ふかきききにににやややあらあらあらむむん。。。子子こののの道道みちのののやみやみやみををを思思おもひひいやるやるやるにににももも、、、をのこをのこおのこはははいといといとしもしもしも親親おやののの心心こころをををみださみださみださずずずやややあらあらあらむむん。。。女女おんなはははかぎりかぎりかぎりありありありててていふかひいふかひいうかいなきなきなき方方かたににに思思おもひひい捨捨すつつつべきべきべきにににももも、、、猶猶なおいといといと心苦心苦こころぐるしかるしかるしかるべきべきべき」」」などなどなど大大おお方方かたのののことことことにににつけつけつけてててのたまへのたまへのたまえるるる、、、いかゞいかゞいかがさささおぼさおぼさおぼさゞゞざらむらむらんととと心苦心苦こころぐるしくしくしく思思おもひひいやらやらやらるゝるゝるる御心御心みこころのののうちうちうちなりなりなり。。。
現代語訳
夜更けの月が明るく差し出て、山の端が近い気がするので、宮はたいそうしみじみと念誦をなさって、昔話をなさる。「この頃の世の中はどうなっているだろう。宮中などで、このような秋の月に、御前の管絃の遊びの折に参り合わせた中で、楽の上手と思われる者ばかりがそれぞれに合わせる拍子など、大げさなものよりも、趣があると評判の女御や更衣の局々で、それぞれは張り合う気持ちを持ちながら、表面上の情けを交わしているらしいのに、夜が更けて人の気配が静まった頃に、もの思わしげにかき鳴らし、ほのかに漏れ出てくる楽の音など、聞きどころのあるものが多かったなあ。何事につけても、女は慰みの種にしてよいものであり、頼りないものの、人の心を動かす種であるにちがいない。だから罪が深いのだろうか。子を思う親の心の闇を思いやるにつけても、男の子はそれほど親の心を乱さないのではなかろうか。女は限りがあって、言ってもかいのない方面に思い捨ててよいはずのものでも、やはりたいそう心苦しいものだろう」などと、一般論としておっしゃるが、どうしてそうお思いにならないことがあろうかと、気の毒に思いやられる宮のお心の内である。
意訳
秋の月夜、八の宮は念誦の後、宮中で女御や更衣の局から漏れ聞こえた楽の音を懐かしむ。女は人の心を動かす種で罪深いと言い、娘を持つ親の心の闇を語る。薫は、宮が娘たちのことを案じているのだと察する。
語釈・文法注
文法
- 「くぢう」(くぢうなどにて)
- 宮中。
- 「子の道のやみ」(子の道のやみを思ひやるにも)
- 子を思う親の心の迷い。「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」(後撰集)による。
- 「くさはひ」(人の心を動かすくさはひ)
- 種、原因。
解説
八の宮の昔語りは、華やかだった宮中の記憶をよみがえらせる。世を捨てた宮にも、かつての宮廷生活への郷愁が残っている。
宮は一般論として女の罪深さを語るが、その言葉には娘たちへの心配がにじむ。女は人の心を動かす存在だからこそ、親の心を乱す。この言葉は、後の宇治の姉妹の運命を予感させる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、912–913頁(コマ167)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日