源氏物語 第46帖 椎本(6)
八の宮の憂い
いつまでも心細い有様で、春の所在なさはいっそう暮らしにくく物思いにふける。成長していく姫君たちの容姿はますます美しくなり、申し分なく美しいのもかえって気の毒で、不完全であったなら惜しいという思いは薄かったろうになどと、宮は明け暮れ思い乱れる。大君は二十五歳、中の君は二十三歳になった。宮は重く慎むべき厄年であった。何となく心細く思って、勤行をいつもより怠りなくする。世に心をとどめていないので、死出の旅支度ばかりを思っているので、涼しい極楽の道にもきっと赴くだろうに、ただこの姫君たちのことがたいそう気の毒で、この上なく強い心の持ち主だが、いざ最期と見捨てる時には心が乱れるだろうと、拝見する人も推し量る。宮は、思いどおりではなくても、まあまあ人聞きも悪くなく、認められる程度の身分の人が真心から後見しようと思い寄って申し出たら、知らない顔をして許してしまおう、一人でも世に落ち着く縁があれば、それにもう一人を託すことで慰めにしようと思うが、そこまで深い心で求婚する人もいない。たまにちょっとしたつてで色めいたことを言ってくる人や、若い人の気まぐれに、物詣での中宿りや往来の際のいい加減な言葉で気を引こうとして、さすがにこのように寂しく暮らす様子を推し量って侮るような扱いをするのは心外で、宮はかりそめの返事さえさせない。
- 1いついついつとととなくなくなく心心こころぼそきぼそきぼそき御御おん有有あり樣樣さまににに、、、春春はるのののつれづれつれづれつれずれはははいとゞいとゞいとど暮暮くらししし難難がたくくくながめながめながめ給給たまふふう。。。ねびねびねびまさりまさりまさり給給たまふふう御御おんさまさまさまかたちかたちかたちどもどもどもいよいよいよいよいよいよまさりまさりまさり、、、あらまほしくあらまほしくあらまほしくをかしきをかしきおかしきもももなかなかなかなかなかなか心苦心苦こころぐるしうしうしゅう、、、かたほかたほかたほにににもももおはせおはせおわせましかましかましかばばばあたらしくあたらしくあたらしくをしきをしきおしき方方かたののの思思おもひひいははは薄薄うすくくくやややあらあらあらましましましなどなどなど明明あけ暮暮くれおぼしおぼしおぼしみだるみだるみだる。。。姉姉あね君君ぎみ廿廿にじゅう五五ご、、、中中なかののの君君きみ廿廿にじゅう二二ににににぞぞぞなりなりなり給給たまひひいけるけるける。。。宮宮みやははは重重おもくくく愼愼つつしみみみ給給たまふふうべきべきべき年年としなりなりなりけりけりけり。。。物物もの心心こころぼそくぼそくぼそくおぼしおぼしおぼしててて、、、御御おんおこなひおこなひおこない常常つねよりよりよりもももたゆみたゆみたゆみなくなくなくししし給給たまふふう。。。世世よににに心心こころとゞめとゞめとどめ給給たまははわねねねばばば出出いでででたちたちたちいそぎいそぎいそぎをををのみのみのみおぼせおぼせおぼせばばば、、、凉凉すずしきしきしき道道みちにににももも赴赴おもむききき給給たまひひいぬぬぬべきべきべきををを、、、唯唯ただこのこのこの御御おん事事ことどもどもどものののいといといといとほしくいとほしくいとおしく、、、かぎりかぎりかぎりなきなきなき御心御心みこころづよさづよさずよさなれなれなれどどど、、、必必かならずずず今今いまはははととと見見み捨捨すててて給給たまははわむむん御心御心みこころははは亂亂みだれれれなななむむんととと、、、見見み奉奉たてまつるるる人人ひともももおしおしおしはかりはかりはかりきこゆるきこゆるきこゆるををを、、、
- 2おぼすおぼすおぼすさまさまさまにににはははあらあらあらずずずともともともなのめなのめなのめにににさてさてさてももも人人ひとぎゝぎゝぎきくちをしかるくちをしかるくちおしかるまじうまじうまじゅう、、、見見みゆるさゆるさゆるされれれぬぬぬべきべきべききはきはきわののの人人ひとののの、、、まままごゝろごゝろごころにににうしろみうしろみうしろみ聞聞きこえええむむんなどなどなど思思おもひひいよりよりより聞聞きこゆるゆるゆるあらあらあらばばば知知しらららずずずがほがほがおにてにてにてゆるしゆるしゆるしてててむむん、、、ひとひとひとところところところ世世よににに住住すみみみつきつきつき給給たまふふうよすがよすがよすがあらあらあらばばば、、、それそれそれををを見見みゆづるゆづるゆずる方方かたににに慰慰なぐさめめめおくおくおくべきべきべきををを、、、さささまでまでまで深深ふかききき心心こころににに尋尋たずねねね聞聞きこゆるゆるゆる人人ひともももなしなしなし。。。まれまれまれまれまれまれははははかなきはかなきはかなきたよりたよりたよりにににすきすきすきごとごとごと聞聞きこえええなどなどなどするするする人人ひと、、、またまたまた若若わか々々わかしきしきしき人人ひとののの心心こころのののすさびすさびすさびににに、、、物物ものまうでまうでもうでののの中中なかやどりやどりやどり、、、ゆききゆききゆききのののほどほどほどのののなほざりなほざりなおざりごとごとごとににに氣色氣色けしきばみばみばみかけかけかけててて、、、さすがさすがさすがにににかくかくかくながめながめながめ給給たまふふう有有あり樣樣さまなどなどなどおしおしおしはかりはかりはかりあなづらはしげあなづらはしげあなずらわしげにににもてもてもてなすなすなすはははめざましうめざましうめざましゅうててて、、、なげなげなげのののいらへいらへいらえをををだにだにだにせせせさせさせさせ給給たまははわずずず。。。
現代語訳
いつまでも心細いご様子で、春の所在なさは、いっそう暮らしにくく物思いにふけっていらっしゃる。成長していかれる姫君たちのご容姿は、ますます美しくなり、申し分なく美しいのも、かえって気の毒で、不完全でいらっしゃったならば、惜しくもったいないという思いは薄かったろうになどと、明け暮れ思い乱れなさる。姉君は二十五歳、中の君は二十三歳におなりになった。宮は重く慎みなさるべき厄年であった。何となく心細くお思いになって、ご勤行をいつもより怠りなくなさる。世に心をとどめていらっしゃらないので、死出の旅支度ばかりをお思いになっているので、涼しい極楽の道にもきっとお赴きになるだろうに、ただこの姫君たちのことがたいそう気の毒で、この上なく強いお心の持ち主でいらっしゃるけれど、いざ最期と見捨てなさる時には、お心が乱れるだろうと、拝見する人も推し量り申し上げるが、
宮は、思いどおりではなくても、まあまあ、それでも人聞きも悪くなく、認められそうな程度の身分の人が、真心から後見し申し上げようなどと思い寄って申し出ることがあれば、知らない顔をして許してしまおう、お一人でも世に落ち着きなさる縁があれば、それにもう一人を託す方面で慰めておこうとお思いになるが、そこまで深い心でお求め申し上げる人もいない。たまに、ちょっとしたつてで色めいたことを申し上げなどする人や、また若々しい人の心の慰みに、物詣での中宿りや、往来の際のいい加減な言葉で気を引こうとして、さすがにこのように寂しく暮らしていらっしゃるご様子などを推し量って、侮るような扱いをするのは心外で、かりそめのお返事さえおさせにならない。
意訳
姫君たちは美しく成長し、大君は二十五歳、中の君は二十三歳となる。八の宮は厄年で心細く、勤行に励む。しかるべき人が真心から後見を申し出れば許そうと思うが、そうした人は現れず、軽い気持ちで言い寄る者には返事もさせない。
語釈・文法注
文法
- 「重く愼み給ふべき年」(宮は重く愼み給ふべき年なりけり)
- 厄年。八の宮は六十一歳の厄年であったとされる。
- 「凉しき道」(凉しき道にも赴き給ひぬべきを)
- 涼しい道。極楽往生の道。
- 「見ゆづる」(それを見ゆづる方に慰めおくべきを)
- 後のことを託す。一人が縁づけば、もう一人の世話も任せられる。
解説
八の宮は、身分相応の誠実な後見人が現れれば娘を託そうと考える。薫はまさにそうした人物だが、八の宮は薫が道心の人だから望めないと思っている。父の願いと薫の思いのすれ違いが、物語の悲劇の種となる。
寂しい境遇を侮って言い寄る男たちを、八の宮は相手にしない。娘たちの誇りを守ろうとする父の姿勢は、後に大君が結婚を拒む態度にもつながっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、910–913頁(コマ166–167)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日