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源氏物語 第40帖 御法(6)

匂宮への遺言

登場人物:紫の上・匂宮・明石の中宮・女一の宮

読経などのために、中宮はいつもの自分の部屋に戻る。三の宮(匂宮)は大勢の宮たちの中でもたいそうかわいらしく歩き回っているので、紫の上は気分のよい時には前に座らせて、人が聞いていない間に、私がいなくなったら思い出してくださるでしょうかと言うと、匂宮は、とても恋しいでしょう、私は帝よりも中宮よりも、祖母上をいちばんお慕いしています、いらっしゃらなかったら気分が悪くなるでしょうと言って、目をこすって涙を紛らわす様子がかわいらしいので、紫の上はほほえみながら涙を落とす。大人になったら、ここに住んで、この対の前の紅梅と桜は、花の季節ごとに心にとめて楽しんでください、然るべき折には仏にも供えてくださいと言うと、匂宮はうなずいて紫の上の顔を見つめ、涙がこぼれそうなので立って行ってしまう。紫の上は特に手元で育ててきたので、この宮と女一の宮の成長を見届けられないことを残念に哀れに思う。秋を待ち迎えて、世の中が少し涼しくなると、紫の上の気分も少しさわやかになるようだが、やはりともすれば病がちである。身にしみるほどに感じられる秋風でもないのに、涙がちに過ごす。中宮は宮中へ戻ろうとするので、もうしばらく見ていてほしいと言いたいが、出過ぎたようでもあり、帝からの使いが絶えないのも煩わしいので、そうも言わないでいると、紫の上が東の対へ渡ることもできないので、中宮の方からやって来る。

二条院の対の前の紅梅と桜を背に、紫の上が幼い匂宮を前に座らせて語りかけ、匂宮が目をこすって涙を紛らわしている場面(AI生成)
二条院の対の前の紅梅と桜を背に、紫の上が幼い匂宮を前に座らせて語りかけ、匂宮が目をこすって涙を紛らわしている場面
  1. 1御おん御おんおん讀ど讀どど經きやう經きやうきょうなどなどなどににによりよりよりてててぞぞぞ例れい例れいれいのののわわわががが御おん御おんおん方かた方かたかたににに渡わた渡わたわたりりり給たま給たまたまふふう三さむ三さむさむ宮のみや宮のみやのみやはははあまたあまたあまたののの御おん御おんおん中なか中なかなかにににいといといとをかしげをかしげおかしげにてにてにてありきありきありき給たま給たまたまふふうををを、、、御おん御おんおん心こころ心こころこころちちちのののひまひまひまにににははは前まへ前まへまえにににすゑすゑすえ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまひひいててて人ひと人ひとひとののの聞き聞ききかかかぬぬぬまままににに「「「まろまろまろががが侍はべ侍はべはべらららざらざらざらむむんにににおぼしおぼしおぼし出い出いいでででなななむむんややや」」」ととと聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえばばば「「「いといといと戀こひ戀こひこいしかりしかりしかりなななむむん。。。まろまろまろはははうちうちうちののの上うへ上うへうえよりよりよりももも宮みや宮みやみやよりよりよりももも母はゝ母はゝははをををこそこそこそまさりまさりまさりててて思おも思おもおもひひい聞きこ聞きこきこゆれゆれゆれ。。。おはせおはせおわせずずずばばば心こころ心こころこころちちちむつかしかりむつかしかりむつかしかりなななむむん」」」とてとてとて目め目めめをををすりすりすり紛まぎら紛まぎらまぎらはしはしわし給たま給たまたまへへえるるるさまさまさまをかしけれをかしけれおかしければばばほゝゑみほゝゑみほほえみながらながらながら淚なみだ淚なみだなみだはははおちおちおちぬぬぬ。。。「「「おとなおとなおとなににになりなりなり給たま給たまたまひひいなななばばばこゝこゝここににに住す住すすみみみ給たま給たまたまひひいてててこのこのこの對たい對たいたいののの前まへ前まへまえなるなるなる紅こう紅こうこう梅ばい梅ばいばいととと櫻さくら櫻さくらさくらとととははは花はな花はなはなののの折をり折をりおり々をり々をりおりににに心こころ心こころこころ留とゞ留とゞとどめめめてててもてもてもてあそびあそびあそび給たま給たまたまへへえ。。。さるさるさるべからべからべからむむんをりをりおりははは佛ほとけ佛ほとけほとけにににももも奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまへへえ」」」ととと聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえばばば、、、うちうちうちうなづきうなづきうなずきててて御おん御おんおん顔かほ顔かほかおをををまもりまもりまもりててて淚なみだ淚なみだなみだののの落お落おおつつつべかべかべかめれめれめればばば立た立たたちちちててておはしおはしおわしぬぬぬ。。。とりわきとりわきとりわきててておほしおほしおおしたてたてたて奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまへへえれれればばばこのこのこの宮みや宮みやみやととと姫ひめ姫ひめひめ宮みや宮みやみやとととをををぞぞぞ見み見みみさしさしさし聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまははわむむんことことこと口惜くちを口惜くちをくちおしくしくしく哀あはれ哀あはれあわれにににおぼさおぼさおぼされれれけるけるける。。。
  2. 2秋あき秋あきあき待ま待ままちちちつけつけつけててて世よ世よよののの中なか中なかなかすこしすこしすこし凉すゞ凉すゞすずしくしくしくなりなりなりてててははは御おん御おんおん心こころ心こころこころちちちももも聊いさゝか聊いさゝかいささかさはやぐさはやぐさわやぐやうやうようなれなれなれどどど猶なほ猶なほなおともともともすれすれすればばばかごとかごとかごとがましがましがまし。。。さるはさるはさるは身み身みみにににしむしむしむばかりばかりばかりおぼさおぼさおぼさるるるべきべきべき秋あき秋あきあき風かぜ風かぜかぜならならならねねねどどど露つゆ露つゆつゆけきけきけきをりをりおりがちがちがちにてにてにてすぐしすぐしすぐし給たま給たまたまふふう。。。中ちゆう中ちゆうちゅう宮ぐう宮ぐうぐうははは參まゐ參まゐまいりりり給たま給たまたまひひいなななむむんとととするするするををを今いま今いまいましばししばししばしははは御覽ごらん御覽ごらんごらんぜぜぜよよよとととももも聞きこ聞きこきこえええまほしうまほしうまほしゅうおぼせおぼせおぼせどもどもども、、、さかしきさかしきさかしきやうやうようにににもももありありありうちうちうちののの御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいののの隙ひま隙ひまひまなきなきなきももも煩わづらは煩わづらはわずらわしけれしけれしければばばさささももも聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまははわぬぬぬににに、、、あなたあなたあなたにににもももえええ渡わた渡わたわたりりり給たま給たまたまははわねねねばばば宮みや宮みやみやぞぞぞ渡わた渡わたわたりりり給たま給たまたまひひいけるけるける。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

御読経などのために、中宮はいつものご自分のお部屋にお渡りになる。三の宮(匂宮)は、大勢の宮たちの中でも、たいそうかわいらしくて歩き回っていらっしゃるのを、紫の上はご気分のよい合間には前にお座らせ申し上げて、人が聞いていない間に、「私がいなくなったら、思い出してくださるでしょうか」と申し上げなさると、匂宮は「とても恋しいでしょう。私は帝よりも、中宮よりも、祖母上をいちばんお慕い申し上げています。いらっしゃらなかったら、気分が悪くなるでしょう」と言って、目をこすって涙を紛らわしていらっしゃる様子がかわいらしいので、紫の上はほほえみながらも涙は落ちた。「大人におなりになったら、ここにお住みになって、この対の前にある紅梅と桜とは、花の季節ごとに心にとめて楽しんでください。然るべき折には、仏にもお供えください」と申し上げなさると、匂宮はうなずいて紫の上のお顔を見つめて、涙がこぼれそうなので、立って行っておしまいになった。紫の上は特に手元でお育て申し上げなさったので、この宮と姫宮(女一の宮)とを、成長を見届けずに終わり申し上げなさることを、残念に哀れにお思いになるのだった。

秋を待ち迎えて、世の中が少し涼しくなってからは、ご気分も少しさわやかになるようだけれど、やはりともすれば病がちである。実のところ、身にしみるほどに感じられなさるはずの秋風でもないのに、涙がちな折が多くてお過ごしになる。中宮は宮中へお戻りになろうとなさるのを、もうしばらくはここにいて私を見ていてくださいとも申し上げたくお思いになるけれど、出過ぎたようでもあり、帝からのお使いが絶え間ないのも煩わしいので、そうも申し上げなさらないでいると、紫の上があちら(東の対)にもお渡りになれないので、中宮の方からお渡りになった。

意訳

紫の上は幼い匂宮に、大人になったら二条院に住んで、対の前の紅梅と桜を愛でてほしいと遺言する。

秋になっても紫の上は回復せず、宮中に戻ろうとする中宮のもとへ渡ることもできないので、中宮の方から訪れる。

語釈・文法注

文法

「三宮」(三宮はあまたの御中に)
明石の中宮の三男、匂宮。紫の上が手元で育てていた。
「見さす」(この宮と姫宮とをぞ見さし聞え給はむこと)
見るのを途中でやめる。成長を見届けずに終わる。
「かごとがまし」(猶ともすればかごとがまし)
何かにつけて病がちである。

解説

紫の上と幼い匂宮の会話は、御法の巻の中でも最も哀切な場面である。帝よりも中宮よりも祖母が好きだという匂宮の無邪気な言葉に、紫の上はほほえみながら涙を落とす。対の前の紅梅と桜を愛でてほしいという遺言は、紫の上の美しい人生を象徴している。

匂宮は、後に宇治十帖の主人公の一人となる。二条院に住み、紅梅と桜を愛でる匂宮の姿が、宇治十帖で描かれることになる。紫の上の遺言は、物語の未来へとつながっている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、816–817頁(コマ119)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日