源氏物語 第40帖 御法(4)
夏の衰え
夏になると、いつもの暑さにまで、いっそう消え入りそうな折々が多い。これといって大げさな病状ではないが、ただたいそう弱々しくなっているので、煩わしく苦しむこともない。仕える女房たちも、どうなられるのかと思うにつけても、まず目の前が暗くなり、惜しく悲しいご様子と拝見する。このようにばかりいるので、明石の中宮が二条院に里下がりする。中宮は東の対に滞在するはずなので、紫の上はこちらで待ち受ける。儀式などはいつもと変わらないが、この世の有様を見届けずに終わってしまうのだとばかり思うので、何につけても物哀れである。名対面を聞くにも、あの人この人と耳をとめて聞く。上達部などが大勢供奉している。久しく会わなかったのを珍しく思って、細やかに話をする。源氏が入ってきて、今夜は巣を離れた鳥のような気がして甲斐がない、退出して休もうと言って渡っていく。紫の上が起きているのを源氏が嬉しく思っているのも、たいそうはかない慰めである。

- 1夏夏なつににになりなりなりてててははは例例れいののの暑暑あつさささにににさへさへさへいとゞいとゞいとど消消きえええ入入いりりり給給たまひひいぬぬぬべきべきべき折折おり々々おり多多おおかりかりかり。。。そのそのその事事こととととおどろおどろしからおどろおどろしからおどろおどろしからぬぬぬ御御おん心心こころちちちなれなれなれどどど、、、唯唯ただいといといとよわきよわきよわきさまさまさまににになりなりなり給給たまへへえれれればばば、、、むつかしげむつかしげむつかしげににに所所ところせくせくせく惱惱なやみみみ給給たまふふう事事こともももなしなしなし。。。さぶらふさぶらふさぶらう人々人々ひとびともももいかにいかにいかにおはしまさおはしまさおわしまさむむんとととするするするにににかかかととと思思おもひひいよるよるよるにににもももまづまづまずかきかきかきくらしくらしくらしあたらしうあたらしうあたらしゅう悲悲かなしきしきしき御御おん有有あり樣樣さまととと見見み奉奉たてまつるるる。。。かくかくかくのみのみのみおはすれおはすれおわすればばば中中ちゅう宮宮ぐうこのこのこの院院いんにににまかでまかでまかでさせさせさせ給給たまふふう。。。ひんがしひんがしひんがしののの對對たいにににおはしますおはしますおわしますべけれべけれべければばばこなたこなたこなたにににはははたたた待待まちちち聞聞きこえええ給給たまふふう。。。儀儀ぎ式式しきなどなどなど例例れいににに變變かわらららねねねどどどこのこのこの世世よののの有有あり樣樣さまををを見見みはてはてはてずずずなりなりなりぬるぬるぬるなどなどなどのみのみのみおぼせおぼせおぼせばばば、、、萬萬よろずにににつけつけつけててて物物もの哀哀あわれなりなりなり。。。名名な對對だい面面めんををを聞聞きききき給給たまふふうにににもももそのそのその人人ひとかのかのかの人人ひとなどなどなど耳耳みみとゞめとゞめとどめててて聞聞きかかかれれれ給給たまふふう。。。上達部上達部かんだちめなどなどなどいといといと多多おおくくく仕仕つかうまつりうまつりうまつり給給たまへへえりりり。。。久久ひさしきしきしき御御おん對對たい面面めんのののとだえとだえとだえをををめづらしくめづらしくめずらしくおぼしおぼしおぼしててて御御おん物語物語ものがたりこまやかこまやかこまやかににに聞聞きこえええ給給たまふふう。。。院院いん入入いりりり給給たまひひいててて「「「今今こ夜夜よいはははすすすばなればなればなれたるたるたる心心こころちちちしししててて無無む德德とくなりなりなりややや。。。まかりまかりまかりやすみやすみやすみ侍侍はべらららむむん」」」とてとてとて渡渡わたりりり給給たまひひいぬぬぬ。。。起起おききき居居い給給たまへへえるるるををを嬉嬉うれしししとととおぼしおぼしおぼしたるたるたるもももいといといとはかなきはかなきはかなき程程ほどののの御御おんなぐさめなぐさめなぐさめなりなりなり。。。
現代語訳
夏になってからは、いつもの暑さにまで、いっそう消え入ってしまいそうな折々が多い。これといって大げさなご病状ではないが、ただたいそう弱々しい様子におなりになっているので、煩わしく苦しそうに患いなさることもない。お仕えする女房たちも、どうおなりになろうとしているのかと思い寄るにつけても、まず目の前が暗くなって、惜しく悲しいご様子と拝見する。このようにばかりいらっしゃるので、中宮(明石の中宮)がこの院(二条院)に里下がりなさる。中宮は東の対にいらっしゃることになっているので、紫の上はこちらでまたお待ち申し上げなさる。儀式などはいつもと変わらないけれど、紫の上はこの世の有様を見届けずに終わってしまうのだなどとばかりお思いになるので、万事につけて物哀れである。名対面をお聞きになるにつけても、その人かの人などと、耳をとめてお聞きになる。上達部なども大勢お供していらっしゃった。久しいご対面の途絶えを珍しくお思いになって、お話を細やかに申し上げなさる。院(源氏)がお入りになって、「今夜は巣を離れた鳥のような気がして、甲斐のないことですよ。退出して休みましょう」と言って、お渡りになった。紫の上が起きていらっしゃるのを嬉しいとお思いになっているのも、たいそうはかない程度のお慰めである。
意訳
夏になって紫の上はいっそう弱り、明石の中宮が二条院に里下がりして、紫の上と久しぶりに語り合う。
語釈・文法注
文法
- 「名對面」(名對面を聞き給ふにも)
- 宮中などで宿直の者が名を名乗ること。ここでは中宮に供奉した人々の名乗り。
- 「すばなれたる」(今夜はすばなれたる心ちして)
- 巣を離れた。中宮と紫の上に挟まれて居場所がないことを冗談めかしていう。
- 「無德」(無德なりや)
- かいがない、甲斐のないこと。
解説
明石の中宮は、紫の上が育てた娘である。紫の上の病を案じて里下がりした中宮との対面は、母娘の最後の語らいとなる。紫の上は、名対面に耳を傾け、この世の人々の声を一つ一つ心に刻む。
源氏の冗談は、紫の上と中宮の親しさを喜ぶものだが、紫の上が起きているのを喜ぶ源氏の姿は、はかない慰めでしかない。死の影が、穏やかな日常の中に忍び寄っている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、814–815頁(コマ118)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日