源氏物語 第39帖 夕霧(50)
藤典侍の歌
蔵人少将は女房たちと話をして、時々参上するが、このような御簾の前は落ち着かない気がしていたのに、これからは縁ある気がして、いつも参りましょう、御簾の内に入ることも許されそうな、長年のしるしが表れた気がしますなどと、意味ありげに言い置いて帰る。宮はいっそう不愉快な様子で、うわの空で惑っている間、大殿の君(雲居の雁)は、日がたつにつれて嘆くことが多い。藤典侍(夕霧の側室)は、このことを聞いて、雲居の雁が自分を長年許さない者と言っているそうだが、このように侮れない相手も出てきたのだと思って、手紙なども時々送っていたので、見舞いを申し上げる。人数に入る身なら、私も我が身に知られたでしょう、夫婦の仲のつらさを、人のためにも涙で濡らす袖ですと詠む。雲居の雁はいささか生意気だとは思うが、物悲しい頃の所在なさに、あの人もまったく平気ではいられないだろうと、片方の心がついた。人の夫婦仲のつらさを哀れと見てはきたけれど、我が身に代わろうとは思わなかったのにとだけ返すのを、典侍は思ったままのことだと哀れに見る。

- 1少少しょう將將しょうははは人々人々ひとびとととと物語物語ものがたりしししててて「「「時々時々ときどきさぶらふさぶらふさぶらうにににかゝるかゝるかかる御御み簾簾すののの前前まえはははたつきたつきたつきなきなきなき心心こころちちちししし侍侍はべるるるををを今今いまよりよりよりはははよすがよすがよすがあるあるある心心こころちちちしししててて常常つねににに參參まいるるるべしべしべし。。。ないないないげげげなどなどなどもももゆるさゆるさゆるされれれぬぬぬべきべきべき年年とし比比ごろのののしるししるししるしあらはれあらはれあらわれ侍侍はべるるる心地心地ここちなむなむなんししし侍侍はべるるる」」」などなどなど氣色氣色けしきばみばみばみおきおきおきててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。いとゞしくいとゞしくいとどしく心心こころよからよからよからぬぬぬ御御おん氣色氣色けしきあくがれあくがれあくがれまどひまどひまどい給給たまふふう程程ほど、、、大大おお殿殿とのののの君君きみははは日日ひ比比ごろふるふるふるまゝまゝままにににおぼしおぼしおぼし歎歎なげくくくことことことしげししげししげし。。。ないないないしししのののすけすけすけかゝるかゝるかかる事事ことををを聞聞きくくくににに、、、われわれわれををを世世よとととともともともににに許許ゆるさささぬぬぬものものものにににののの給給のたまふふうなるなるなるにににかくかくかくあなづりあなづりあなずりにくきにくきにくきことことことももも出出いででできききにににけるけるけるをををととと思思おもひひいててて、、、文文ふみなどなどなどははは時々時々ときどき奉奉たてまつれれればばばきこえきこえきこえたりたりたり。。。「「「數數かずならならならばばば身身みにににしらしらしられれれましましまし世世よのののうさうさうさををを人人ひとのののためためためにににもももぬらすぬらすぬらす袖袖そでかなかなかな」」」。。。なまなまなまけやけしけやけしけやけしとととははは見見み給給たまへへえどどど物物ものののの哀哀あわれなるなるなる程程ほどのののつれづれつれづれつれずれにににかれかれかれもももいといといとたゞたゞただにににはははおぼえおぼえおぼえじじじとととおぼすおぼすおぼすかたかたかた心心こころぞぞぞつきつきつきにににけるけるける。。。「「「人人ひとののの世世よのののうきうきうきををを哀哀あわれととと見見みしかしかしかどもどもども身身みにににかへかへかへむむんとととははは思思おもははわざりざりざりしししををを」」」とととのみのみのみあるあるあるををを、、、おぼしおぼしおぼしけるけるけるまゝまゝままととと哀哀あわれににに見見みるるる。。。
現代語訳
少将(蔵人少将)は女房たちと話をして、「時々参上しますが、このような御簾の前は落ち着かない気がしておりましたのに、これからは縁がある気がして、いつも参りましょう。御簾の内に入ることなども許されそうな、長年のしるしが表れました気がいたします」などと、意味ありげに言い置いてお帰りになった。宮がいっそう不愉快なご様子で、うわの空で思い惑っていらっしゃる間に、大殿の君(雲居の雁)は、日がたつにつれて、お嘆きになることが多い。典侍(藤典侍、夕霧の側室)は、このようなことを聞くと、雲居の雁が自分を長年許さない者とおっしゃっているそうなのに、このように侮りにくい相手も出てきたことよと思って、手紙なども時々差し上げていたので、お見舞いを申し上げた。「人数に入る身でしたら、私も我が身に知られたでしょう、夫婦の仲のつらさを。人のためにも涙で濡らす袖であることよ」。雲居の雁は、いささか生意気だとはご覧になるけれど、物悲しい頃の所在なさに、あの人もまったく平気ではいられないだろうと、片方の心がついたのであった。「人の夫婦仲のつらさを哀れと見てはきましたけれど、我が身に代わろうとは思いませんでしたのに」とだけあるのを、典侍は、お思いになったままのことだと哀れに見る。
意訳
蔵人少将は意味ありげなことを言って帰る。夕霧の側室藤典侍は雲居の雁に同情の歌を送り、雲居の雁も我が身のつらさを詠んで返す。
語釈・文法注
文法
- 「ないげ」(ないげなどもゆるされぬべき)
- 内外。御簾の内に入ること。
- 「ないしのすけ」(ないしのすけかゝる事を聞くに)
- 典侍。惟光の娘で、夕霧の側室である藤典侍。
- 「なまけやけし」(なまけやけしとは見給へど)
- いささか生意気だ、出過ぎている。
解説
蔵人少将の意味ありげな言葉は、宮を義姉として遇する皮肉である。宮はいっそう屈辱を感じる。
夕霧の側室である藤典侍が、雲居の雁に同情の歌を送る。正妻と側室が、夫の新しい恋によって心を通わせるという皮肉な展開である。雲居の雁は、初めて典侍に親しみを感じる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、810–811頁(コマ116)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日