源氏物語 第39帖 夕霧(48)
子どもたちと夕霧
夜が明けると、夕霧は、人が見聞きするのも子どもっぽいので、これを限りと言い切るのなら、そのように試してみよう、あちらに残してきた子どもたちもかわいらしく恋しがっているようだったが、選んで残されたのには訳があるのだろうと見ながらも、見捨てがたいので、どうにでも世話をしましょうと脅し申し上げると、雲居の雁は、さっぱりとした気性の夫なので、この子どもたちまで知らない所へ連れて行ってしまうのではないかと不安になる。夕霧は姫君に、さあいらっしゃい、会いにこうして参るのも体裁が悪いので、いつも来るわけにはいかない、あちらでも子どもたちがかわいいので、せめて同じ所で見ていたいと言う。姫君はまだたいそうあどけなくかわいらしい。夕霧はたいそう哀れと見て、母君の教えに従ってはいけない、ひどく情けなく、物の分別のない心があるのは、たいそう悪いことだと言い聞かせる。

- 1明明あけけけぬれぬれぬればばば「「「人人ひとののの見見み聞聞きかかかむむんももも若若わか々々わかしきしきしきををを限限かぎりとととのたまひのたまひのたまいはてはてはてばばばさてさてさて試試こころみみみむむん。。。かしこかしこかしこなるなるなる人々人々ひとびともももらうたげらうたげろうたげににに戀戀こひひい聞聞きこゆゆゆめりめりめりしししをををえりえりえり殘殘のこししし給給たまへへえるるるやうやうようあらあらあらむむんとととはははみみみながらながらながらももも思思おもひひいすてすてすてがたきがたきがたきををを、、、ともかくもともかくもともかくももてもてもてなしなしなし侍侍はべりりりなななむむん」」」とととおどしおどしおどし聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、すがすがしきすがすがしきすがすがしき御心御心みこころにてにてにてこのこのこの君君きん達達だちをををさへさへさへややや知知しらららぬぬぬ所所ところににに率率いててて渡渡わたししし給給たまははわむむんとととあやふしあやふしあやうし。。。「「「姫姫ひめ君君ぎみをををいざいざいざ給給たまへへえかしかしかし見見み奉奉たてまつりりりにににかくかくかく參參まいりりりくるくるくることことこともももはしたなけれはしたなけれはしたなければばば常常つねにににももも參參まいりりりこここじじじ。。。かしこかしこかしこにににももも人々人々ひとびとのののらうたきらうたきろうたきをををおなじおなじおなじ所所ところにてにてにてだにだにだに見見み奉奉たてまつらららむむん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。まだまだまだいといといといはけなくいはけなくいわけなくをかしげをかしげおかしげにてにてにておはすおはすおわす。。。いといといと哀哀あわれととと見見み奉奉たてまつりりりたまひたまひたまいててて「「「母母はは君君ぎみののの御御おん敎敎おしえににになななかなひかなひかない給給たまひひいそそそ。。。いといといと心心こころうくうくうく思思おもひひいとるとるとる方方かたなきなきなき心心こころあるあるあるはははいといといと惡惡あしきしきしきわざわざわざなりなりなり」」」ととと、、、いひいひいいしらせしらせしらせ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
現代語訳
夜が明けると、夕霧は「人が見聞きするのも子どもっぽいので、これを限りと言い切りなさるのなら、それではそのように試してみましょう。あちらにいる子どもたちも、かわいらしく恋しがり申し上げているようでしたが、選んで残しなさったのには訳があるのだろうとは見ながらも、見捨てがたいので、どうにでもお世話いたしましょう」と脅し申し上げなさると、雲居の雁は、さっぱりとしたご気性なので、この子どもたちまでも、知らない所へ連れて行っておしまいになるのではないかと不安である。夕霧は「姫君、さあいらっしゃい。お会いしにこのように参るのも体裁が悪いので、いつも参ることもできまい。あちらでも子どもたちがかわいいので、せめて同じ所で見ていたい」と申し上げなさる。姫君はまだたいそうあどけなく、かわいらしくていらっしゃる。夕霧はたいそう哀れと拝見なさって、「母君のお教えに従ってはいけませんよ。ひどく情けなく、物事の分別のない心があるのは、たいそう悪いことです」と、言い聞かせ申し上げなさる。
意訳
夕霧は、子どもたちを引き取ると雲居の雁を脅し、幼い姫君に母の教えに従ってはいけないと言い聞かせる。
語釈・文法注
文法
- 「すがすがし」(すがすがしき御心にて)
- 思い切りがよい、さっぱりしている。
- 「えり殘す」(えり殘し給へるやうあらむ)
- 選んで残す。雲居の雁が連れて行く子と残す子とを選んだこと。
- 「なかなひ給ひそ」(母君の御敎になかなひ給ひそ)
- 従ってはいけない。「な…そ」で禁止を表す。
解説
夕霧は子どもたちを盾に雲居の雁を脅す。幼い姫君に母の教えに従うなと言い聞かせる夕霧の言葉は、大人げない。夫婦喧嘩に子どもを巻き込む夕霧の姿は、まめ人の意外な一面を見せている。
雲居の雁は、夫が子どもたちを連れ去るのではと不安になる。夕霧の脅しは、雲居の雁の母としての心を揺さぶるものであった。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、808–811頁(コマ115–116)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日