源氏物語 第39帖 夕霧(47)
実家の雲居の雁
夕霧は手紙をたびたび送り、迎えの車も差し向けるが、雲居の雁は返事さえしない。このように頑固で軽々しい夫婦仲よと不愉快に思うが、父大臣が見聞きするところもあるので、日が暮れてから自ら迎えに行く。雲居の雁は寝殿にいるというので、いつも泊まる方には女房たちだけが控えている。若君たちは乳母に付き添っていた。夕霧は、今さら若々しい振る舞いをなさるものだ、こんな子どもたちをあちこちに置き去りにして、寝殿で姉君と一緒にいるとは、ふさわしくないお心の筋だとは長年見知っていたが、そうなるべき縁だったのか、昔から心から離れがたく思い申し上げて、今はこのように煩わしいほど多くの子どもたちが哀れなのに、互いに見捨ててよいものかと、頼みにして申し上げる。ちょっとしたことで、こうまでなさってよいものかと、ひどくたしなめて恨むと、雲居の雁は、何事も、今はもうすっかり飽きられてしまった身なので、今さら直るはずもないのに、どうしてと言って、つまらない子どもたちは、お見捨てにならなければ嬉しいことでしょうと返事をする。夕霧は、穏やかなお返事だ、言っていけば誰の評判が惜しいことになるかと言って、無理に帰れとも言わずに、その夜は一人で寝る。妙に中途半端な頃だと思いながら、子どもたちを前に寝かせて、あちらの宮も、またどんなに思い乱れておられるだろうと思いやり、心の休まらない気苦労なので、どんな人がこのようなことをおもしろく思うのだろうなどと、懲り懲りしてしまいそうに思う。

- 1せうそこせうそこしょうそこたびたびたびたびたびたび聞聞きこえええててて迎迎むかえににに奉奉たてまつれれれ給給たまへへえどどど御御おんかへりかへりかえりだにだにだになしなしなし。。。かくかくかくかたくなしうかたくなしうかたくなしゅうかるがるしかるがるしかるがるしののの世世よやややとととものしうものしうものしゅう覺覺おぼえええ給給たまへへえどどど、、、おとゞおとゞおとどののの見見み聞聞きききき給給たまははわむむん所所ところもももあれあれあればばばくらしくらしくらしてててみづからみづからみずから參參まいりりり給給たまへへえりりり寢寢しん殿殿でんににになむなむなん坐坐おわするするするとてとてとて例例れいののの渡渡わたりりり給給たまふふう方方かたははは御御ご達達たちのみのみのみ侍侍さぶらふらふらう。。。若若わか君君きん達達だちぞぞぞ乳乳め母母のとにににそひそひそいててておはしおはしおわしけるけるける。。。「「「今今いま更更さらにににわかわかしわかわかしわかわかしののの御御おんまじらひまじらひまじらいややや、、、かゝるかゝるかかる人人ひとをををこゝかしここゝかしこここかしこにににおとしおとしおとしおきおきおき給給たまひひいてててなどなどなど寢寢しん殿殿でんののの御御おんまじらひまじらひまじらいはははふさはしからふさはしからふさわしからぬぬぬ御心御心みこころのののすぢすぢすじとととははは年年とし比比ごろ見見み知知しりりりたれたれたれどどど、、、さるさるさるべきべきべきにににややや、、、昔昔むかしよりよりより心心こころににに離離はなれれれがたうがたうがとう思思おもひひい聞聞きこえええててて今今いまはははかくかくかくくだくだしきくだくだしきくだくだしき人人ひとのののかずかずかずかずかずかず哀哀あわれなるなるなるをををかたみかたみかたみににに見見みすつすつすつべきべきべきにににやややははは」」」とととたのみたのみたのみ聞聞きこえええけるけるける。。。「「「はかなきはかなきはかなきひとひとひとふしふしふしにににかうかうこうはははもてもてもてなしなしなし給給たまふふうべくべくべくややや」」」ととといみじういみじういみじゅうあばめあばめあばめ恨恨うらみみみ申申もうししし給給たまへへえばばば、、、「「「何何なに事事ごとももも今今いまはははとととみみみあきあきあき給給たまひひいにににけるけるける身身みなれなれなればばば今今いまはたはたはたなほるなほるなおるべきべきべきにににもももあらあらあらぬぬぬををを、、、何何なにかかかははは」」」とてとてとて「「「あやしきあやしきあやしき人々人々ひとびとははは覺覺おぼしししすてすてすてずずずははは嬉嬉うれしうしうしゅうこそこそこそはははあらあらあらめめめ」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。
- 2「「「なだらかなだらかなだらかののの御御おんいらへいらへいらえややや。。。いひいひいいもてもてもていけいけいけばばば誰誰たががが名名なかかか惜惜おしきしきしき」」」とてとてとてしひてしひてしいて渡渡わたりりり給給たまへへえともともともなくなくなくてててそのそのその夜夜よははは一一ひと人人り臥臥ふししし給給たまへへえりりり。。。あやしうあやしうあやしゅう中中なか空空ぞらなるなるなる比比ころかなかなかなととと思思おもひひいつゝつゝつつ君君きん達達だちををを前前まえにににふせふせふせ給給たまひひいててて、、、かしこかしこかしこににに又又またいかにいかにいかに覺覺おぼししし亂亂みだるるるらむらむらんさまさまさま思思おもひひいやりやりやり聞聞きこえええ、、、やすからやすからやすからぬぬぬ心心こころづくしづくしずくしなれなれなればばばいかなるいかなるいかなる人人ひとかうかうこうやうやうようなるなるなることことことをををかしうかしうかしゅうおぼゆおぼゆおぼゆらむらむらんなどなどなど物物ものごりごりごりしししぬぬぬべうべうびょう覺覺おぼえええ給給たまふふう。。。
現代語訳
夕霧はお手紙をたびたび申し上げて、迎えの車を差し向けなさるが、雲居の雁はお返事さえない。このように頑固で軽々しい夫婦仲よと、不愉快に思われなさるが、父大臣が見聞きなさるところもあるので、日が暮れてから、ご自身で参上なさった。雲居の雁は寝殿にいらっしゃるということで、いつもお泊まりになる方には、女房たちだけが控えている。若君たちは乳母に付き添っていらっしゃった。夕霧は「今さら若々しいお振る舞いですね。このような子どもたちを、あちこちに置き去りになさって、どうして寝殿で姉君とご一緒にいらっしゃるのですか。ふさわしくないお心の筋だとは長年見知っていましたが、そうなるべき縁だったのでしょうか、昔から心から離れがたくお思い申し上げて、今はこのように煩わしいほど多くの子どもたちが哀れなのに、互いに見捨ててよいものでしょうか」と、頼みにして申し上げた。「ちょっとした一つのことで、こうまでなさってよいものでしょうか」と、ひどくたしなめてお恨み申し上げなさると、雲居の雁は「何事も、今はもうすっかりお飽きになってしまった身ですので、今さら直るはずもありませんのに、どうして」と言って、「つまらない子どもたちは、お見捨てにならなければ嬉しいことでしょう」とお返事申し上げなさった。
夕霧は「穏やかなお返事ですね。言っていけば、誰の評判が惜しいことになるでしょう」と言って、無理に帰ってきなさいとも言わずに、その夜は一人で臥していらっしゃった。妙に中途半端な頃だなあと思いながら、子どもたちを前に寝かせなさって、あちらの宮も、またどんなにお思い乱れになっているだろうと、その様子を思いやり申し上げ、心の休まらない気苦労なので、どんな人がこのようなことをおもしろく思うのだろうなどと、懲り懲りしてしまいそうに思われなさる。
意訳
夕霧は雲居の雁を迎えに行くが、雲居の雁は寝殿から出てこず、子どもたちは見捨てないでほしいとだけ答える。
夕霧は子どもたちと一人で寝ながら、宮のことも気にかかり、恋の苦労に懲り懲りする。
語釈・文法注
文法
- 「くだくだし」(今はかくくだくだしき人のかずかず)
- 煩わしい、数が多くてまとまらない。大勢の子どもたちをいう。
- 「見あく」(今はとみあき給ひにける身なれば)
- 見飽きる。
- 「物ごり」(物ごりしぬべう覺え給ふ)
- 懲り懲りすること。
解説
夕霧は実家に帰った雲居の雁を迎えに行くが、雲居の雁は会おうとしない。夕霧は子どもたちを盾に復縁を求め、雲居の雁は子どもは見捨てないでほしいと答える。夫婦の溝は深い。
子どもたちと一人で寝ながら、夕霧は宮のことも思いやる。二人の女性のどちらからも拒まれた夕霧は、恋の苦労に懲り懲りする。まめ人夕霧の恋の顛末は、滑稽でもあり、哀れでもある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、808–809頁(コマ115)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日