源氏物語 第39帖 夕霧(44)
宮の涙
夕霧は、宮が分かってくださるべき道理を何かと申し上げ、言葉も多く、哀れにも趣深くも言い尽くすが、宮はつらく不愉快だとばかり思っている。夕霧は、たいそうこのように言いようもない者と思われた身のほどは類なく恥ずかしいので、あってはならない心がついてしまったのも分別なく悔しく思われるが、取り返せることでもないうちに、何の立派な評判になるでしょう、言っても仕方なく諦めてください、思うようにならない時に身を投げる例もあるようですが、ただこの私の志を深い淵になぞらえて、身を投げて捨てた身とお思いなさいと言う。宮は単衣の衣を引きかぶって、せめてもの抵抗として声を上げて泣く様子が、心深く気の毒なので、夕霧は、ひどく嫌なことだ、どうしてこんなにまでお思いになるのだろう、ひどく思い嫌う人でも、これほどになれば自然と心を許す様子もあるのに、岩や木よりもなびきがたいのは、前世の縁が遠くて憎いと思うこともあるというが、そうお思いなのだろうかと思い寄ると、あまりのことなので情けなく、三条の君(雲居の雁)が思っているだろうこと、昔も無心に思い合っていた頃のこと、長年今はと安心しきって打ち解けている様子を思い出すにつけても、自分の心から、たいそうつまらないことを思い続けるので、無理になだめることもせず、嘆き明かした。このように愚かしく出入りするのも妙なので、今日は泊まってゆったりと過ごす。宮はこれほどまでひたむきなのをあきれたことと思って、いよいよ疎ましい様子がまさるのを、夕霧は愚かなお心だと、一方ではつらいものの哀れに思う。

- 1男男おとこははは萬萬よろずにににおぼしおぼしおぼししるしるしるべきべきべきことわりことわりことわりををを聞聞きこえええ知知しらせらせらせ、、、言言ことののの葉葉はおほうおほうおおう哀哀あわれにににもももをかしうをかしうおかしゅうももも聞聞きこえええ盡盡つくししし給給たまへへえどどど、、、つらくつらくつらく心心こころつきつきつきなしなしなしとととのみのみのみおぼいおぼいおぼいたりたりたり。。。「「「いといといとかうかうこういはいはいわむむん方方かたなきなきなきものものものにににおぼさおぼさおぼされれれけるけるける身身みののの程程ほどはははたぐひたぐひたぐいなうなうのうはづかしけれはづかしけれはずかしければばば、、、あるあるあるまじきまじきまじき心心こころのののつきつきつきそめそめそめけむけむけんももも心心こころちちちなくなくなく悔悔くやしうしうしゅうおぼえおぼえおぼえ侍侍はべれれれどどど、、、とりとりとり返返かえすすすものものものならならならぬぬぬうちうちうちににに何何なにのののたけきたけきたけき御御おん名名なにににかかかはははあらあらあらむむん。。。いふかひいふかひいうかいなくなくなくおぼしおぼしおぼしよはれよはれよわれ思思おもふふうにににかなはかなはかなわぬぬぬ時時とき身身みをををなぐるなぐるなぐるためしためしためしももも侍侍はべるるるなるなるなるををを、、、唯唯ただかゝるかゝるかかる心心こころざしざしざしをををふかきふかきふかき淵淵ふちににになずらへなずらへなずらえ給給たまひひいててて捨捨すてててつるつるつる身身みとととおぼしおぼしおぼしなせなせなせ」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。單衣單衣ひとえののの御御おんぞぞぞをををひきひきひきくゝみくゝみくくみてててたけきたけきたけきことことことゝゝとはははねねねをををなきなきなき給給たまふふうさまさまさまののの心心こころ深深ふかくくくいとほしけれいとほしけれいとおしければばば、、、いといといとうたてうたてうたて、、、いかなれいかなれいかなればばばいといといとかうかうこうおぼすおぼすおぼすらむらむらん、、、いみじういみじういみじゅう思思おもふふう人人ひともももかばかりかばかりかばかりににになりなりなりぬれぬれぬればばば、、、おのづからおのづからおのずからゆるぶゆるぶゆるぶ氣色氣色けしきもももあるあるあるををを、、、岩岩いわ木木きよりよりよりけにけにけに靡靡なびききき難難がたきききははは契契ちぎり遠遠とおうううてててにくしにくしにくしなどなどなど思思おもふふうやうやうようあああなるなるなるををを、、、さささやややおぼすおぼすおぼすらむらむらんととと思思おもひひいよるよるよるににに、、、
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現代語訳
男君(夕霧)は、宮がお分かりになるはずの道理を何かとお知らせ申し上げ、言葉も多く、哀れにも趣深くも言い尽くし申し上げなさるが、宮はつらく不愉快だとばかりお思いになっていた。夕霧は「たいそうこのように、言いようもない者とお思いになった我が身のほどは、類なく恥ずかしいので、あってはならない心がつき始めたのも、分別がなく悔しく思われますが、取り返せることでもないうちに、何の立派なお名前になりましょうか。言っても仕方がないとお諦めください。思うようにならない時に身を投げる例もございますようですが、ただこの私の志を深い淵になぞらえなさって、身を捨ててしまったものとお思いなさい」と申し上げなさる。宮が単衣の御衣を引きかぶって、せめてもの抵抗として声を上げてお泣きになる様子が、心深く気の毒なので、夕霧は、ひどく嫌なことだ、どうしてこんなにまでお思いになるのだろう、ひどく思い嫌う人でも、これほどになってしまえば、自然と心を許す様子もあるものなのに、岩や木よりもひどくなびきがたいのは、前世の縁が遠くて憎いと思うこともあるというが、そのようにお思いなのだろうかと思い寄ると、
あまりのことなので情けなくて、三条の君(雲居の雁)がお思いになっているだろうこと、昔も無心に思い合っていた頃のこと、長年、今はもうと安心しきって油断し打ち解けていらっしゃる様子を思い出すにつけても、自分の心から、たいそうつまらないことを思い続けられるので、無理におなだめ申し上げることもなさらず、嘆き明かしなさった。このように愚かしく出入りするのも妙なので、今日は泊まって、ゆったりとしていらっしゃる。宮は、これほどまでひたむきなのをあきれたこととお思いになって、いよいよ疎ましいご様子がまさるのを、夕霧は愚かなお心だなと、一方ではつらいものの、哀れである。
意訳
夕霧は言葉を尽くして諦めるよう説くが、宮は単衣をかぶって声を上げて泣き、夕霧は前世の縁が遠いのかと思う。
夕霧は雲居の雁のことを思い出して無理強いせず、嘆き明かして、その日は一条宮に泊まる。
語釈・文法注
文法
- 「身をなぐるためし」(身をなぐるためしも侍るなるを)
- 身を投げる例。思い通りにならない恋に身を投げた伝説を指す。
- 「たけきことゝは」(たけきことゝはねをなき給ふ)
- できる精一杯のこととしては。せめてもの抵抗として。
- 「契遠し」(契遠うてにくし)
- 前世からの縁が薄い。
解説
宮は単衣をかぶって声を上げて泣く。それが宮にできる精一杯の抵抗であった。夕霧は、前世の縁が遠いのかと思うが、宮の拒絶の理由が自分の振る舞いにあることには思い至らない。
夕霧は宮の前で雲居の雁を思い出す。幼なじみの妻との長年の安らかな日々を、自分の心から乱してしまったことを悔やむ。夕霧は二人の女性の間で引き裂かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、806–807頁(コマ114)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日