源氏物語 第39帖 夕霧(43)
塗籠の北の口
夕霧は、そうかといってこうしてばかりいられようか、人が聞き漏らすのも当然だと、ここの女房たちの目もきまり悪く思われるので、少将に、内々のお心遣いは、宮のおっしゃるとおりにして、しばらくは情けあるふりもしよう、世慣れない様子がたいそう見苦しい、またこうだからといって、まったく通わなくなったら、宮の評判がどんなに気の毒なことになるだろう、ひたすら思い詰めて幼げなのが気の毒だなどと、少将を責めるので、少将も、本当にそうだとも思い、宮を拝見するのも今は心苦しく、夕霧に対しても恐れ多く思われる様子なので、人を通わせている塗籠の北の口から、夕霧を入れてしまった。宮はひどくあきれてつらいと、仕える女房たちをも、本当にこのような世の人の心なので、これ以上ひどい目にも遭わせかねなかったのだと、頼りになる人もいなくなってしまった身を返す返す悲しく思う。

- 1さりとてさりとてさりとてかくかくかくのみのみのみやややははは、、、人人ひとののの聞聞きききき漏漏もらさささむむんことことこともももことわりことわりことわりととと、、、はしたなうはしたなうはしたのうこゝこゝここののの人人ひとめめめもももおぼえおぼえおぼえ給給たまへへえばばば「「「うちうちうちうちうちうちののの御御おん心心こころづかひづかひずかいはははこのこのこののたまふのたまふのたまうさまさまさまにににかなひかなひかないてててもももしばししばししばしはははなさけなさけなさけばまばまばまむむん。。。世世よづかづかずかぬぬぬ有有あり樣樣さまのののいといといとうたてうたてうたてありありあり、、、又又またかゝりかゝりかかりとてとてとてかきかきかきたえたえたえ參參まいらららずずずははは人人ひとののの御御おん名名ないかゞいかゞいかがはははいとほしかるいとほしかるいとおしかるべきべきべき。。。ひとへひとへひとえににに物物ものをををおぼしおぼしおぼしてててをさなげをさなげおさなげなるなるなるこそこそこそいとほしけれいとほしけれいとおしけれ」」」などなどなどこのこのこの人人ひとをををせめせめせめ給給たまへへえばばば、、、げにげにげにとととももも思思おもひひい、、、見見み奉奉たてまつるるるももも今今いまははは心心こころぐるしうぐるしうぐるしゅう辱辱かたじけのうううおぼゆるおぼゆるおぼゆるさまさまさまなれなれなればばば、、、人人ひとかよはしかよはしかよわし給給たまふふう塗塗ぬり籠籠ごめののの北北きたののの口口くちよりよりより入入いれれれ奉奉たてまつりりりてててけりけりけり。。。いみじういみじういみじゅうあさましうあさましうあさましゅうつらしつらしつらしととと、、、さぶらふさぶらふさぶらう人人ひとをををもももげにげにげにかゝるかゝるかかる世世よののの人人ひとののの心心こころなれなれなればばばこれこれこれよりよりよりまさるまさるまさるめめめをををももも見見みせせせつつつべかりべかりべかりけりけりけりととと、、、たのもしきたのもしきたのもしき人人ひともももなくなくなくなりなりなりはてはてはて給給たまひひいぬるぬるぬる御御おん身身みををを返返かえすすす返返がえすすす悲悲かなしうしうしゅうおぼすおぼすおぼす。。。
現代語訳
そうかといって、こうしてばかりいられようか、人が聞き漏らすだろうこともももっともだと、ここの女房たちの目も、きまり悪くお思いになるので、夕霧は「内々のお心遣いは、この宮がおっしゃるとおりにして、しばらくは情けあるふりもしましょう。世慣れない有様がたいそう見苦しい。また、こうだからといって、まったく通わなくなってしまったら、宮のお名前がどんなに気の毒なことになるでしょう。ひたすら思い詰めなさって、幼げでいらっしゃるのが気の毒です」などと、この人(少将)をお責めになるので、少将も、本当にそうだとも思い、宮を拝見するのも今は心苦しく、夕霧に対しても恐れ多く思われる様子なので、人を通わせていらっしゃる塗籠の北の口から、夕霧をお入れ申し上げてしまった。宮はひどくあきれてつらいとお思いになり、お仕えする女房たちのことをも、本当に、このような世の人の心なので、これ以上ひどい目にも遭わせかねなかったのだと、頼りになる人もすっかりいなくなっておしまいになった御身を、返す返す悲しくお思いになる。
意訳
夕霧に責められた少将は、ついに塗籠の北の口から夕霧を入れてしまい、宮は頼る人もいなくなった身を嘆く。
語釈・文法注
文法
- 「なさけばむ」(しばしはなさけばまむ)
- 情けあるふりをする。
- 「かきたゆ」(かきたえ參らずは)
- すっかり途絶える。
- 「人かよはし給ふ」(人かよはし給ふ塗籠の北の口)
- 女房が出入りするのに使っている。
解説
女房の手引きによって、夕霧は塗籠の中に入る。宮にとって最後の砦であった塗籠も、女房たちの裏切りによって破られる。頼るべき母も女房も失った宮の孤独は極まる。
夕霧の言い分は、宮の評判のためという体裁をとっている。しかしそれは、宮の意志を無視した強引な行動を正当化するものであった。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、806–807頁(コマ114)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日