源氏物語 第39帖 夕霧(42)
拒み続ける宮
一条宮では宮がなお塗籠に籠っているので、女房たちは、こうしてばかりいられようか、子どもっぽくけしからぬ噂も立つでしょう、いつものご様子で、然るべきことを申し上げなさいませなどと、いろいろ申し上げるので、宮はそういうことだとは思いながら、これから先の世間の噂も、自分の過去の心も、不愉快で恨めしい人の縁によるものと思い知って、その夜も対面しない。夕霧は、冗談にもならない珍しいことだと言い尽くす。女房たちも気の毒だと見る。女房は、少しでも人心地のつく折があったら、お忘れでなければ、どうなりとお返事しましょう、この喪の間はひたすら思い乱れることなく過ごしたいと深く思っておっしゃるのに、このようにあいにく知らない人もいなくなってしまったようなのを、やはりたいそうつらいことと申しておられますと言う。夕霧は、思う心は、また別の意味で安心なものなのに、思いがけない世の中だと嘆いて、いつものようにおいでになるなら、物越しなどでも思うことだけを申し上げて、お心を破ることもない、何年でも過ごしていけるでしょうなどと、尽きることなく言うが、宮は、やはりこのような乱れに加えて、無理なお心がたいそうつらい、人が聞いて思うことも何かと並々でない身のつらさはともかく、ことさらに情けないお心構えだと、また言い返して恨みながら、遠くにばかり扱う。

- 1かしこかしこかしこにににははは猶猶なおさしさしさし籠籠こもりりり給給たまへへえるるるををを、、、人々人々ひとびと「「「かくかくかくてててのみのみのみやややははは。。。若若わか々々わかしうしうしゅうけしからけしからけしからぬぬぬ聞聞きこえええももも侍侍はべりりりぬぬぬべきべきべきををを、、、例例れいののの御御おん有有あり樣樣さまにてにてにて、、、あるあるあるべきべきべき事事ことをををこそこそこそ聞聞きこえええ給給たまははわめめめ」」」などなどなど萬萬よろずににに聞聞きこえええけれけれければばば、、、さささもももあるあるある事事こととととはははおぼしおぼしおぼしながらながらながら今今いまよりよりより後後のちよそよそよそののの聞聞きこえええをををももも我我わががが御心御心みこころののの過過すぎぎぎにににししし方方かたをををももも心心こころづきづきずきなくなくなくうらめしかりうらめしかりうらめしかりけるけるける人人ひとのののゆかりゆかりゆかりとととおぼしおぼしおぼししりしりしりてててそのそのその夜夜よももも對對たい面面めんししし給給たまははわずずず。。。「「「戯戯たわぶれれれにくゝにくゝにくく珍珍めずらからからかなりなりなり」」」ととと聞聞きこえええ盡盡つくししし給給たまふふう。。。人人ひともももいとほしいとほしいとおしととと見見み奉奉たてまつるるる。。。「「「聊聊いささかももも人人ひと心心こころちちちするするするをりをりおりあらあらあらむむんににに忘忘わすれれれ給給たまははわずずずばばばともかうもともかうもともこうも聞聞きこえええむむん。。。このこのこの御御おん服服ぶくののの程程ほどははは一一ひと筋筋すじににに思思おもひひい亂亂みだるゝるゝるることことことなくなくなくてててだにだにだに過過すぐさぐさぐさむむんとととなむなむなん深深ふかくくくおぼしおぼしおぼしのたまはするのたまはするのたまわするををを、、、かくかくかくいといといとあやにくあやにくあやにくにににしらしらしらぬぬぬ人人ひとなくなくなくなりなりなりぬぬぬめるめるめるををを、、、猶猶なおいみじういみじういみじゅうつらきつらきつらきものものものににに聞聞きこえええ給給たまふふう」」」ととと聞聞きこゆゆゆ。。。
- 2「「「思思おもふふう心心こころははは又又またことことことざまざまざまににに後後うしろやすきやすきやすきものものものををを、、、思思おもははわずずずなりなりなりけるけるける世世よかなかなかな」」」ととと打打うちちち歎歎なげきききててて「「「例例れいのののやうやうようにてにてにておはしまさおはしまさおわしまさばばば物物ものごしごしごしなどなどなどにてにてにてももも思思おもふふうことことことばかりばかりばかり聞聞きこえええててて、、、御心御心みこころ破破やぶるるるべきべきべきにににもももあらあらあらずずず。。。數數あま多多たののの年年とし月月つきをををももも過過すぐしぐしぐしつつつべくべくべくなむなむなん」」」などなどなどつきつきつきもももせせせずずず聞聞きこえええ給給たまへへえどどど「「「猶猶なおかゝるかゝるかかるみだれみだれみだれにににそへそへそえてててわりなきわりなきわりなき御心御心みこころなむなむなんいみじういみじういみじゅうつらきつらきつらき。。。人人ひとのののきゝきゝきき思思おもははわむむんことことことももも萬萬よろずににになのめなのめなのめならならならざりざりざりけるけるける身身みのののうさうさうさをををばばばさるさるさるものものものにてにてにて殊殊こと更更さらににに心心こころうきうきうき御御おん心心こころがまへがまへがまえなりなりなり」」」ととと又又またいひいひいいかへしかへしかえし恨恨うらみみみ給給たまひひいつゝつゝつつ遙遙はるかにににのみのみのみもてもてもてなしなしなし給給たまへへえりりり。。。
現代語訳
あちら(一条宮)では、宮がなお塗籠に籠っていらっしゃるのを、女房たちが「こうしてばかりいられましょうか。子どもっぽく、けしからぬ噂も立ってしまうでしょうから、いつものご様子で、然るべきことを申し上げなさいませ」などと、いろいろ申し上げたので、宮はそういうこともあるとはお思いになりながらも、これから先の世間の噂も、ご自分のお心の過ぎ去った方のことも、不愉快で恨めしかった人の縁によるものとお思い知りになって、その夜も対面なさらない。夕霧は「冗談にもならず、珍しいことです」と言葉を尽くして申し上げなさる。女房たちも気の毒だと拝見する。女房は「少しでも人心地のつく折がございましたら、お忘れになっていなければ、どうなりとお返事申し上げましょう。この御喪服の間は、ひたすら思い乱れることなく、せめて過ごしたいと深くお思いになり、おっしゃいますのに、このようにあいにく、知らない人もなくなってしまったようですのを、やはりたいそうつらいことと申し上げていらっしゃいます」と申し上げる。
夕霧は「思う心は、また別の意味で安心なものなのに、思いがけない世の中だよ」と嘆いて、「いつものようにいらっしゃるなら、物越しなどででも、思うことばかりを申し上げて、お心を破るようなこともいたしません。何年でも過ごしていけるでしょう」などと、尽きることなく申し上げなさるが、宮は「やはりこのような乱れに加えて、無理なお心がたいそうつらいのです。人が聞いて思うことも、何かと並々でなかった身のつらさはともかくとして、ことさらに情けないお心構えです」と、また言い返して恨みなさりながら、遠くにばかり扱っていらっしゃった。
意訳
女房たちに勧められても、宮は夕霧を恨めしい縁と思い知って対面しない。
夕霧は物越しでよいから思いを伝えたいと訴えるが、宮は無理なお心がつらいと拒み続ける。
語釈・文法注
文法
- 「御服」(この御服の程は)
- 喪服。母の喪に服している期間。
- 「あやにく」(かくいとあやにくにしらぬ人なく)
- あいにく、都合悪く。
- 「物ごし」(物ごしなどにても思ふことばかり聞えて)
- 几帳や御簾などを隔てること。
解説
宮は、自分の不運のすべてを、夕霧との縁のせいと思い知る。柏木との結婚も、母の死も、今の噂も、すべてがつらい縁によるものである。宮の拒絶は、夕霧個人への嫌悪を超えて、自分の運命への抵抗となっている。
夕霧は物越しでもよいと言うが、宮は応じない。喪の間だけでも静かに過ごしたいという宮のささやかな願いさえ、夕霧の強引な行動によって踏みにじられている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、804–807頁(コマ113–114)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日