源氏物語 第39帖 夕霧(35)
宮の移転
その日、夕霧は自分は一条宮で待っていて、迎えの車や前駆などを小野へ差し向ける。宮は決して移るまいと言うが、女房たちがしきりに勧め、大和守も、決してお聞き入れできません、心細く悲しいご様子を拝見し嘆いて、これまでの宮仕えは力の及ぶ限りお仕えしましたが、今は任国の仕事もあり下向しなければなりません、宮邸のことを任せられる人もおりません、たいそう困ったことで、どうなさるのかと見ておりましたが、このように夕霧様が万事お世話くださるので、本当にこの方面から考えますと、必ずしも好ましいご様子ではありませんが、昔も意に沿わない例は多くございます、宮お一人が世の非難を受けられるわけでもないでしょう、たいそう幼いことでございます、どれほど気丈にお思いでも、女のお心一つで御身を処し、顧みることができましょうか、やはり人が大切にお世話申し上げるのに助けられてこそ、深いお心の賢いお考えも、それによって立つものです、女房の方々がお教え申し上げないのです、一方では、あってはならないことも、それぞれの考えでお仕えし始めてと言い続けて、左近と少将を責める。女房たちが集まって申し上げ、なだめるので、宮はたいそう困って、鮮やかな衣を女房たちが着替えさせるのも我を忘れたようで、やはりいっそひたすら削ぎ捨てたいと思う髪をかき出して見ると、六尺ほどで少し細くなったが、人は見苦しいとも思わない。宮自身の心には、ひどい衰えようだ、人に見せられる様子でもない、さまざまに情けない身だと思い続けて、また臥してしまう。時刻が過ぎてしまう、夜も更けてしまうと皆が騒ぐ。時雨がたいそう慌ただしく吹き乱れ、何もかも物悲しいので、宮は、母が上っていった峰の煙に立ち交じって、思わぬ方へなびかずにいたいものだと詠む。

- 1そのそのその日日ひはははわれわれわれおはしおはしおわしゐゐいててて御御おん車車くるま御御お前前まえなどなどなど奉奉たてまつれれれ給給たまふふう。。。宮宮みやははは更更さらににに渡渡わたらららじじじとととおぼしおぼしおぼしのたまふのたまふのたまうををを人々人々ひとびといみじういみじういみじゅう聞聞きこえええ大大やま和和と守守のかみももも「「「更更さらにににうけうけうけ給給たまはらはらわらじじじ、、、心心こころぼそくぼそくぼそく悲悲かなしきしきしき御御おん有有あり樣樣さまををを見見み奉奉たてまつりりりなげきなげきなげきこのこのこのほどほどほどののの宮宮みや仕仕づかえはははたゆるたゆるたゆるににに隨隨したがひひいててて仕仕つかうまつりうまつりうまつりぬぬぬ。。。今今いまははは國國くにのののことことことももも侍侍はべりりり罷罷まかりりり下下くだりりりぬぬぬべしべしべし。。。宮宮みやののの內內うちののの事事ことももも見見み給給たまへへえゆづるゆづるゆずるべきべきべき人人ひとももも侍侍はべらららずずず。。。いといといとたいたいしうたいたいしうたいたいしゅういかにいかにいかにととと見見み給給たまふるふるうるををを、、、かくかくかく萬萬よろずにににおぼしおぼしおぼしいとなむいとなむいとなむををを、、、げにげにげにこのこのこの方方かたにににとりとりとりててて思思おもひひい給給たまふるふるうるにににははは必必かならずしもずしもずしもおはしますおはしますおわしますまじきまじきまじき御御おん有有あり樣樣さまなれなれなれどどど、、、さささこそこそこそはははいにしへいにしへいにしえももも御心御心みこころにににかなはかなはかなわぬぬぬためしためしためし多多おおくくく侍侍はべれれれ一一ひと所所ところやややははは世世よのののもどきもどきもどきをををもももおはおはおわせせせ給給たまふふうべきべきべき。。。いといといと幼幼おさなくくくおはしますおはしますおわしますことことことなりなりなり。。。たけうたけうたきょうおぼすおぼすおぼすともともとも女女おんなののの御心御心みこころひとつひとつひとつににに我我わががが御御おん身身みをををとりとりとりしたゝめしたゝめしたため顧顧かえりみみみ給給たまふふうべきべきべきやうやうようかかかあらあらあらむむん。。。猶猶なお人人ひとのののあがめあがめあがめかしづきかしづきかしずき給給たまへへえらむらむらんににに助助たすけけけられられられてててこそこそこそ深深ふかききき御心御心みこころのののかしこきかしこきかしこき御御おんおきておきておきてもももそれそれそれにににかゝるかゝるかかるべきべきべきものものものなれなれなれ。。。君君きん達達だちののの聞聞きこえええしらせしらせしらせ奉奉たてまつりりり給給たまははわぬぬぬなりなりなり。。。かつはかつはかつはさるさるさるまじきまじきまじき事事ことをををももも御心御心みこころどもどもどもににに仕仕つかうまつりうまつりうまつりそめそめそめ給給たまひひいててて」」」ととといひいひいいつゞけつゞけつづけててて左左さ近近こん少少しょう將將しょうをををせむせむせむ。。。
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現代語訳
その日は、夕霧は自分は一条宮においでになって、お車や前駆などを小野へ差し向けなさる。宮は決して移るまいとお思いになり、おっしゃるのを、女房たちがしきりにお勧め申し上げ、大和守も、「決してお聞き入れいたしかねます。心細く悲しいご様子を拝見して嘆き、これまでの宮仕えは力の及ぶ限りお仕えいたしました。今は任国の仕事もございまして、下向しなければなりません。宮邸の内のことも、お任せできる人もおりません。たいそう困ったことで、どうなさるのかと拝見しておりましたが、このように夕霧様が万事お世話くださるのを、本当にこの方面から考えますと、必ずしもそうおありになるべきご様子ではありませんが、そのように昔も、お心に沿わない例は多くございます。宮お一人が世の非難をお受けになるわけでもないでしょう。たいそう幼くていらっしゃることです。どれほど気丈にお思いになっても、女のお心一つで御身を処し、顧みなさることができましょうか。やはり人が大切にお世話申し上げるのに助けられてこそ、深いお心の賢いお考えも、それによって立つものです。皆さんがお教え申し上げなさらないのです。一方では、あってはならないことも、それぞれのお考えでお仕えし始めなさって」と言い続けて、左近と少将を責める。
女房たちが集まって申し上げ、なだめるので、宮はたいそう困って、鮮やかな御衣などを女房たちがお着替えさせ申し上げるのも、我を忘れたようで、やはりいっそひたすら削ぎ捨てたいとお思いになる御髪をかき出してご覧になると、六尺ほどで少し細くなったけれど、人は見苦しいとも拝見しない。ご自分のお心では、ひどい衰えようよ、人に見せられる様子でもない、さまざまに情けない身なのにと思い続けなさって、また臥しておしまいになった。「時刻が過ぎてしまいます。夜も更けてしまうでしょう」と皆が騒ぐ。時雨がたいそう慌ただしく吹き乱れ、何もかも物悲しいので、宮は「母が上っていった峰の煙に立ち交じって、思いもしない方へなびかずにいたいものです」。
意訳
夕霧は迎えの車を差し向け、大和守は宮に、女の身一人ではやっていけないと一条宮へ移るよう説く。
女房たちが宮の衣を着替えさせ、宮は髪を削ぎ捨てたいと思いながら、母の煙に交じって思わぬ方へなびきたくないと詠む。
語釈・文法注
文法
- 「たいたいし」(いとたいたいしういかにと見給ふるを)
- 困ったことである、不都合である。
- 「とりしたゝむ」(我が御身をとりしたゝめ顧み給ふべき)
- きちんと処置する、身を処する。
- 「思はぬかたになびく」(思はぬかたになびかずもがな)
- 意に沿わない方へなびく。夕霧に従うことをいう。
解説
大和守は、宮の後見を務めてきたが、任国へ下向しなければならない。大和守の言葉は現実的である。女一人では生きていけない時代に、夕霧の庇護を受け入れるほかないと説く。宮の拒絶は、周囲の現実的な判断の前に押し流されていく。
宮は髪を削ぎ捨てたいと思うが、女房たちは鋏を隠している。宮の歌は、母の煙に交じって、意に沿わない方へなびきたくないという切実な願いである。宮の意志は、誰にも顧みられない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、798–799頁(コマ110)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日