源氏物語 第39帖 夕霧(30)
宮の手習い
日が高くなってから返事が届く。濃い紫のしっかりした紙で、いつものように小少将が、ただ同じようにかいのないことを書いて、気の毒さに、あの手紙に宮が手習いのように書きすさんだものを盗んできたと言って、中に破って入れてあった。夕霧は、宮が手紙を見てくださったのだと思うだけで嬉しいのが、たいそう人聞きの悪いことであった。とりとめもなく書いてあるのを見続けると、朝夕に泣く声を立てる小野の山は、絶えない涙が音無の滝となって流れているのでしょうか、とでも読み取るべきだろう、古歌などを物思わしげに書き乱した筆跡など見どころがある。夕霧は、他人のことなどで、このような好き心に思い焦がれるのは、もどかしく正気でないことと見聞きしていたが、我が身のこととなると、本当にたいそう耐えがたいことだった、不思議だ、どうしてこんなに思うのだろうと思い返すが、どうにもならない。

- 1日日ひたけたけたけてててぞぞぞもてもてもて參參まいれれれるるる。。。紫紫むらさきのののこまやかこまやかこまやかなるなるなる紙紙かみすくよかすくよかすくよかにてにてにて小小こ少少しょう將將しょうぞぞぞ例例れいののの聞聞きこえええたるたるたる唯唯ただ同同おなじじじさまさまさまにににかひかひかいなきなきなきよしよしよしををを書書かきききててていとほしさいとほしさいとおしさにににかのかのかのありありありつるつるつる御御おん文文ふみににに手手て習習ならひひいすさみすさみすさみ給給たまへへえるるるをををぬすみぬすみぬすみたるたるたるとてとてとて中中なかにににひきひきひきやりやりやりててて入入いれれれたりたりたり。。。目目めにににははは見見み給給たまひひいてててけりけりけりとととおぼすおぼすおぼすばかりばかりばかりののの嬉嬉うれしさしさしさぞぞぞいといといと人人ひとわろかりわろかりわろかりけるけるける。。。そこはかとそこはかとそこはかとなくなくなく書書かききき給給たまへへえるるるををを見見みつゞけつゞけつづけ給給たまへへえれれればばば、、、「「「朝朝あさ夕夕ゆうににになくなくなくねねねをををたつるたつるたつるをををののの山山やまははは絕絕たえええぬぬぬなみだなみだなみだやややおとなしおとなしおとなしののの瀧瀧たき」」」とととやややとりとりとりなすなすなすべからべからべからむむんふるふるふることことことなどなどなど物思物思ものおもはしげはしげわしげにににかきかきかきみだりみだりみだり給給たまへへえるるる御御おん手手てなどなどなど見見み所所どころありありあり。。。人人ひとのののうへうへうえなどなどなどにてにてにてかやうかやうかようのののすきすきすき心心こころ思思おもひひいいらいらいらるゝるゝるるはははもどかしうもどかしうもどかしゅう現現うつし心心こころならならならぬぬぬことことことににに見見み聞聞ききききしかしかしかどどど、、、身身みのののうへうへうえにてにてにてはははげにげにげにいといといと堪堪たへへえがたかるがたかるがたかるべきべきべきわざわざわざなりなりなりけりけりけり、、、あやしあやしあやしややや、、、などなどなどかかかうううしもしもしも思思おもふふうらむらむらんととと思思おもひひいかへしかへしかえし給給たまへへえどどどえええしもしもしもかなはかなはかなわずずず。。。
現代語訳
日が高くなってから、返事を持って参った。濃い紫の紙のしっかりしたもので、小少将がいつものようにお返事申し上げていた。ただ同じように、かいのない旨を書いて、気の毒さに、あのいただいたお手紙に宮が手習いのように書きすさみなさったのを、盗んできたと言って、中に破って入れてあった。夕霧は、宮がお目には通してくださったのだとお思いになるだけの嬉しさが、たいそう人聞きの悪いことであった。とりとめもなくお書きになっているのを見続けなさると、「朝夕に泣く声を立てる小野の山は、絶えない涙が音無の滝となっているのでしょうか」とでも読み取るべきだろうか、古歌などを物思わしげに書き乱していらっしゃる御筆跡など、見どころがある。夕霧は、他人のことなどで、このような好き心に思い焦がれるのは、もどかしく、正気でないことと見聞きしていたが、我が身のこととなると、本当にたいそう耐えがたいことだったのだ、不思議なことよ、どうしてこんなにまで思うのだろうと思い返しなさるが、どうにもならない。
意訳
小少将が宮の手習いの切れ端を返事に入れて寄こし、夕霧は宮が手紙を見てくれたと喜び、自分の恋心に驚く。
語釈・文法注
文法
- 「手習ひすさむ」(かのありつる御文に手習ひすさみ給へるを)
- 心のままに歌などを書き散らす。
- 「おとなしの瀧」(絕えぬなみだやおとなしの瀧)
- 音無の滝。小野にある滝。声を立てずに泣くことをかける。
- 「現心ならぬ」(現心ならぬことに見聞きしかど)
- 正気でない。
解説
小少将の計らいで、宮の手習いが夕霧に届く。宮が夕霧の手紙を読んでいたことが分かり、夕霧は人聞きが悪いほど喜ぶ。宮の手習いの歌は、声を立てずに泣く悲しみを詠んでいる。
夕霧は、他人の恋を愚かと見ていたが、自分がその立場になって初めて、恋の苦しさを知る。「まめ人」夕霧の自己認識の変化が、ユーモアとともに描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、794–795頁(コマ108)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日