源氏物語 第39帖 夕霧(25)
雲居の雁の歌
雲居の雁は、やはりこの二人の仲の様子はどういうことだったのだろう、御息所とは手紙のやりとりも細やかにしていたようだったがと、納得しかねて、夫が夕暮れの空を眺めて臥しているところへ、若君に持たせて手紙を差し上げる。ちょっとした紙の端に、あなたの哀れをどう知って慰めましょう、生きている人が恋しいのか、亡くなった人が悲しいのか、はっきりしないのがつらいとあるので、夕霧はほほえんで、いろいろとこう思い寄って言うものだ、亡き御息所にかこつけるとは似合わないと思う。たいそう早くさりげなく、どちらと区別して物思いにふけりましょう、消えゆく露も草葉の上だけのものとは見えない世の中なのに、ただ世の常として悲しいのですと書く。雲居の雁は、やはりこのように隠し隔てをなさるのだと、露の哀れはさておいて、ただならず嘆いている。夕霧はやはりこのように気がかりで思い悩んで、また小野へ行く。御忌みなどが過ぎてからゆっくりと思い静めていたが、それまで忍びきれそうもなく、今はこの根も葉もない噂を何も無理に隠すこともあるまい、ただ世間並みに最後には思いがかなうはずだと思い立ったので、北の方の推測にも無理に言い争わない。宮本人が強く拒んでも、あの一夜の御息所の手紙を手がかりにして、言い寄れば、宮も潔白をすすぎきることはできまいと、頼もしく思っている。

- 1女女おんな君君ぎみ猶猶なおこのこのこの御御おん中中なかののの氣色氣色けしきをををいかなるいかなるいかなるにににかかかありありありけむけむけん、、、御御み息息やす所所どころとととこそこそこそ文文ふみかよはしかよはしかよわしももも細細こまやかやかやかにににししし給給たまふふうめりめりめりしかしかしかなななととと思思おもひひいえええがたくがたくがたくててて、、、夕夕ゆう暮暮ぐれののの空空そらをををながめながめながめ入入いりりりててて臥臥ふしししたまへたまへたまえるるるところところところににに若若わか君君ぎみしししてててたてまつれたてまつれたてまつれ給給たまへへえるるる、、、はかなきはかなきはかなき紙紙かみのののはしはしはしににに、、、「「「哀哀あわれをををもももいかにいかにいかにしりしりしりてててかかかなぐさめなぐさめなぐさめむむんあるあるあるややや戀戀こいしきしきしきなきなきなきやややかなしきかなしきかなしき。。。おぼつかなきおぼつかなきおぼつかなきこそこそこそ心心こころうけれうけれうけれ」」」とととあれあれあればばばほゝゑみほゝゑみほほえみててて樣樣さま々々ざまにににかくかくかく思思おもひひいよりよりよりてててのたまふのたまふのたまう。。。似似にげなげなげなのののなきなきなきがががよそへよそへよそえやややとととおぼすおぼすおぼす。。。いといといと疾疾とくくくことことことなしびなしびなしびににに、、、「「「いづれいづれいずれとととかかかわきわきわきてててながめながめながめむむん消消きえええかへるかへるかえる露露つゆももも草草くさ葉葉ばのののうへうへうえととと見見みぬぬぬ世世よををを。。。大大おお方方かたにににこそこそこそ悲悲かなしけれしけれしけれ」」」とととかいかいかい給給たまへへえりりり。。。猶猶なおかくかくかく隔隔へだててて給給たまへへえるるることことことゝゝと露露つゆののの哀哀あわれをををばばばさしさしさしおきおきおきてててたゞたゞただならならならずずず歎歎なげきききつゝつゝつつおはすおはすおわす。。。猶猶なおかくかくかく覺覺おぼ束束つかなくなくなくおぼしおぼしおぼしわびわびわびててて又又またわたりわたりわたり給給たまへへえりりり。。。御御おん忌忌いみなどなどなどすぐしすぐしすぐしてててのどやかのどやかのどやかにににとととおぼしおぼしおぼし靜靜しずめめめけれけれけれどどど、、、さてさてさてしもしもしも忍忍しのびびびはつはつはつまじうまじうまじゅう今今いまはははこのこのこの御御おんなきなきなき名名なののの何何なにかかかはははあながちあながちあながちにににもももつゝまつゝまつつまむむん、、、唯唯ただ世世よづきづきずきてててつひつひついののの思思おもひひいかなふかなふかなうべきべきべきにににこそこそこそはははととと覺覺おぼしししたちたちたちにににけれけれければばば、、、北北きたののの方方かたののの御御おん思思おもひひいやりやりやりをををあながちあながちあながちにににもももあらがひあらがひあらがい聞聞きこえええ給給たまははわずずず、、、さうじみさうじみそうじみはははつようつようつようおぼしおぼしおぼしはなるはなるはなるともともともかのかのかの一一ひと夜夜よばかりばかりばかりののの御御おん文文ふみをををとらへとらへとらえ所所ところにににかこちかこちかこちてててえええしもしもしもすゝぎすゝぎすすぎはてはてはて給給たまははわじじじとととたのもしかりたのもしかりたのもしかりけりけりけり。。。
現代語訳
女君(雲居の雁)は、やはりこのお二人の仲の様子はどういうことだったのだろう、御息所とこそ、手紙のやりとりも細やかにしていらっしゃったようだったがと、納得しかねて、夫が夕暮れの空を眺め入って臥していらっしゃるところに、若君に持たせて差し上げなさった、ちょっとした紙の端に、「あなたの哀れを、どう知ってお慰めしましょう。生きている人が恋しいのですか、亡くなった人が悲しいのですか。はっきりしないのがつらいのです」とあるので、夕霧はほほえんで、いろいろとこのように思い寄っておっしゃることだ、亡き御息所にかこつけるとは似合わないことだとお思いになる。たいそう早く、何でもないように、「どちらと区別して物思いにふけりましょうか。消えてゆく露も、草葉の上だけのものとは見えない無常の世なのに。ただ世の常として悲しいのです」とお書きになった。雲居の雁は、やはりこのように隠し隔てをなさることだと、露の哀れはさておいて、ただならずお嘆きになっていらっしゃる。夕霧は、やはりこのように気がかりで思い悩んで、また小野へお出かけになった。御忌みなどを過ごしてから、のんびりとと心を静めていらっしゃったけれど、そうしてもいられず、忍びきれそうもなく、今はこの根も葉もない浮名を、何も無理に隠すこともあるまい、ただ世間並みに、最後には思いがかなうにちがいないとお思い立ちになったので、北の方のご推測にも、無理に言い争い申し上げなさらない。宮ご本人は強く拒みなさっても、あの一夜の御息所のお手紙を手がかりにして言い寄れば、宮も潔白をすすぎきることはおできになるまいと、頼もしく思っていた。
意訳
雲居の雁は、生きている宮が恋しいのか亡き御息所が悲しいのかと問う歌を送り、夕霧はさりげなくかわす。
夕霧は浮名を隠すのをやめ、御息所の手紙を手がかりに宮を得ようと思い定めて、再び小野へ向かう。
語釈・文法注
文法
- 「あるや戀しきなきやかなしき」(あるや戀しきなきやかなしき)
- 生きている人(宮)が恋しいのか、亡くなった人(御息所)が悲しいのか。
- 「よそへ」(似げなのなきがよそへや)
- かこつけること。亡き御息所を口実にすること。
- 「とらへ所」(かの一夜ばかりの御文をとらへ所に)
- 手がかり、よりどころ。御息所の「ひと夜ばかりの宿」の歌の手紙を指す。
解説
雲居の雁の歌は、鋭く夫の心を突いている。夕霧はさりげなくかわすが、雲居の雁は夫の隠し事を見抜いている。夫婦の間の溝が深まっていく。
夕霧は、もはや浮名を隠そうとせず、宮を得ることを決意する。御息所の手紙を手がかりにするという夕霧の考えは、宮の心を無視した身勝手なものである。生真面目な夕霧の恋は、ここで強引さを帯び始める。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、790–791頁(コマ106)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日