源氏物語 第39帖 夕霧(23)
小野に残る宮
今夜すぐとは思わなかった葬送の準備が、たいそう慌ただしくてきぱきと進むのを、夕霧はたいそうあっけないと思って、近くの荘園の人々を呼び寄せて、然るべきことを奉仕するよう指図を定めて帰る。急なことで簡略になりそうだった葬儀も、厳かに人数なども加わって行われた。大和守も、ありがたい殿のお心配りだと喜んで恐縮する。名残さえなく、あきれたことだと宮は転げ回って嘆くが、かいがない。親といっても、これほど慣れ親しむべきではないものだった。拝見する女房たちも、この宮の嘆きぶりをまた不吉に思って嘆く。大和守は残りのことを始末して、このように心細い所にはおいでになれますまい、とても心の休まる暇もないでしょうなどと言うが、宮はやはり、峰の煙だけでも近くで母を思い出したいと、この山里に住み通そうと思っている。忌みに籠っている僧たちは、東面やそちらの渡殿、下屋などに、ちょっとした隔てを設けてひっそりといる。西の廂を簡素に改めて宮は住む。明け暮れも分からないが、月日が過ぎて九月になった。山おろしがたいそう激しく、木の葉の隠れる所もなく散り果てて、何もかもたいそう悲しい頃なので、空の様子にも誘われて、乾く間もなく嘆き、命さえ思いどおりにならないと厭わしくつらく思う。仕える女房たちも何かと物悲しく思い惑っている。

- 1今今こ宵宵よいしもしもしもあらあらあらじじじととと思思おもひひいつるつるつる事事ことどもどもどものののしたゝめしたゝめしたためいといといと程程ほどなくなくなくきはきはしききはきはしききわきわしきをををいといといとあへなしあへなしあえなしととと覺覺おぼいいいててて近近ちかききき御御おんさうさうそうののの人々人々ひとびとめしめしめしおほせおほせおおせてててさるさるさるべきべきべき事事ことどもどもども仕仕つかうまつるうまつるうまつるべくべくべくおきておきておきて定定さだめめめててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。事事ことののの俄俄にわかなれなれなればばばそぐそぐそぐやうやうようなりなりなりつるつるつる事事ことどもどもども嚴嚴いかめしうめしうめしゅう人人にん數數ずなどなどなどもももそひそひそいてててなむなむなん。。。大大やま和和と守守のかみもももありがたきありがたきありがたき殿殿とのののの御御おん心心こころおきておきておきてなどなどなど悅悅よろこびびびかしこまりかしこまりかしこまりきこゆきこゆきこゆ。。。名名な殘殘ごりだにだにだになくなくなくあさましきあさましきあさましきことことことゝゝと宮宮みやはははふしふしふしまろびまろびまろび給給たまへへえどどどかひかひかいなしなしなし。。。親親おやととと聞聞きこゆゆゆともともともいといといとかくかくかくはははならはすならはすならわすまじきまじきまじきものものものなりなりなりけりけりけり。。。見見み奉奉たてまつるるる人々人々ひとびともももこのこのこの御御おん事事ことををを又又またゆゝしうゆゝしうゆゆしゅう歎歎なげききき聞聞きこゆゆゆ。。。大大やま和和と守守のかみのこりのこりのこりののの事事ことどもどもどもしたゝめしたゝめしたためててて、、、「「「かくかくかく心心こころぼそくぼそくぼそくてててはははえええおはしまさおはしまさおわしまさじじじ。。。いといといと御心御心みこころのののひまひまひまあらあらあらじじじ」」」などなどなど聞聞きこゆれゆれゆれどどど猶猶なお峯峯みねののの煙煙けぶりをををだにだにだにけけけぢかくぢかくじかくててて思思おもひひい出出いででで聞聞きこえええむむんとととこのこのこの山山やま里里ざとににに住住すみみみはてはてはてなななむむんとととおぼいおぼいおぼいたりたりたり。。。御御おん忌忌いみにににこもれこもれこもれるるる僧僧そうははは東東ひんがし面面おもてのののそなたそなたそなたののの渡渡わた殿殿どのしもしもしもやややなどなどなどにににはかなきはかなきはかなき隔隔へだてててしししつゝつゝつつかすかかすかかすかにににゐゐいたりたりたり。。。西西にしののの廂廂ひさしをををやつしやつしやつしててて宮宮みやはははおはしますおはしますおわします。。。明明あけけけ暮暮くるゝるゝるるもももおぼしおぼしおぼしわかわかわかねねねどどど月月つき比比ごろへへへけれけれければばば九九なが月月ずきににになりなりなりぬぬぬ山山やまおろしおろしおろしいといといとはげしうはげしうはげしゅう木木こののの葉葉はのののかくろへかくろへかくろえなくなくなくなりなりなりててて萬萬よろずののの事事こといといといといみじきいみじきいみじき程程ほどなれなれなればばば、、、大大おお方方かたののの空空そらにににもももよほさよほさよおされれれてててひるひるひるまままもももなくなくなくててて覺覺おぼししし歎歎なげききき、、、命命いのちさへさへさへ心心こころにににかなはかなはかなわずずずととといとはしういとはしういとわしゅういみじういみじういみじゅうおぼすおぼすおぼす。。。さぶらふさぶらふさぶらう人々人々ひとびとももも萬萬よろずににに物物もの悲悲がなしうしうしゅう思思おもひひいまどへまどへまどえりりり。。。
現代語訳
今夜すぐとは思わなかった葬送の準備が、たいそうほどなく、てきぱきと進むのを、夕霧はたいそうあっけないとお思いになって、近くの御荘園の人々を呼び寄せて命じ、然るべきことをお仕えするよう指図を定めてお帰りになった。急なことだったので簡略になりそうだった葬儀も、厳かに人数なども加わって行われた。大和守も、ありがたい殿のお心配りなどと、喜んで恐縮申し上げる。名残さえなく、あきれたことだと、宮は転げ回ってお嘆きになるが、かいがない。親といっても、これほどまでに慣れ親しむべきものではなかったのだ。拝見する女房たちも、この宮のお嘆きぶりを、また不吉なことに思ってお嘆き申し上げる。大和守は残りのことを始末して、「このように心細い所では、おいでになれますまい。たいそうお心の休まる暇もございますまい」などと申し上げるが、宮はやはり、峰の煙だけでも近くで母を思い出し申し上げようと、この山里に住み通してしまおうとお思いになっていた。御忌に籠っている僧たちは、東面やそちらの渡殿、下屋などに、ちょっとした隔てを設けて、ひっそりと控えていた。西の廂を簡素に改めて、宮はいらっしゃる。明け暮れもお分かりにならないけれど、月日が過ぎたので九月になった。山おろしがたいそう激しく、木の葉の隠れる所もなく散り果てて、万事がたいそう悲しい頃なので、空の様子にも誘われて、涙の乾く間もなくお嘆きになり、命さえ思いどおりにならないと、厭わしくつらくお思いになる。お仕えする女房たちも、何かと物悲しく思い惑っている。
意訳
夕霧の手配で葬儀は厳かに営まれる。宮は母の煙の立った峰の近くにいたいと、小野の山里に住み続け、晩秋の中で嘆き暮らす。
語釈・文法注
文法
- 「したゝめ」(思ひつる事どものしたゝめ)
- 処置、準備。ここでは葬送の支度。
- 「御さう」(近き御さうの人々)
- 御荘。夕霧の荘園。
- 「峯の煙」(猶峯の煙をだにけぢかくて)
- 火葬の煙。母を荼毘に付した山の煙。
解説
夕霧は、自分の荘園の人々を呼び寄せて葬儀を厳かに営ませる。夕霧の実務的な誠意は、宮を支える力となるが、宮はその誠意を受け入れる余裕がない。
宮は、母の火葬の煙が立った峰の近くに住み続けようとする。晩秋の山おろしと散り果てる木の葉は、宮の悲しみを映している。母を失った宮の孤独が、季節の移ろいとともに深まっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、788–789頁(コマ105)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日