源氏物語 第39帖 夕霧(22)
夕霧の弔問
道のりも遠く、山荘に入っていく頃はたいそうもの寂しい。不吉な様子に引き隔てて巡らした葬送の支度の方は隠して、西面に夕霧を通す。大和守が出てきて泣く泣く恐縮して礼を言う。夕霧は妻戸の簀子に寄りかかって女房を呼び出させるが、皆心も落ち着かず、何も分からない有様である。夕霧が来てくれたので、少し慰められて、少将の君が参る。夕霧は何も言えない。涙もろくはない気丈な性分だが、この場の様子や人々の気配を思いやるにつけても悲しく、無常な世の有様が人ごとでないのもたいそう悲しい。しばらく気を静めて、少しよくなられた様子と伺ったので油断していたうちに、夢も覚めるほどの間に、まことにあきれたことでと申し上げる。宮は、母が思い悩んだのは主にこの人のせいで心も乱れたのだと思うので、そうなるべき運命とはいえ、たいそうつらい人との縁なので、返事さえしない。女房たちが、何とお返事申し上げればよいでしょう、たいそう身分の高いお方が、わざわざ急いでおいでになったお心を分からないようなのも、あまりのことでしょうと口々に言うので、宮は、ただ推し量って言って、私は言うべきことも思いつかないと言って臥してしまうのももっともなので、女房は、ただ今は亡き人と変わらないご様子で、おいでになったことは申し上げましたと伝える。女房たちも泣きむせんでいるので、夕霧は、申し上げようもないので、もう少し自分も心を落ち着け、宮も静まられた頃に参ろう、どうしてこう急にと、その様子が知りたいと言う。少将は、あからさまではないが、御息所が嘆いていた有様を少しずつ話して、お恨み申し上げるようになってしまいそうです、今日はいっそう乱れた心の惑いで申し間違えることもございましょう、宮がこのように思い惑っておられるお心も限りあることなので、少し静まられた頃に、改めてお話をうかがいましょうと、我を忘れた様子なので、夕霧も言いかけた言葉も口がふさがって、本当に闇に迷う心地がする、やはりお慰め申し上げて、少しでもお返事があればと言い置いて、立ち去りかねるのも軽々しく、さすがに人が騒がしいので帰っていく。

- 1程程ほどさへさへさへ遠遠とおくくくててて入入いりりり給給たまふふうほどほどほどいといといと心心こころすごしすごしすごし。。。ゆゝしげゆゝしげゆゆしげににに引引ひききき隔隔へだてててめぐらしめぐらしめぐらしたるたるたる儀儀ぎ式式しきのののかたかたかたははは隱隱かくしししてててこのこのこの西西にしおもておもておもてににに入入いれれれ奉奉たてまつるるる。。。大大やま和和と守守のかみ出出いででできききてててなくなくなくなくなくなくかしこまりかしこまりかしこまり聞聞きこゆゆゆ。。。妻妻つま戶戶どののの簀簀す子子のこにににおしおしおしかゝりかゝりかかり給給たまひひいててて女房女房にょうぼうよびよびよび出出いでででさせさせさせ給給たまふふうににに、、、あるあるあるかぎりかぎりかぎり心心こころもももをさまらをさまらおさまらずずず物物もの覺覺おぼえええぬぬぬほどほどほどなりなりなり。。。かくかくかくわたりわたりわたり給給たまへへえるるるにににぞぞぞ聊聊いささかなぐさめなぐさめなぐさめててて少少しょう將將しょうののの君君きみはははまゐるまゐるまいる。。。物物ものもももえええのたまひのたまひのたまいやらやらやらずずず、、、淚淚なみだもろもろもろにににおはせおはせおわせぬぬぬ心心こころづよさづよさずよさなれなれなれどどど所所ところのののさまさまさま人人ひとのののけはひけはひけわいなどなどなどをををおぼしおぼしおぼしやるやるやるもももいみじういみじういみじゅうててて常常つねなきなきなき世世よののの有有あり樣樣さまののの人人ひとのののうへうへうえならならならぬぬぬもももいといといと悲悲かなしきしきしきなりなりなりけりけりけり。。。やゝやゝややためらひためらひためらいててて「「「よろしうよろしうよろしゅうをこたりをこたりおこたり給給たまふふうさまさまさまににに承承うけたまわりりりしかしかしかばばば思思おもひひい給給たまへへえたゆみたゆみたゆみたりたりたりししし程程ほどににに夢夢ゆめもももさむるさむるさむる程程ほど侍侍はべるるるなるなるなるををを、、、いといといとあさましうあさましうあさましゅうなむなむなん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。おぼしおぼしおぼしたりたりたりしししさまさまさまこれこれこれにににおほくおほくおおくははは御心御心みこころももも亂亂みだれれれにににしししぞぞぞかしかしかしとととおぼすおぼすおぼすににに、、、さるさるさるべきべきべきとととはははいひいひいいながらながらながらもももいといといとつらきつらきつらき人人ひとののの御御おん契契ちぎりなれなれなればばばいらへいらへいらえをををだにだにだにももも給給たまははわずずず「「「いかにいかにいかに聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふうとととかかか聞聞きこえええ侍侍はべるるるべきべきべき。。。いといといとかるらかかるらかかるらかならならならぬぬぬ御御おんさまさまさまにてにてにて、、、かくかくかくふりはへふりはへふりはえ急急いそぎぎぎ渡渡わたらららせせせ給給たまへへえるるる御心御心みこころばへばへばえをををおぼしおぼしおぼしわかわかわかぬぬぬやうやうようならならならむむんもももあまりあまりあまりににに侍侍はべりりりぬぬぬべしべしべし」」」ととと口口くち々々ぐちきこゆれきこゆれきこゆればばば「「「たゞたゞただおしおしおしはかりはかりはかりててて。。。われわれわれはははいふいふいうべきべきべきことことことももも覺覺おぼえええずずず」」」とてとてとて臥臥ふししし給給たまへへえるるるもももことわりことわりことわりにてにてにて「「「只只ただ今今いまはははなきなきなき人人ひとととと異異ことならならならぬぬぬ御御おん有有あり樣樣さまにてにてにてなむなむなん。。。渡渡わたらららせせせ給給たまへへえるるる由由よしははは聞聞きこえええさせさせさせ侍侍はべりりりぬぬぬ」」」ととと聞聞きこゆゆゆ。。。
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現代語訳
道のりまで遠くて、山荘にお入りになる頃は、たいそうもの寂しい。不吉な様子に引き隔てて巡らしてある葬送の支度の方は隠して、この西面に夕霧をお入れ申し上げる。大和守が出てきて、泣く泣く恐縮してお礼を申し上げる。夕霧は妻戸の簀子に寄りかかりなさって、女房を呼び出させなさるが、いる者は皆、心も落ち着かず、何も分からない有様である。このようにおいでになったので、少し慰められて、少将の君が参る。夕霧は何もおっしゃることができず、涙もろくはいらっしゃらない気丈さだけれど、この場の様子や人々の気配などを思いやりなさるにつけても悲しくて、無常な世の有様が人ごとでないのも、たいそう悲しいのであった。しばらく心を静めて、「少しよくなっていらっしゃるご様子と承っておりましたので、油断しておりましたうちに、夢も覚めるほどの短い間のことだと聞きますのに、たいそうあきれたことで」と申し上げなさった。宮は、母がお嘆きになっていた様子は、主にこの人のことでお心も乱れておしまいになったのだとお思いになるので、そうなるべき運命とはいいながらも、たいそうつらい人とのご縁なので、返事さえなさらない。女房たちが「どのように申し上げなさったと、申し上げればよいでしょうか。たいそう軽々しくないご身分で、このようにわざわざ急いでおいでくださったお心遣いを、お分かりにならないようなのも、あまりのことでございましょう」と口々に申し上げるので、宮は「ただ推し量って申し上げなさい。私は言うべきことも思いつきません」と言って臥していらっしゃるのももっともなので、女房は「ただ今は、亡き人と変わらないご様子でいらっしゃいまして。おいでくださいましたことは申し上げました」と申し上げる。
この女房たちも泣きむせんでいる様子なので、夕霧は「申し上げようもないので、もう少し自分も心を落ち着け、宮もまた静まりなさった頃に参りましょう。どうしてこのように急にと、そのご様子が知りたいのです」とおっしゃるので、少将は、あからさまではないけれど、あの御息所がお嘆きになっていた有様を、少しずつ申し上げて、「お恨み申し上げるようなことになってしまいそうです。今日はいっそう乱れた心どもの惑いで、申し間違えることもございましょう。それでは、このように思い惑っていらっしゃる宮のお心も、限りあることですので、少し静まりなさった頃に、お話を申し上げ、また承りましょう」と言って、我を忘れた様子なので、夕霧もおっしゃりかけたことも口がふさがって、「本当に、闇に迷っている心地がします。やはりお慰め申し上げなさって、少しでもお返事がありましたら」などと言い置いて、立ち去りかねていらっしゃるのも軽々しく、さすがに人が騒がしいので、お帰りになった。
意訳
夕霧は葬送の支度の進む小野を訪れて弔意を述べるが、宮は母の嘆きのもとは夕霧だと思って返事もしない。
少将は御息所の嘆きをほのめかし、夕霧は闇に迷う心地で、言葉もなく帰っていく。
語釈・文法注
文法
- 「ふりはへ」(かくふりはへ急ぎ渡らせ給へる)
- わざわざ、ことさらに。
- 「かたはしづゝ」(かのおもほし歎きし有樣をかたはしづゝ聞えて)
- 一部分ずつ、少しずつ。
- 「かこつ」(かこち聞えさするさまに)
- 恨み言を言う、他のせいにする。
解説
夕霧の弔問に、宮は返事さえしない。宮にとって、母の死の原因は夕霧である。少将も、御息所の嘆きをほのめかし、恨み言めいた言葉を漏らす。夕霧は初めて、自分の振る舞いが御息所を追いつめたことを知る。
涙もろくない気丈な夕霧が、言葉もなく帰っていく姿は哀れである。「闇に惑へる心ち」という夕霧の言葉は、悲しみと後悔とが入り混じった心を表している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、786–789頁(コマ104–105)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日