源氏物語 第39帖 夕霧(18)
夕霧の返事
夕霧はすぐに出かけようとするが、宮と気楽に対面できるわけでもないのに、御息所もこのように言っておられる、どうなるだろう、今日は坎日でもあったので、もし万一宮が心を許されたら縁起が悪いだろう、やはりよい日を選ぼうと、生真面目な心で思って、まずこの返事を書く。たいそう珍しいお手紙をいろいろ嬉しく拝見したが、このお咎めは、どうお聞きになったことでしょう、秋の野の草の茂みは分けて入りましたが、仮寝の枕を結んだりはしませんでした、弁明申し上げるのも筋違いですが、昨夜伺わなかった罪は、ひたすら籠っていたためでしょうかと書く。宮にはたいそう多く書いて、厩の足の速い馬に鞍を置いて、あの一夜の大夫を使いに出す。昨夜から六条院に伺っていて、今退出したところだと言えと、言うべきことをささやいて教える。

- 1やがてやがてやがて出出いででで立立たちちちたまはたまはたまわむむんとととするするするををを、、、心心こころやすくやすくやすく對對たい面面めんもももあらあらあらざらざらざらむむんものからものからものから人人ひともももかくかくかくのたまふのたまふのたまう、、、いかならいかならいかならむむん、、、坎坎かん日日にちにににもももありありありけるけるけるをををもしもしもしたまさかたまさかたまさかににに思思おもひひいゆるしゆるしゆるし給給たまははわゞゞば惡惡あしからしからしからむむん、、、猶猶なおよからよからよからむむんことことことをををこそこそこそととと、、、うるはしきうるはしきうるわしき心心こころにににおぼしおぼしおぼしてててまづまづまずこのこのこの御御おん返返かへしししををを聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「いといといとめづらしきめづらしきめずらしき御御おん文文ふみをををかたがたかたがたかたがた嬉嬉うれしうしうしゅう見見み給給たまふふうにににこのこのこの御御おんとがめとがめとがめをををなむなむなん。。。いかにいかにいかに聞聞きこしめししめししめしたるたるたることことことにににかかか。。。秋秋あきののの野野のののの草草くさのののしげみしげみしげみははは分分わけけけしかしかしかどどどかりかりかりねねねののの枕枕まくらむすびむすびむすびやややはははせせせししし。。。あきらめあきらめあきらめ聞聞きこえええさするさするさするもももあやなけれあやなけれあやなけれどどどよべよべよべののの罪罪つみはははひたやひたやひたやごもりごもりごもりにににややや」」」とととありありあり。。。宮宮みやにににはははいといといと多多おおくくく聞聞きこえええ給給たまひひいてててみみみまやまやまやにににあしあしあしときときとき御御おん馬馬うまにににうつしうつしうつしおきおきおきててて一一ひと夜夜よのののたいふたいふたいふをををぞぞぞ奉奉たてまつれれれ給給たまふふう。。。「「「よべよべよべよりよりより六六ろく條條じょう院院いんにににさぶらひさぶらひさぶらいててて只只ただ今今いまなむなむなん罷罷まかでででつるつるつるととといへいへいえ」」」とてとてとていふいふいうべきべきべきやうやうようさゝめきさゝめきささめき敎敎おしへへへ給給たまふふう。。。
現代語訳
夕霧はすぐにお出かけになろうとするが、宮と気楽に対面できるわけでもないのに、御息所もこのようにおっしゃっている、どうなるだろう、今日は坎日でもあったのに、もし万一宮が心を許してくださったら縁起が悪いだろう、やはりよいようにしようと、生真面目なお心でお思いになって、まずこのお返事を申し上げなさる。「たいそう珍しいお手紙を、あれこれと嬉しく拝見いたしましたが、このお咎めは。どのようにお聞きになったことでしょうか。秋の野の草の茂みは分けて入りましたけれど、仮寝の枕を結んだりはいたしませんでした。弁明申し上げるのも筋違いですが、昨夜伺わなかった罪は、ひたすら籠っておりましたためでしょうか」とある。宮にはたいそう多く申し上げなさって、厩の足の速いお馬に鞍を置き移して、あの一夜の大夫を使いにお出しになる。「昨夜から六条院に伺っていて、ただ今退出したところだと言え」と言って、言うべきことをささやいてお教えになる。
意訳
夕霧は坎日を避けて自分では行かず、仮寝の枕は結ばなかったと弁明する返事を書き、使いを小野へ急がせる。
語釈・文法注
文法
- 「坎日」(坎日にもありけるを)
- 陰陽道でいう凶日。外出や事を始めるのを避けた。
- 「かりねの枕むすびやはせし」(かりねの枕むすびやはせし)
- 仮寝の枕を結んだりはしなかった。宮と一夜を共にしなかったことをいう。
- 「ひたやごもり」(よべの罪はひたやごもりにや)
- ひたすら家に籠っていること。
解説
夕霧は、坎日だからという理由で自ら小野へ行かず、手紙で済ませる。生真面目な夕霧らしい判断だが、この判断が致命的となる。御息所が待っているのは、手紙ではなく夕霧本人の訪問であった。
夕霧の返歌は、宮と一夜を共にしなかったことを弁明する。しかしこの弁明は、御息所の目には、宮を軽んじる言葉と映りかねない。誠実さが裏目に出る夕霧の不器用さが、悲劇を深めていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、784–785頁(コマ103)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日