源氏物語 第39帖 夕霧(16)
隠された手紙
大輔の乳母はたいそう苦しく聞いて、何も言わない。あれこれ言い合って、雲居の雁がこの手紙を隠してしまったので、夕霧は無理にも探し取らずに、平然と寝てしまったが、胸騒ぎがして、何とかして取り返したい、御息所の手紙のようだ、何事があったのだろうと、眠れずに思い悩んで臥している。雲居の雁が寝ている間に、昨夜の御座の下などをさりげなく探るがない。隠すような場所もないので、たいそういらいらして、夜が明けてもすぐには起きない。雲居の雁は子どもたちに起こされていざり出ていくので、夕霧も今起きたようにして、あれこれ探るが見つけられない。雲居の雁は、夫がこんなに探しているとも思わず、本当に懸想文ではなかったのだと気にも留めないので、子どもたちが慌ただしく遊び、人形を作り据えて遊び、本を読んだり手習いをしたりと、さまざまにたいそう騒がしく、小さい子は這い寄って引っ張るので、取った手紙のことも思い出さない。夕霧は他のことは何も考えられず、小野へ早く返事をしようと思うが、昨夜の手紙の内容も確かに見ないままになったので、見ていない様子の返事では、手紙をなくしてしまったと推し量られるだろうなどと思い乱れる。皆が食事などして落ち着いた昼ごろ、夕霧は思いあぐねて、昨夜の手紙には何が書いてあったのか、不思議と見せてくださらないで、今日もお見舞いしなければならない、気分が悪くて六条院にも参れそうにないので、手紙を差し上げよう、何があったのだろうと言うのがたいそうさりげないので、雲居の雁は、手紙を取ったのは愚かだったと興ざめして、そのことには触れない。雲居の雁は、一夜の深山の風に当たって具合を悪くしたのだと、おもしろいように言い訳なさいませと言う。夕霧は、いや、そんな見当違いを口癖にしなさるな、何のおもしろいことがあるものか、世間の男と同じに考えなさるのがかえって恥ずかしい、この女房たちも、妙な堅物ぶりをこうおっしゃるのを笑っているだろうにと冗談めかして、その手紙はどこかと言うが、雲居の雁はすぐには出さないうちに、なお話などをして、しばらく臥しているうちに日が暮れてしまった。

- 1大大たい輔輔ふののの乳乳め母母のといといといと苦苦くるしししととときゝきゝききててて物物ものももも聞聞きこえええずずず、、、とかくとかくとかくいひいひいいしろひしろひしろいてててこのこのこの御御おん文文ふみはははひきひきひきかくしかくしかくし給給たまひひいつれつれつればばばせめてせめてせめてもももあさりあさりあさりとらとらとらでででつれなくつれなくつれなく大大おお殿殿との籠籠ごもりりりぬれぬれぬればばば胸胸むねはしりはしりはしりててて、、、いかでいかでいかでとりとりとりてててしがしがしがなななととと御御み息息やす所所どころののの御御おん文文ふみなななめりめりめり。。。何何なに事事ごとありありありつつつらむらむらんととと目目めもももあはあはあわずずず思思おもひひいふしふしふし給給たまへへえりりり。。。女女おんな君君ぎみののの寢寢ね給給たまへへえるるるににによべよべよべのののおましおましおましのののしたしたしたなどなどなどさりげなくさりげなくさりげなくててて捜捜さぐりりり給給たまへへえどどどなしなしなし。。。隱隱かくししし給給たまへへえらむらむらん程程ほどもももなけれなけれなければばばいといといと心心こころやましくやましくやましくててて明明あけけけぬれぬれぬれどどど頓頓とみにににももも起起おききき給給たまははわずずず。。。女女おんな君君ぎみははは君君きん達達だちにににおどろかさおどろかさおどろかされれれてててゐざりゐざりいざり出出いででで給給たまふふうにににぞぞぞ、、、われわれわれももも今今いま起起おききき給給たまふふうやうやうようにてにてにて萬萬よろずにににうかゞひうかゞひうかがい給給たまへへえどどどえええ見見みつけつけつけ給給たまははわずずず。。。女女おんなはははかくかくかく求求もとめめめむむんともともとも思思おもひひい給給たまへへえらららぬぬぬをををぞぞぞ、、、げにげにげにけさうけさうけそうなきなきなき御御おん文文ふみなりなりなりけりけりけりととと心心こころにににももも入入いれれれねねねばばば君君きん達達だちのののあわてあわてあわて遊遊あそびびびひゝなひゝなひいなつくりつくりつくりすゑすゑすえててて遊遊あそびびび給給たまふふう。。。文文ふみよみよみよみ手手てならひならひならいなどなどなどさまざまさまざまさまざまにににいといといとあわたゞしくあわたゞしくあわただしくちひさきちひさきちいさきちごちごちごはひはひはいかゝりかゝりかかりひきひきひきしろへしろへしろえばばばとりとりとりししし文文ふみのののことことことももも思思おもひひい出出いででで給給たまははわずずず。。。男男おとこはははことことこと事事こともももおぼえおぼえおぼえ給給たまははわずずずかしこかしこかしこににに疾疾とくくく聞聞きこえええむむんととと覺覺おぼすすすににに、、、よべよべよべののの御御おん文文ふみのののさまさまさまもももえええたしかたしかたしかににに見見みずずずなりなりなりにににしかしかしかばばば見見みぬぬぬさまさまさまならならならむむんもももちらしちらしちらしてててけるけるけるととと推推おししし量量はかりりり給給たまふふうべしべしべしなどなどなど思思おもひひい亂亂みだれれれ給給たまふふう。。。
- 2誰誰たれもももたれたれたれももも御御おんだいだいだい參參まいりりりなどなどなどしししててて長長のど閑閑かににになりなりなりぬるぬるぬる晝晝ひるつかたつかたつかた思思おもひひいわづらひわづらひわずらいててて「「「よべよべよべののの御御おん文文ふみははは何何なに事事ごとかかかありありありししし。。。あやしうあやしうあやしゅう見見みせせせ給給たまははわででで今今け日日きょうもももとぶらひとぶらひとぶらい聞聞きこゆゆゆべしべしべし。。。なやましうなやましうなやましゅうててて六六ろく條條じょうにににもももえええ參參まいるるるまじけれまじけれまじければばば文文ふみをををこそこそこそははは奉奉たてまつらららめめめ。。。何何なに事事ごとかかかありありありけむけむけん」」」とととののの給給のたまふふうがががいといといとさりげなけれさりげなけれさりげなければばば、、、文文ふみはははをこがましうをこがましうおこがましゅうとりとりとりてててけりけりけりとととすさまじうすさまじうすさまじゅうてててそのそのその事事ことをををばばばかけかけかけ給給たまははわずずず。。。「「「一一ひと夜夜よののの深深み山山やま風風かぜにににあやまちあやまちあやまち給給たまへへえるるるなやましさなやましさなやましさななななりなりなりとととをかしきをかしきおかしきやうやうようにににかこちかこちかこち聞聞きこえええ給給たまへへえかしかしかし」」」ととと聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「いでいでいでこのこのこのひがひがひがごとごとごとななな常常つねにににのたまひのたまひのたまいそそそ。。。何何なにのののをかしきをかしきおかしきやうやうようかかかあるあるある。。。世世よ人人ひとににになずらへなずらへなずらえ給給たまふふうこそこそこそなかなかなかなかなかなかはづかしけれはづかしけれはずかしけれ。。。このこのこの女房達女房達にょうぼうたちもももかつはかつはかつはあやしきあやしきあやしきまめまめまめざまざまざまをををかくかくかくのたまふのたまふのたまうことことことほゝゑむほゝゑむほほえむらむらむらんものものものををを」」」とととたはぶれたはぶれたわぶれごとごとごとにににいひいひいいなしなしなしててて「「「そのそのその文文ふみよよよいづらいづらいずら」」」とととのたまへのたまへのたまえどどどとみとみとみにににもももひきひきひき出出いででで給給たまははわぬぬぬ程程ほどににに猶猶なお物語物語ものがたりなどなどなど聞聞きこえええてててしばししばししばしふしふしふし給給たまへへえるるる程程ほどににに暮暮くれれれにににけりけりけり。。。
現代語訳
大輔の乳母は、たいそう苦しいと聞いて、何も申し上げない。あれこれと言い合って、雲居の雁がこのお手紙を隠しておしまいになったので、夕霧は無理にも探し取らずに、平然とお休みになったが、胸騒ぎがして、何とかして取り返したいものだ、御息所のお手紙のようだ、何事があったのだろうと、目も合わずに思い悩んで臥していらっしゃった。女君(雲居の雁)がお休みになっている間に、昨夜の御座の下などを、さりげなくお探りになるがない。隠しなさるような場所もないので、たいそういらいらして、夜が明けたけれど、すぐにはお起きにならない。女君は子どもたちに起こされて、いざり出ていらっしゃるので、夕霧も今起きなさったようにして、あれこれと探りなさるが、見つけることがおできにならない。女君は、夫がこのように探そうとも思っていらっしゃらないうえに、本当に懸想文ではなかったのだと、心にも留めないので、子どもたちが慌ただしく遊び、人形を作って据えて遊びなさる。本を読んだり手習いをしたりと、さまざまにたいそう騒がしく、小さい子は這い寄って引っ張るので、取った手紙のことも思い出しなさらない。男君(夕霧)は、他のことは何も考えられず、あちら(小野)に早くお返事申し上げようとお思いになるのに、昨夜のお手紙の内容も確かに見ないままになってしまったので、見ていない様子の返事では、手紙をなくしてしまったのだと推し量りなさるだろうなどと、思い乱れなさる。
皆が食事などを召し上がって、落ち着いた昼ごろ、夕霧は思いあぐねて、「昨夜のお手紙には、何が書いてあったのですか。不思議と見せてくださらないで。今日もお見舞い申し上げなければならない。気分が悪くて六条院にも参れそうにないので、手紙を差し上げよう。何があったのだろう」とおっしゃるのが、たいそうさりげないので、雲居の雁は、手紙は愚かにも取ってしまったものだと興ざめして、そのことには触れなさらない。「一夜の深山の風に当たって具合を悪くなさった気分の悪さなのでしょうと、おもしろいように言い訳申し上げなさいませ」と申し上げなさる。夕霧は「いや、そんな見当違いを、いつもおっしゃいますな。何のおもしろいことがありましょう。世間の男と同じようにお考えになるのが、かえって恥ずかしい。この女房たちも、一方では、私の妙な堅物ぶりを、このようにおっしゃることを笑っているでしょうに」と冗談めかして言いなして、「その手紙は、どこですか」とおっしゃるが、雲居の雁はすぐにはお出しにならないうちに、なお話などを申し上げて、しばらく臥していらっしゃるうちに、日が暮れてしまった。
意訳
夕霧は雲居の雁が隠した手紙をひそかに探すが見つからず、返事も書けずに思い乱れる。
夕霧はさりげなく手紙のありかを尋ねるが、雲居の雁は出さないまま、日が暮れてしまう。
語釈・文法注
文法
- 「ひゝな」(ひゝなつくりすゑて遊び給ふ)
- 雛。紙や布で作った人形。
- 「ちらす」(見ぬさまならむもちらしてけると)
- なくす、失う。
- 「深山風」(一夜の深山風にあやまち給へる)
- 深い山の風。小野の山里での一夜を皮肉っていう。
解説
子どもたちの賑やかな遊びの描写は、夕霧の家庭の温かさと騒がしさを伝える。その中で、夕霧はひそかに手紙を探し、雲居の雁は手紙のことも忘れて子どもの世話をする。夫婦の心のすれ違いが、ユーモラスに描かれている。
手紙が見つからないまま、一日が過ぎていく。この遅れが、小野の御息所の命取りとなる。何気ない家庭の一日の陰で、取り返しのつかない時間が流れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、782–783頁(コマ102)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日