源氏物語 第39帖 夕霧(14)
御息所の歌
御息所は、それでもやはり夕霧がどう言うか様子だけでも見ようと、気分が乱れて目の前が暗くなるような中で、目をじっと見開いて、奇妙な鳥の足跡のような字で返事を書く。頼りない身になっているところへ、宮が見舞いに来ていたので、返事を勧めたが、たいそう晴れない様子なので、見かねて私が代わりに、女郎花がしおれている野辺を何と思って、一夜ばかりの宿を借りたのでしょうと、ただ書きさして、ひねって封じて出し、そのまま臥すと、ひどく苦しみ出す。物の怪が油断させていたのかと女房たちは騒ぐ。例によって験のある僧たちが皆騒がしく祈る。宮はやはりお部屋へお戻りくださいと女房たちが申し上げるが、宮は我が身のつらさのままに、母に後れまいと思うので、ぴったりと寄り添っている。

- 1猶猶なおいかゞいかゞいかがのたまふのたまふのたまうととと氣色氣色けしきをををだにだにだに見見みむむんととと、、、心心こころちちちのののかきかきかき亂亂みだりりりくるゝくるゝくるるやうやうようにににししし給給たまふふう。。。めめめをををしまぼりしまぼりしまぼりてててあやしきあやしきあやしき鳥鳥とりののの跡跡あとのののやうやうようににに書書かききき給給たまふふう。。。「「「賴賴たのもしげもしげもしげなくなくなくなりなりなりにににててて侍侍はべるるる、、、とぶらひとぶらひとぶらいににに渡渡わたりりり給給たまへへえるるるをりをりおりにてにてにてそゝのかしそゝのかしそそのかし聞聞きこゆれゆれゆれどどど、、、いといといとはればれしからはればれしからはればれしからぬぬぬさまさまさまににに物物ものししし給給たまふふうめれめれめればばば、、、見見み給給たまへへえわづらひわづらひわずらいてててなむなむなん、、、女女おみな郞郞へ花花ししをるゝしをるゝしおるる野野の邊邊べをををいづこいづこいずことてとてとてひとひとひと夜夜よばかりばかりばかりののの宿宿やどをををかりかりかりけむけむけん」」」とととたゞたゞただかきかきかきさしさしさしててておしおしおしひねりひねりひねりててて出出いだししし給給たまひひいててて臥臥ふししし給給たまひひいぬるぬるぬるまゝまゝままににに、、、いといといといたくいたくいたく苦苦くるしがりしがりしがり給給たまふふう。。。御御おん物物もののののけけけのののたゆめたゆめたゆめけるけるけるにににやややととと人々人々ひとびといひいひいい騷騷さわぐぐぐ。。。例例れいのののげんげんげんあるあるあるかぎりかぎりかぎりいといといと騷騷さわがしうがしうがしゅうのゝしるのゝしるののしる。。。「「「宮宮みやをををばばば猶猶なお渡渡わたらららせせせ給給たまひひいねねね」」」ととと人々人々ひとびと聞聞きこゆれゆれゆれどどど御御おん身身みのののうきうきうきまゝまゝままににに後後おくれれれ聞聞きこえええじじじとととおぼせおぼせおぼせばばばつとつとつとそひそひそい給給たまへへえりりり。。。
現代語訳
御息所は、それでもやはり夕霧がどうおっしゃるか、様子だけでも見ようと思って、気分が乱れて目の前が暗くなるようでいらっしゃる。目をじっと見開いて、奇妙な鳥の足跡のような字でお書きになる。「頼りない身になっておりますところに、宮がお見舞いにおいでになった折で、お返事をお勧め申し上げましたが、たいそう晴れ晴れしくないご様子でいらっしゃるようですので、見かねまして。女郎花のしおれている野辺を、何と思って、一夜ばかりの宿をお借りになったのでしょう」と、ただ書きさして、ひねって封じてお出しになって、そのまま臥しておしまいになると、たいそうひどく苦しみなさる。物の怪が油断させていたのだろうかと、女房たちは言い騒ぐ。例によって、験のある僧たちが皆、たいそう騒がしく祈り立てる。「宮は、やはりお部屋へお戻りください」と女房たちは申し上げるが、宮はご自身のつらさのままに、母に後れ申し上げまいとお思いになるので、ぴったりと寄り添っていらっしゃった。
意訳
御息所は、夕霧の真意を探ろうと、一夜ばかりの宿を借りたのかと責める歌を書いて送り、そのまま重く苦しみ出す。
語釈・文法注
文法
- 「めをしまぼりて」(めをしまぼりて)
- 目をじっと見開いて。病で目がよく見えない中、懸命に書く様子。
- 「女郞花しをるゝ野邊」(女郞花しをるゝ野邊をいづことて)
- しおれた女郎花の咲く野辺。悲しみに沈む宮をたとえる。
- 「たゆむ」(御物のけのたゆめけるにや)
- 油断させる。物の怪が一時退いて油断させていたのかということ。
解説
御息所が病をおして書いた歌は、夕霧を一夜限りの男と責めるものである。御息所は、夕霧の真意を確かめようとしたのであった。この手紙が夕霧の手に渡るまでに、思わぬ事態が起こる。
歌を書き終えた御息所は、そのまま重く苦しみ出す。宮は母に後れまいと寄り添う。母と娘の絆が、ここでも強く描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、780–781頁(コマ101)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日