源氏物語 第39帖 夕霧(13)
夕霧からの手紙
あちらから、また手紙が来る。事情を知らない女房が受け取って、大将殿から少将の君へのお手紙ですと言うのが、またつらいことである。少将は手紙を受け取る。御息所は、どんな手紙かとさすがに尋ねる。人知れず気弱になった心も加わって、心の内では夕霧が今夜来るのを待っていたのに、そうでもないようだと思うのも胸騒ぎがして、さあ、そのお手紙にはやはりお返事なさい、返事をしないのは感心しない、人の評判をよい方に言い直してくれる人はめったにいない、そちらが潔白だと思っても、そう信じる人は少ないだろう、素直なように便りを交わして、やはり以前のままでいるのがよい、返事をしないのは甘えたような態度だろうと言って、手紙を取り寄せる。少将は苦しいが差し出す。手紙には、あきれたお心のほどを見てしまったので、かえってひたむきな心がついてしまいそうだ、せき止めるほど浅く見えるだろう、山川の流れのように、浮名を包みきれないならと、言葉も多く書いてあるが、御息所は最後まで読み切れない。この手紙も、はっきりした後朝の様子でもなく、心外にも得意げに、今夜も来ないのをたいそうひどいと思う。衛門督(柏木)の心が思いがけないものだった時も、たいそうつらいと思ったが、表向きの扱いはまた並ぶ人もなかったので、こちらに力がある気がして慰めたのでさえ、少しも満足できなかったのに、ああひどいことだ、柏木の父大臣の辺りでもどう思い言うだろうと、深く思い込む。

- 1かしこかしこかしこよりよりより又又また御御おん文文ふみありありあり。。。「「「心心こころしらしらしらぬぬぬ人人ひとしもしもしもとりとりとりいれいれいれててて大大だい將將しょう殿殿どのよりよりより少少しょう將將しょうののの君君きみにににとてとてとて御御おん文文ふみありありあり」」」ととといふいふいうぞぞぞ又又また侘侘わびしきしきしきややや。。。少少しょう將將しょう御御おん文文ふみはははとりとりとりつつつ。。。御御み息息やす所所どころ「「「いかなるいかなるいかなる御御おん文文ふみにににかかか」」」とととさすがさすがさすがににに問問とひひい給給たまふふう。。。人人ひとしれしれしれずずずおぼしおぼしおぼし弱弱よわるるる御心御心みこころもももそひそひそいてててしたしたしたににに待待まちちち聞聞きこえええ給給たまひひいけるけるけるににに、、、さささもももあらあらあらぬぬぬなななめりめりめりとととおぼすおぼすおぼすももも心心こころさわぎさわぎさわぎしししててて「「「いでいでいでそのそのその御御おん文文ふみなほなほなお聞聞きこえええ給給たまへへえあいなしあいなしあいなし。。。人人ひとののの御御おん名名なをををよよよざまざまざまにににいひいひいいなほすなほすなおす人人ひとはははかたきかたきかたきものものものなりなりなり。。。そこそこそこににに心心こころぎようぎようぎようおぼすおぼすおぼすともともとも、、、しかしかしかもちゐるもちゐるもちいる人人ひとははは少少すくなくくくこそこそこそあらあらあらめめめ。。。心心こころうつくしきうつくしきうつくしきやうやうようににに聞聞きこえええかよひかよひかよい給給たまひひいててて猶猶なおありありありしししまゝまゝままならならならむむんこそこそこそよからよからよからめめめ。。。あいなきあいなきあいなきあまえあまえあまえたるたるたるさまさまさまなるなるなるべしべしべし」」」とてとてとて召召めしししよすよすよす。。。苦苦くるしけれしけれしけれどどど奉奉たてまつりりりつつつ。。。「「「あさましきあさましきあさましき御心御心みこころのののほどほどほどををを見見み奉奉たてまつりりりあらはいあらはいあらわいてててこそこそこそなかなかなかなかなかなかひたぶるひたぶるひたぶる心心こころもももつきつきつき侍侍はべりりりぬぬぬべけれべけれべけれ。。。せくせくせくからからからにににあさくあさくあさくぞぞぞ見見みえええむむん山山やま川川がわのののながれながれながれてててののの名名なをををつゝみつゝみつつみはてはてはてずずずははは」」」とととことばことばことばもももおほかれおほかれおおかれどどど見見みもももはてはてはて給給たまははわずずず。。。このこのこの御御おん文文ふみもももけざやかけざやかけざやかなるなるなる氣色氣色けしきにににもももあらあらあらでででめざましげめざましげめざましげににに心心こころちちちよよよがほがほがおににに今今こ宵宵よいもももつれなきつれなきつれなきをををいといといといみじいみじいみじとととおぼすおぼすおぼす。。。かんかんかんののの君君きみののの御心御心みこころざまざまざまののの思思おもははわずずずなりなりなりししし時時ときいといといとうしうしうしととと思思おもひひいしかしかしかどどど、、、大大おお方方かたのののもてなしもてなしもてなしははは又又またならぶならぶならぶ人人ひとなかりなかりなかりしかしかしかばばばこなたこなたこなたににに力力ちからあるあるある心心こころちちちしししてててなぐさめなぐさめなぐさめしししだにだにだに世世よににに心心こころもももゆかゆかゆかざりざりざりしししををを、、、あなあなあないみじいみじいみじややや、、、大大おお殿殿とののののわたりわたりわたりににに思思おもひひいのたまはのたまはのたまわむむんことことことゝゝと思思おもひひいしみしみしみ給給たまふふう。。。
現代語訳
あちら(夕霧)から、またお手紙がある。「事情を知らない人がよりによって受け取って、『大将殿から少将の君にということで、お手紙がございます』と言うのが、またつらいことよ。少将はお手紙を受け取った。御息所は「どのようなお手紙ですか」と、さすがにお尋ねになる。人知れず気弱になられたお心も加わって、心の内では夕霧が今夜来るのをお待ち申し上げていらっしゃったのに、そうでもないようだとお思いになるのも胸騒ぎがして、「さあ、そのお手紙には、やはりお返事申し上げなさい。返事をしないのは感心しません。人の評判をよい方に言い直してくれる人は、めったにいないものです。あなたが潔白だとお思いになっても、そう信じてくれる人は少ないでしょう。素直なようにお便りを交わしなさって、やはり以前のままでいるのがよいでしょう。返事をしないのは、甘えたような態度でしょう」と言って、手紙をお取り寄せになる。少将は苦しいけれど差し上げた。「あきれたお心のほどを見てしまったので、かえってひたむきな心もついてしまいそうです。せき止めるほど、浅く見えるでしょう。山川の流れのように、浮名を包みきれないのなら」と、言葉も多いけれど、御息所は最後まで読み切りなさらない。このお手紙も、はっきりした後朝の様子でもなく、心外にも得意顔で、今夜も来ないのをたいそうひどいとお思いになる。かんの君(衛門督、柏木)のお心ざまが思いがけなかった時も、たいそうつらいと思ったが、表向きの扱いはまた並ぶ人もなかったので、こちらに力がある気がして慰めたのでさえ、少しも満足できなかったのに、ああひどいことよ、柏木の父の大殿の辺りでも、どう思い、どうおっしゃるだろうと、深く思い込みなさる。
意訳
夕霧から手紙が来るが、御息所は今夜夕霧が来ないことを知り、後朝の手紙らしくない内容に、宮が軽んじられたと深く嘆く。
語釈・文法注
文法
- 「せくからにあさくぞ見えむ」(せくからにあさくぞ見えむ山川の)
- せき止めるほど浅く見えるだろう。宮が拒むほど、かえって浮名が流れることをいう。
- 「心ちよがほ」(めざましげに心ちよがほに)
- 得意顔、満足そうな顔つき。
- 「かんの君」(かんの君の御心ざまの思はずなりし時)
- 衛門督であった柏木。
解説
御息所は、夕霧が宮と結ばれたと思い込み、今夜も来るのを待っていた。ところが手紙だけで本人は来ない。後朝の作法を欠くこの態度に、御息所は宮が軽んじられたと受け取る。実際には何もなかったのだが、その誤解が御息所を絶望させる。
柏木の時も、心が宮から離れたことをつらく思ったが、表向きは大切に扱われていた。今度はそれさえない。御息所の嘆きは、娘の不運な結婚の繰り返しへの絶望である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、780–781頁(コマ101)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日