源氏物語 第39帖 夕霧(7)
霧に紛れての帰り
月が曇りなく澄みわたって、霧にも紛れずに差し込む。浅い廂の軒は奥行きもない感じなので、月の光に顔を向けているようで、宮が妙にきまり悪く顔を紛らわす様子などは、言いようもなく優美である。夕霧は亡き柏木のことも少し話して、体裁よく穏やかな話をする。それでもやはり、宮が自分を柏木より劣っていると見下すことを恨めしそうに恨む。宮の心の内では、柏木は位などもまだ及ばない身分だったが、誰もが許していたので、自然と夫として扱われて見慣れたのに、それさえたいそう心外な結果になってしまった、ましてこのようにあってはならないことで、よその人でもなく、柏木の父の大臣などが聞いてどう思うだろう、世間の非難は言うまでもなく、朱雀院もどうお聞きになるだろうと、縁の切れない方々の心を思い巡らすと、たいそう残念で、自分一人が強く拒んでも、人の噂はどうなるだろう、母の御息所が知らないでいるのも罪深いようで、こうして聞いて、幼い心だと思い、言われるのもつらいので、せめて夜が明けないうちにお帰りくださいと追い返すほかない。夕霧は、あきれたことだ、何かあったような顔で霧を分けて帰るのか、朝露がどう思うかを、それではお察しください、こんなに間抜けな様子をお見せして、うまくだまして帰したと思い離れられたら、その時は心も抑えきれず、知らないことまで考えて、けしからぬ心遣いも覚えはじめるだろうと思われると言って、たいそう気がかりで中途半端だが、突然の色事にはまったく慣れていない心なので、宮が気の毒で、自分でも見劣りされはしないかと思って、誰のためにも人目につかないほどの霧に紛れて、上の空の気持ちで帰っていく。

- 1月月つきくまくまくまなくなくなくすみすみすみわたりわたりわたりててて霧霧きりにににももも紛紛まぎれれれずずずさしさしさし入入いりりりたりたりたり。。。あさはかあさはかあさはかなるなるなる廂廂ひさしののの軒軒のきはははほどほどほどもももなきなきなき心心こころちちちすれすれすればばば、、、月月つきのののかほかほかおににに向向むかひひいたるたるたるやうやうようなるなるなる、、、あやしうあやしうあやしゅうはしたなくはしたなくはしたなくててて紛紛まぎらはしはしわし給給たまへへえるるるもてなしもてなしもてなしなどなどなどいはいはいわむむん方方かたなくなくなくなまめきなまめきなまめき給給たまへへえりりり。。。故故こ君君ぎみののの御御おん事事ことももも少少すこししし聞聞きこえええ出出いでででゝゝてさまさまさまようようようのどやかのどやかのどやかなるなるなる物語物語ものがたりをををぞぞぞ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。さすがさすがさすがににに猶猶なおかのかのかの過過すぎぎぎにににししし方方かたにににおぼしおぼしおぼしおとすおとすおとすをををばばばうらめしげうらめしげうらめしげににに恨恨うらみみみ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。御心御心みこころのののうちうちうちにににももも、、、かれかれかれははは位位くらいなどなどなどもももまだまだまだ及及およばばばざりざりざりけるけるけるほどほどほどながらながらながら誰誰たれももも誰誰たれももも御御おんゆるしゆるしゆるしありありありけるけるけるににに、、、おのづからおのづからおのずからもてもてもてなさなさなされれれててて見見みなれなれなれたまひたまひたまいにににしししををを、、、それそれそれだにだにだにいといといとめざましきめざましきめざましき心心こころのののなりなりなりにににしししさまさまさまよよよ、、、ましてましてましてかうかうこうあるあるあるまじきまじきまじきことことことににによそよそよそににに聞聞きくくくあたりあたりあたりにににだにだにだにあらあらあらずずず、、、おほおほおお殿殿とのなどなどなどののの聞聞きききき思思おもひひい給給たまははわむむんことことことよよよ、、、なべてなべてなべてののの世世よのののそしりそしりそしりははは更更さらにににもももいはいはいわずずず、、、院院いんにににもももいかにいかにいかに聞聞きこししし召召めしししおもほさおもほさおもおされれれむむんなどなどなど、、、はなれはなれはなれぬぬぬこゝかしここゝかしこここかしこののの御心御心みこころをををおぼしおぼしおぼしめぐらすめぐらすめぐらすにににいといといと口口くちをしうをしうおしゅう、、、我我わががが心心こころ一一ひとつつつにににかうかうこうつようつようつよう思思おもふふうともともとも人人ひとののの物物ものいひいひいいいかならいかならいかならむむん、、、御御み息息やす所所どころのののしりしりしり給給たまははわざらざらざらむむんももも罪罪つみえええがましうがましうがましゅう、、、かくかくかく聞聞きききき給給たまひひいててて心心こころをさなくをさなくおさなくとととおぼしおぼしおぼしのたまはのたまはのたまわむむんもももわびしけれわびしけれわびしければばば、、、「「「明明あかさささでででだにだにだに出出いででで給給たまへへえ」」」とととやらひやらひやらい聞聞きこえええ給給たまふふうよりよりより外外ほかのののことことことなしなしなし。。。
- 2「「「あさましあさましあさましややや、、、ことことことありありありがほがほがおにににわけわけわけ侍侍はべらららむむん。。。朝朝あさ露露つゆののの思思おもははわむむん所所ところににに猶猶なおさらばさらばさらばおぼしおぼしおぼししれしれしれよよよ。。。かうかうこうをこがましきをこがましきおこがましきさまさまさまををを見見みえええ奉奉たてまつりりりてててかしこうかしこうかしこうすかいすかいすかいやりやりやりつつつとととおぼしおぼしおぼし離離はなれれれむむんこそこそこそ、、、そのそのそのきはきはきわゝゝは心心こころもももえええをさめをさめおさめあふあふあうまじうまじうまじゅう知知しらららぬぬぬことことことごとごとごとゝゝとけしからけしからけしからぬぬぬ心心こころづかひづかひずかいもももならひならひならいはじむはじむはじむべうべうびょう思思おもひひい給給たまへへえよらよらよらるれるれるれ」」」とてとてとていといといと後後うしろめたくめたくめたくなかなかなかなかなかなかなれなれなれどどど、、、ゆくりかゆくりかゆくりかにににあざれあざれあざれたるたるたることことことのののまことまことまことにににならはならはならわぬぬぬ御御おん心心こころちちちなれなれなればばばいとほしういとほしういとおしゅう我我わががが御御おんみづからみづからみずからももも心心こころおとりおとりおとりやややせせせむむんなどなどなどおぼいおぼいおぼいててて、、、誰誰たががが御御おんためためためにににもももあらはあらはあらわなるなるなるまじきまじきまじき程程ほどののの霧霧きりににに立立たちちちかくれかくれかくれててて出出いででで給給たまふふう心心こころちちちそらそらそらなりなりなり。。。
現代語訳
月が曇りなく澄みわたって、霧にも紛れずに差し込んできた。浅い廂の軒は奥行きもない感じがするので、月の顔に向かい合っているようで、妙にきまり悪く顔を紛らわしていらっしゃる振る舞いなどは、言いようもなく優美でいらっしゃった。夕霧は亡き君(柏木)のことも少し申し上げ出して、体裁よく穏やかな話を申し上げなさる。それでもやはり、宮があの亡き人に比べて自分を見下していらっしゃることを、恨めしそうに恨み申し上げなさる。宮のお心の内でも、あの人は位などもまだ及ばない身分ではあったが、誰も誰もお許しがあったので、自然と夫として扱われて見慣れなさったのに、それでさえたいそう心外な結果になってしまったことよ、ましてこのようにあってはならないことで、よその関係のない人でもない、父の大殿(致仕の大臣)などがお聞きになってどうお思いになるだろうか、世間一般の非難は言うまでもなく、朱雀院にもどうお聞きになり、お思いになるだろうなどと、縁の切れないあちこちのお心をお思い巡らしになると、たいそう残念で、自分の心一つでこのように強く拒んでも、人の噂はどうなるだろう、母の御息所がご存じないのも罪深いようで、このようにお聞きになって、幼い心だとお思いになり、おっしゃるのもつらいので、「せめて夜を明かさずにお帰りください」と追い返し申し上げなさるほかに、することがない。
夕霧は「あきれたことです。何かあったような顔をして、霧を分けて帰るのでしょうか。朝露がどう思うかを、それではお察しください。このように間の抜けた様子をお見せして、うまくだまして帰してしまったとお思い離れなさるなら、その時こそ、心も抑えきれず、知らないことまであれこれと、けしからぬ心遣いも覚えはじめるにちがいないと思われます」と言って、たいそう気がかりで中途半端だけれど、突然の色めいたことには本当に慣れていないお心なので、宮がお気の毒で、ご自分でも見劣りされはしないかなどとお思いになって、誰のためにも人目につかないほどの霧に紛れて、お帰りになる気持ちは上の空である。
意訳
明け方の月光の中、宮は柏木の父大臣や朱雀院の思惑、母の御息所のことを思って、夜が明けないうちに帰るよう夕霧を追い返す。
夕霧は、何もなかったのに浮名が立つことを恨みながらも、宮を気の毒に思い、霧に紛れて上の空で帰っていく。
語釈・文法注
文法
- 「おぼしおとす」(かの過ぎにし方におぼしおとすをば)
- 見下す、劣ったものと思う。宮が夕霧を柏木より劣ると思っていることを夕霧が恨む。
- 「すかいやる」(かしこうすかいやりつと)
- だまして追い払う。
- 「ゆくりか」(ゆくりかにあざれたること)
- 突然で思いがけない様子。
解説
宮は、柏木との結婚さえ心外な結果に終わったのに、また夕霧との噂が立てばどうなるかと、柏木の父大臣、朱雀院、母の御息所の思惑を思い巡らす。宮の苦しみは、自分の心よりも、周囲の目と体面にある。皇女としての誇りが、宮を縛っている。
夕霧は、何もなかったのに浮名だけが立つことを恨むが、宮を気の毒に思って帰っていく。夕霧の自制は誠実さの表れだが、霧に紛れて帰る姿は、すでに人目を忍ぶ恋の始まりである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、772–775頁(コマ97–98)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日