源氏物語 第37帖 横笛(15)
薫を見る夕霧
夕霧は、この若君をまだよく見ていないと思って、御簾の隙間から若君が顔を出したところに、枯れて落ちた花の枝を取って見せて手招きすると、若君は走ってくる。二藍の直衣だけを着て、ひどく白く光るようにかわいらしいことは、皇子たちよりもきめ細やかに美しく、ふっくらと清らかである。何となく目がとまる心も加わって見るからか、目つきなどは柏木より少し強く才気のある様子がまさっているが、目尻の切れ際の美しく匂うような様子などはたいそうよく柏木に似ている。口もとのことさら華やかな様子でほほえんでいるところなど、自分の見誤りだろうか、源氏はきっと気づいているだろうと、いよいよ源氏の様子を知りたい。宮たちは皇子と思うからこそ気高いが、世の常のかわいい幼子と見えるのに、この君はたいそう上品なうえに格別に美しいのを見比べながら、ああ、もし疑う理由が本当なら、父大臣があれほどひどく呆然と嘆き、柏木の子だと名乗り出る人さえいない、形見に見る名残だけでも残してくれればと泣き焦がれているのに、知らせずにおく罪深さよなどと思うが、いや、どうしてそんなことがあろうかと、やはり納得できず、見当がつかない。気立てまで親しみやすく哀れで、なついて遊ぶので、夕霧はたいそうかわいく思う。

- 1大大だい將將しょうはははこのこのこの君君きみをををまだまだまだえええよくよくよく見見みぬぬぬかなかなかなとととおぼしおぼしおぼしててて、、、御御み簾簾すののの隙隙ひまよりよりよりさしさしさし出出いででで給給たまへへえるるるににに、、、花花はなののの枝枝えだのののかれかれかれててて落落おちちちたるたるたるをををとりとりとりててて見見みせせせ奉奉たてまつりりりてててまねきまねきまねき給給たまへへえばばばはしりはしりはしりおはしおはしおわしたりたりたり。。。ふたふたふたあゐあゐあいのののなほしなほしのうしのののかぎりかぎりかぎりををを着着きててていみじういみじういみじゅう白白しろうううひかりひかりひかりうつくしきうつくしきうつくしきことことこと御御み子子こ達達たちよりよりよりもももこまかこまかこまかにににをかしげをかしげおかしげにてにてにてつぶつぶつぶつぶつぶつぶととときよらきよらきよらなりなりなり。。。なまなまなまめめめとまるとまるとまる心心こころもももそひそひそいててて見見みれれればばばにににややや、、、まなこゐまなこゐまなこいなどなどなどこれこれこれははは今今いますこしすこしすこし强强つようううかどかどかどあるあるあるさまさまさままさりまさりまさりたれたれたれどどど、、、まじりまじりまじりのののとぢめとぢめとじめをかしうをかしうおかしゅうかをれかをれかおれるるる氣色氣色けしきなどなどなどいといといとよくよくよく覺覺おぼえええ給給たまへへえりりり。。。口口くちつきつきつきのののことさらことさらことさらににに華華はなやかやかやかなるなるなるさまさまさましししてててうちうちうちゑみゑみえみたるたるたるなどなどなど、、、わわわがががめめめのののうちつけうちつけうちつけなるなるなるにににやややあらあらあらむむん、、、おとゞおとゞおとどははは必必かならずずず思思おぼしししますますますらむらむらんととと、、、いよいよいよいよいよいよ御御おん氣色氣色けしきゆかしゆかしゆかし。。。
- 2宮宮みやたちたちたちははは思思おもひひいなしなしなしこそこそこそけだかけれけだかけれけだかけれ、、、世世よののの常常つねのののうつくしきうつくしきうつくしきちごちごちごどもどもどもととと見見みえええ給給たまふふうににに、、、このこのこの君君きみはははいといといとあてあてあてなるなるなるものからものからものからさまさまさまことことことにににをかしげをかしげおかしげなるなるなるををを見見みくらべくらべくらべ奉奉たてまつりりりつゝつゝつつ、、、いでいでいで哀哀あわれ若若もしししうたがふうたがふうたがうゆゑゆゑゆえもももまことまことまことならならならばばば、、、父父ちちおとゞおとゞおとどのののさばかりさばかりさばかり世世よにににいみじういみじういみじゅう思思おもひひいほれほれほれ給給たまひひいててて、、、ことことこと名名なのりのりのり出出いでででくるくるくる人人ひとだにだにだになきなきなきことことことかたみかたみかたみににに見見みるるるばかりばかりばかりののの名名な殘殘ごりをををだにだにだにとゞめよとゞめよとどめよかしかしかしとととなきなきなきこがれこがれこがれ給給たまふふうににに、、、聞聞きかかかせせせ奉奉たてまつらららざらざらざらむむん罪罪つみえええがましさがましさがましさなどなどなど思思おもふふうももも、、、いでいでいでいかでいかでいかでさささはははあるあるあるべきべきべきことことことぞぞぞととと猶猶なお心心こころえええずずず思思おもひひいよるよるよるかたかたかたなしなしなし。。。心心こころばへばへばえさへさへさへなつかしうなつかしうなつかしゅうあはれあはれあわれにてにてにてむつれむつれむつれ遊遊あそびびび給給たまへへえばばばいといといとらうたくらうたくろうたくおぼゆおぼゆおぼゆ。。。
現代語訳
大将(夕霧)は、この若君をまだよく見ていないなあとお思いになって、若君が御簾の隙間から顔をお出しになったところに、花の枝の枯れて落ちたのを取ってお見せして手招きなさると、若君は走っていらっしゃった。二藍の直衣だけを着て、ひどく白く光るようにかわいらしいことは、皇子たちよりもきめ細やかに美しくて、ふっくらと清らかである。何となく目がとまる心も加わって見るからだろうか、目つきなどは、この君は柏木よりもう少し強く、才気のある様子がまさっているけれど、目尻の切れ際が美しく匂うような様子などは、たいそうよく柏木に似ていらっしゃる。口もとのことさらに華やかな様子をしてほほえんでいるところなど、自分の目の思い込みだろうか、父の大臣(源氏)はきっとお気づきになっているだろうと、いよいよ源氏のご様子を知りたく思う。
宮たちは、皇子と思うからこそ気高いけれど、世の常のかわいらしい幼子たちとお見えになるのに、この君はたいそう上品であるうえに、格別に美しいのを見比べ申し上げながら、いやもう、ああ、もし疑う理由が本当なら、父大臣(致仕の大臣)があれほど世にひどく呆然となさって、柏木の子だと名乗り出てくる人さえいないこと、形見に見るほどの名残だけでも残してくれればよかったのにと泣き焦がれていらっしゃるのに、お知らせ申し上げずにおく罪深さよ、などと思うにつけても、いや、どうしてそんなことがあるはずがあろうかと、やはり納得できず、見当のつけようがない。気立てまで親しみやすく哀れで、なついて遊びなさるので、夕霧はたいそうかわいく思う。
意訳
夕霧は若君を手招きして見ると、目尻の美しさなどが柏木によく似ており、源氏は気づいているだろうと思う。
夕霧は、疑いが本当なら致仕の大臣に知らせないのは罪深いと思うが、まさかと打ち消し、なつく若君をかわいく思う。
語釈・文法注
文法
- 「ふたあゐ」(ふたあゐのなほしのかぎりを着て)
- 二藍。紅と藍で染めた紫系の色。若者の着る色。
- 「まじり」(まじりのとぢめをかしうかをれる氣色)
- 目尻。
- 「罪えがまし」(聞かせ奉らざらむ罪えがましさ)
- 罪を得そうである、罪深い。
解説
夕霧は、若君の顔を間近に見て、柏木に似ていることに気づく。目尻の美しさ、口もとのほほえみに、亡き親友の面影がある。夕霧の疑いは、確信へと近づいていく。
夕霧は、もし疑いが本当なら、子を失って嘆く致仕の大臣に知らせないのは罪深いと思う。しかし、まさかそんなことがと打ち消す。真相に近づきながら確かめられない夕霧の心の揺れが、丁寧に描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、752–755頁(コマ87–88)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日