源氏物語 第37帖 横笛(13)
笛の行方
夕霧も夢を思い出して、この笛は厄介なものだ、柏木が心をとめて大切にしていたものが、行くべき所に行かなかった、女の方への伝えはかいがないのに、柏木はどう思っただろう、この世で何とも思わなかったことも、臨終の際の一念の恨めしさや、あるいは哀れと思う心にまつわりつかれて、長い世の闇に迷うものだ、だからこそ何事にも執着は残すまいと思うのだなどと思い続けて、愛宕の寺で誦経をさせる。また柏木が帰依していた寺にもさせて、この笛を、御息所がわざわざ由緒深いものとして贈ってくれたのを、すぐに寺に寄進して仏道に向けるのも、尊いこととはいえ、あっけないだろうと思って、六条院に参る。

- 1大大だい將將しょうののの君君きみももも夢夢ゆめおぼしおぼしおぼし出出いづるづるずるにににこのこのこの笛笛ふえのののわづらはしうわづらはしうわずらわしゅうもももあるあるあるかなかなかな、、、人人ひとののの心心こころとゞめとゞめとどめててて思思おもへへえりりりしししものものものゝゝのゆくゆくゆくべきべきべき方方かたにににもももあらあらあらずずず、、、女女おんなののの御御おん傳傳つたへへえはははかひかひかいなきなきなきをををややや、、、いかゞいかゞいかが思思おもひひいつつつらむらむらん、、、このこのこの世世よにてにてにて數數かずににに思思おもひひい入入いれれれぬぬぬことことこともももかのかのかのいまはいまはいまわのののとぢめとぢめとじめににに一一いち念念ねんのののうらめしきうらめしきうらめしきにににももも、、、もしはもしはもしは哀哀あわれとととももも思思おもふふうにににまつはれまつはれまつわれてててこそこそこそははは、、、長長ながききき世世よののの闇闇やみにににももも惑惑まどふふうわざわざわざなななゝゝなれれれ、、、かゝれかゝれかかればばばこそこそこそははは何何なに事事ごとにににもももしうしうしゅうはははとゞめとゞめとどめじじじととと思思おもふふうよよよなれなれなれなどなどなど、、、おぼしおぼしおぼしつゞけつゞけつづけててておたぎおたぎおたぎにににずきやうずきやうずきょうせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。又又またかのかのかの心心こころよせよせよせののの寺寺てらにににもももせせせさせさせさせ給給たまひひいててて、、、このこのこの笛笛ふえをををばばばわざとわざとわざと人人ひとのののさるさるさるゆゑゆゑゆえ深深ふかきききものものものにてにてにてひきひきひき出出いででで給給たまへへえりりりしししををを、、、たちまちたちまちたちまちににに佛佛ほとけののの道道みちにににおもむけおもむけおもむけむむんももも尊尊とうときききことことことゝゝとはははいひいひいいながらながらながらあへなかるあへなかるあえなかるべしべしべしととと思思おもひひいててて六六ろく條條じょう院院いんににに參參まいりりり給給たまひひいぬぬぬ。。。
現代語訳
大将の君(夕霧)も夢をお思い出しになると、この笛は厄介なものだなあ、あの人が心をとめて大切に思っていたものが、行くべき所に行ったわけでもない、女の方からの伝えでは、かいがないことよ、柏木はどう思っただろう、この世で何とも思い入れなかったことでも、あの今はの際に、一念の恨めしさにも、あるいは哀れと思う心にもまつわりつかれてこそ、長い世の闇にも迷うものであるらしい、だからこそ何事にも執着は残すまいと思うのだなあ、などとお思い続けになって、愛宕で誦経をおさせになる。また、柏木が帰依していた寺にもおさせになって、この笛を、御息所がわざわざそのように由緒深いものとして贈ってくださったのを、すぐに仏道に向けて寄進してしまうのも、尊いこととはいいながら、あっけないだろうと思って、六条院に参上なさった。
意訳
夕霧は、笛が行くべき所に行かなかったと柏木が迷っているのだと思い、誦経をさせ、笛のことで六条院に参る。
語釈・文法注
文法
- 「おたぎ」(おたぎにずきやうせさせ給ふ)
- 愛宕。京都東山の愛宕寺(念仏寺)とされる。
- 「心よせの寺」(又かの心よせの寺にも)
- 柏木が帰依していた寺。
- 「あへなし」(あへなかるべしと思ひて)
- あっけない、張り合いがない。
解説
夕霧は、夢の柏木の言葉を、笛が行くべき所に行かなかったことへの迷いと解する。臨終の一念が死者を闇に迷わせるという仏教的な考えから、夕霧は誦経をさせて柏木の成仏を祈る。
夕霧は、笛を寺に寄進するのではなく、源氏のもとへ持っていく。夢の言葉の「思ふかた」が誰なのか、夕霧はうすうす察しているのかもしれない。笛の行方が、物語を源氏と若君へと導いていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、752–753頁(コマ87)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日