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源氏物語 第37帖 横笛(12)

夢に現れた柏木

登場人物:夕霧・柏木・雲居の雁

夕霧が少し寝入った夢に、あの衛門督(柏木)が生前のままの袿姿で傍らに座り、この笛を手に取って見る。夢の中でも、亡き人が厄介にもこの笛の音を求めて来たのだと思っていると、柏木は、笛竹に吹き寄る風が同じことなら、私の末の世の子孫に長くこの音を伝えてほしい、思う方は別にございました、と言う。尋ねようと思ううちに、若君が寝ぼけて泣く声で目が覚める。この君がひどく泣いて乳を吐いたりするので、乳母も起きて騒ぎ、雲居の雁も灯火を近くに取り寄せて、髪を耳に挟んで、せわしなく世話をして抱いている。たいそうよく太ってふっくらと美しい胸を開けて、乳などを含ませる。幼子もたいそうかわいらしい子なので、白く美しいが、乳はまったく出ないのを、気休めに含ませてあやしている。夕霧もそばに来て、どうしたのかと言う。魔除けの散米を撒き散らしたりして騒がしいので、夢の哀れも紛れてしまいそうである。雲居の雁は、苦しそうに見える、今風のあなたが浮かれ歩いて、夜更けの月見に格子まで上げたので、いつもの物の怪が入ってきたのだろうと、たいそう若々しく美しい顔で恨むので、夕霧は笑って、変な物の怪の案内だね、私が格子を上げなければ、道がなくて物の怪も入って来られなかったろう、大勢の子の親になるにつれて、思慮深いことを言うようになったものだと言って見やる目もとがたいそう立派なので、雲居の雁もさすがに何も言わず、もうあちらへ、見苦しいと、明るい灯影を恥じらう様子も憎くない。本当にこの若君はむずかって、一晩中泣き明かした。

夜の夕霧の邸で、灯火のもと雲居の雁が泣く若君を抱いてあやし、散米の撒かれた中で夕霧が笑いながら見守っている場面(AI生成)
夜の夕霧の邸で、灯火のもと雲居の雁が泣く若君を抱いてあやし、散米の撒かれた中で夕霧が笑いながら見守っている場面
  1. 1少すこ少すこすこししし寢ね寢ねね入い入いいりりり給たま給たまたまひひいつるつるつる夢ゆめ夢ゆめゆめにににかのかのかの衛ゑ衛ゑえ門もん門もんもん督かみ督かみかみ唯ただ唯ただただありありありしししさまさまさまのののうちきうちきうちきすがたすがたすがたにてにてにてかたはらかたはらかたわらにににゐゐいてててこのこのこの笛ふえ笛ふえふえをををとりとりとりててて見み見みみるるる、、、夢ゆめ夢ゆめゆめのののうちうちうちにににもももなきなきなき人ひと人ひとひとのののわづらはしうわづらはしうわずらわしゅうこのこのこの聲こゑ聲こゑこえをををたづねたづねたずねてててきたるきたるきたるととと思おも思おもおもふふうににに、、、「「「笛ふえ笛ふえふえ竹たけ竹たけたけにににふきふきふきよるよるよる風かぜ風かぜかぜのののごとごとごとならならならばばば末すゑ末すゑすえののの世よ世よよながきながきながきねねねにににつたへつたへつたえなむなむなん。。。思おも思おもおもふふうかたかたかたことことことににに侍はべ侍はべはべりりりききき」」」ととといふいふいうををを、、、問と問ととはははむむんととと思おも思おもおもふふう程ほど程ほどほどににに、、、若わか若わかわか君ぎみ君ぎみぎみのののねねねおびれおびれおびれてててなきなきなき給たま給たまたまふふう御おん御おんおん聲こゑ聲こゑこえにににさめさめさめ給たま給たまたまひひいぬぬぬ。。。このこのこの君きみ君きみきみいたくいたくいたくなきなきなき給たま給たまたまひひいてててつだみつだみつだみなどなどなどししし給たま給たまたまへへえばばば乳め乳めめ母のと母のとのともももおきおきおきさわぎさわぎさわぎ上うへ上うへうえもももおほとなぶらおほとなぶらおおとなぶら近ちか近ちかちかくくくとりとりとりよせよせよせさせさせさせ給たま給たまたまひひいててて耳みゝ耳みゝみみばさみばさみばさみしししてててそゝくりそゝくりそそくりつくろひつくろひつくろいててて抱いだ抱いだいだきききててて居ゐ居ゐいたまへたまへたまえりりり。。。いといといとよくよくよく肥こ肥ここえええてててつぶつぶつぶつぶつぶつぶとととをかしげをかしげおかしげなるなるなる胸むね胸むねむねをををあけあけあけてててちちちなどなどなどくゝめくゝめくくめ給たま給たまたまふふう。。。ちごちごちごもももいといといとうつくしううつくしううつくしゅうおはするおはするおわする君きみ君きみきみなれなれなればばば白しろ白しろしろくくくをかしげをかしげおかしげなるなるなるににに御おん御おんおんちちちはははいといといとかはらかかはらかかわらかなるなるなるををを心こころ心こころこころをををやりやりやりてててなぐさめなぐさめなぐさめ給たま給たまたまふふう。。。男をとこ男をとこおとこ君ぎみ君ぎみぎみもももよりよりよりおはしおはしおわしててて「「「いかなるいかなるいかなるぞぞぞ」」」などなどなどのたまふのたまふのたまう。。。
  2. 2うちうちうちまきまきまきしししちらしちらしちらしなどなどなどしししてててみだりがはしきみだりがはしきみだりがわしきににに夢ゆめ夢ゆめゆめののの哀あはれ哀あはれあわれもももまぎれまぎれまぎれぬぬぬべしべしべし。。。「「「なやましげなやましげなやましげにににこそこそこそ見み見みみゆれゆれゆれ。。。今いま今いまいまめかしきめかしきめかしき御おん御おんおん有あり有ありあり樣さま樣さまさまののの程ほど程ほどほどにににあくがれあくがれあくがれ給たま給たまたもうううててて夜よ夜よよふかきふかきふかき御おん御おんおん月つき月つきつきめでめでめでににに格かう格かうこう子し子ししもももあげあげあげられられられたれたれたればばば、、、例れい例れいれいのののものものものゝゝのけけけののの入い入いいりりりたるたるたるなななめりめりめり」」」などなどなど、、、いといといと若わか若わかわかくくくをかしきをかしきおかしきかほかほかおしししてててかこちかこちかこち給たま給たまたまへへえばばば、、、うちうちうちわらひわらひわらいててて「「「あやしあやしあやしのののものものものゝゝのけけけのののしるべしるべしるべややや。。。まろまろまろ格かう格かうこう子し子ししあげあげあげずずずははは道みち道みちみちなくなくなくてててげにげにげにえええ入い入いいりりりこここざらざらざらましましまし。。。數あま數あまあま多た多たたののの人ひと人ひとひとのののおやおやおやににになりなりなり給たま給たまたまふふうまゝまゝままににに思おも思おもおもひひいいたりいたりいたりふかくふかくふかく物もの物ものものをををこそこそこそのたまひのたまひのたまいなりなりなりにににたれたれたれ」」」とてとてとてうちうちうち見み見みみやりやりやり給たま給たまたまへへえるるるまみまみまみのののいといといとはづかしげはづかしげはずかしげなれなれなればばば、、、さすがさすがさすがににに物もの物ものものももものたまはのたまはのたまわででで「「「いでいでいで給たま給たまたまひひいねねね。。。見み見みみぐるしぐるしぐるし」」」とてとてとてあきらかあきらかあきらかなるなるなるほかげほかげほかげをををさすがさすがさすがににに耻は耻ははぢぢじ給たま給たまたまへへえるるるさまさまさまもももにくからにくからにくからずずず。。。まことまことまことにににこのこのこの君きみ君きみきみなづみなづみなずみててて泣な泣ななきききむつがりむつがりむつがり明あか明あかあかししし給たま給たまたまひひいつつつ。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

夕霧が少し寝入りなさった夢に、あの衛門督(柏木)が、ただ生前のままの袿姿で、傍らに座って、この笛を手に取って見ている。夢の中でも、亡き人が厄介にもこの笛の音を求めて来たのだと思っていると、柏木は「笛竹に吹き寄る風が、同じことなら、私の末の世の子孫に、長くこの音を伝えてほしい。思う方は別にございました」と言うのを、尋ねようと思ううちに、若君が寝ぼけてお泣きになる声で、目がお覚めになった。この君がひどくお泣きになって、乳を吐いたりなどなさるので、乳母も起きて騒ぎ、上(雲居の雁)も灯火を近くに取り寄せさせなさって、額髪を耳に挟んで、せわしなく世話をして、抱いて座っていらっしゃった。たいそうよく太って、ふっくらと美しい胸を開けて、乳などを含ませなさる。幼子もたいそうかわいらしくいらっしゃる君なので、白く美しいけれど、お乳はまったく出ないのを、気休めにあやしていらっしゃる。男君(夕霧)もそばにいらっしゃって、「どうしたのか」などとおっしゃる。

魔除けの散米を撒き散らしたりなどして騒がしいので、夢の哀れも紛れてしまいそうである。雲居の雁は「苦しそうに見えますわ。今風のあなたが浮かれ歩きなさって、夜更けのお月見に格子までお上げになったので、いつもの物の怪が入ってきたのでしょう」などと、たいそう若々しく美しい顔をして恨み言をおっしゃるので、夕霧はにっこり笑って、「おかしな物の怪の案内役だね。私が格子を上げなかったら、道がなくて、本当に物の怪も入って来られなかっただろうに。大勢の子の親におなりになるにつれて、思慮深いことをおっしゃるようになったものだ」と言って、見やりなさる目もとがたいそう立派なので、雲居の雁もさすがに何もおっしゃらずに、「もうあちらへいらっしゃい。見苦しいから」と言って、明るい灯影をさすがに恥じらっていらっしゃる様子も憎らしくない。本当にこの若君はむずかって、泣き騒ぎながら夜を明かしなさった。

意訳

夕霧の夢に柏木が現れ、笛は自分の子孫に伝えてほしい、思う方は別にあったと告げる。

若君の夜泣きに雲居の雁は夕霧の月見のせいだと恨み、夕霧は笑って言い返す。

語釈・文法注

文法

「笛竹にふきよる風」(笛竹にふきよる風のごとならば)
笛竹に吹き寄る風。笛の音を指す。「末の世ながきね」の「ね」に「音」と竹の「根」をかけ、子孫に伝えたいという意を込める。
「思ふかたことに侍りき」(思ふかたことに侍りき)
笛を伝えたいと思う人は別にいた。柏木の実の子である若君(薫)を暗示する。
「うちまき」(うちまきしちらしなどして)
打撒。魔除けのために米をまくこと。
「つだみ」(いたくなき給ひてつだみなどし給へば)
乳を吐くこと。

解説

夕霧の夢に現れた柏木は、笛を子孫に伝えてほしい、思う方は別にあったと告げる。柏木の子とは、女三の宮が産んだ若君(薫)である。夕霧はまだその意味を確かには知らないが、この夢が、夕霧を源氏のもとへ向かわせることになる。

夢の神秘的な哀れは、若君の夜泣きと、雲居の雁の恨み言によって破られる。雲居の雁が乳の出ない胸を含ませてあやす姿や、物の怪の案内役という夕霧の冗談には、生活感あふれる夫婦の姿が描かれている。幽玄な夢と現実の家庭との対比が鮮やかである。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、750–753頁(コマ86–87)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日