古典ライブラリー

源氏物語 第37帖 横笛(5)

若君を抱く源氏

登場人物:光源氏・薫

源氏は若君を抱き上げて、この子の目もとはたいそう意味ありげだ、小さい頃の幼子を多く見ていないからだろうか、この年頃はただあどけないものと思っていたが、今からたいそう様子が違うのが気がかりだ、女宮(明石の女御の姫宮)がいるあたりに、このような人が成長して、誰のためにも心苦しいことが起こるだろう、ああ、それぞれが成長していく先までは見届けられようか、花の盛りはまたあるだろうが、と若君を見守る。女房たちは、縁起でもないことをと言う。若君は歯が生え始めたので噛もうとして、筍をしっかり握り持ち、よだれをたらしてかじり濡らすので、源氏は、たいそう変わった色好みだと言って、つらいことは忘れられないが、この竹の子(この子)は捨てがたいものだと詠み、筍から引き離して話しかけるが、若君は笑って何とも思わず、たいそう忙しく這い降りて騒いでいる。

六条院の一室で、源氏が幼い若君を抱き上げて見つめ、若君が筍を握りしめてよだれをたらしながらかじっている場面(AI生成)
六条院の一室で、源氏が幼い若君を抱き上げて見つめ、若君が筍を握りしめてよだれをたらしながらかじっている場面
  1. 1かきかきかきいだきいだきいだき給たま給たまたまひひいててて「「「このこのこの君きみ君きみきみのののまみまみまみのののいといといと氣色けしき氣色けしきけしきあるあるあるかなかなかな。。。ちひさきちひさきちいさきほどほどほどのののちごちごちごををを數あま數あまあま多た多たた見み見みみねねねばばばにににやややあらあらあらむむん、、、かばかりかばかりかばかりののの程ほど程ほどほどははは唯ただ唯ただただいはけなきいはけなきいわけなきものものものとととのみのみのみ見み見みみしししををを、、、今いま今いまいまよりよりよりいといといとけはひけはひけわいことことことなるなるなるこそこそこそ煩わづら煩わづらわずらはしけれはしけれわしけれ。。。女をんな女をんなおんな宮みや宮みやみやものしものしものし給たま給たまたまふふうめるめるめるあたりあたりあたりにににかゝるかゝるかかる人ひと人ひとひとおひおひおい出い出いいでででゝゝて心苦こころぐる心苦こころぐるこころぐるしきしきしきことことことたたたがががためためためにににもももありありありなななむむんかしかしかし。。。あはれあはれあわれそのそのそのおのおのおのおのおのおのゝゝのおひおひおいゆくゆくゆく末すゑ末すゑすえまでまでまでははは見み見みみもももはてはてはてむむんとととすすすらむらむらんやややははは、、、花はな花はなはなののの盛さかり盛さかりさかりはははありありありなななめめめどどど」」」とととうちうちうちまもりまもりまもり聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。「「「うたてうたてうたてゆゝしきゆゝしきゆゆしき御おん御おんおんことことことにににももも」」」ととと人々ひとびと人々ひとびとひとびとはははきこゆきこゆきこゆ。。。御おん御おんおん齒は齒ははのののおひおひおい出い出いいづるづるずるにににくひくひくいあてあてあてむむんとてとてとて、、、たかうなたかうなたこうなをををつとつとつとにににきりきりきりもちもちもちてててしづくしづくしずくもももよゝよゝよよとととくひくひくいぬらしぬらしぬらし給たま給たまたまへへえばばば「「「いといといとねぢけねぢけねじけたるたるたる色いろ色いろいろごのみごのみごのみかなかなかな」」」とてとてとて、、、「「「うきうきうきふしふしふしももも忘わす忘わすわすれれれずずずながらながらながらくれくれくれ竹たけ竹たけたけのののこここはははすてすてすてがたきがたきがたきものものものにににぞぞぞありありありけるけるける」」」とととゐゐいてててはなちはなちはなちてててのたまひのたまひのたまいかくれかくれかくれどどどうちうちうち笑わら笑わらわらひひいててて何なに何なになにとととももも思おも思おもおもひひいたらたらたらずずず、、、いといといとそゝかしうそゝかしうそそかしゅうはひはひはいおりおりおりさわぎさわぎさわぎ給たま給たまたまふふう。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

源氏は若君を抱き上げなさって、「この君の目もとは、たいそう意味ありげだね。小さい頃の幼子を多く見ていないからだろうか、これくらいの年頃は、ただあどけないものとばかり思っていたが、今からたいそう様子が格別なのが気がかりだ。女宮(明石の女御の姫宮)がいらっしゃるようなあたりに、このような人が成長して、誰のためにも心苦しいことがきっと起こるだろうよ。ああ、それぞれが成長していく先までは、見届けられるだろうか。花の盛りは、またいつの年にもあるだろうが」と、じっと見守り申し上げなさる。「いやな、縁起でもないお言葉で」と、女房たちは申し上げる。若君は御歯が生えかけているので、噛み当てようとして、筍をしっかりと握り持って、よだれもたらたらと垂らしながらかじり濡らしていらっしゃるので、源氏は「たいそう変わった色好みだね」と言って、「つらい節(こと)も忘れられないけれど、この呉竹の子(この子)は捨てがたいものであったよ」と、筍から引き離して抱いて話しかけなさるが、若君はにこにこ笑って、何とも思わず、たいそう忙しく這い降りて騒いでいらっしゃる。

意訳

源氏は若君の行く末を案じつつ、筍をかじる若君に、つらいことは忘れられないがこの子は捨てがたいと詠む。

語釈・文法注

文法

「花の盛はありなめど」(花の盛はありなめど)
「春ごとに花の盛りはありなめどあひ見むことは命なりけり」(古今集)による。花の盛りは毎年あるが、それを見られるかは命しだいだ、の意。
「くれ竹のこ」(くれ竹のこはすてがたきものにぞありける)
呉竹の子。「竹の子(筍)」に「子」をかけ、若君を指す。「ふし(節)」は竹の縁語。
「そゝかし」(いとそゝかしうはひおりさわぎ給ふ)
落ち着きがない、せわしない。

解説

源氏は、若君の目もとに格別なものを見て、将来を案じる。若君が成長して女宮たちのそばにいることで、心苦しいことが起こるかもしれないという予感は、かつて自分が藤壺と犯した罪を思わせる。

「うきふしも忘れずながら」の歌は、竹の節と子をかけた見事な歌である。つらいこと、すなわち宮の密通は忘れられないが、この子は捨てがたい。源氏の複雑な愛情が、無邪気に筍をかじる若君への言葉に込められている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、746–747頁(コマ84)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日