源氏物語 第36帖 柏木(21)
夕霧の疑念
夕霧は、柏木が思いあまってほのめかしたことは何だったのか、もう少し正気がある時だったら、あれほど言いかけたのだから、よく様子を見て取れたろうに、言っても仕方のない最期の時で、折悪しく気がかりで哀れなことだったと、柏木の面影が忘れがたく、兄弟たちよりもひどく悲しく思う。女三の宮がこのように出家したのも、大げさな病気でもないのに、思い切りよく決心したものだ、また源氏も、いくら何でもお許しになってよいことだろうか、紫の上があれほど危篤で泣く泣く出家を願ったと聞いたのに、大変なことだと思って引きとどめたのに、などと考え合わせると、やはり柏木は昔から宮への思いが絶えず見えて、こらえきれない折々もあった、うわべはよく落ち着いて人よりたしなみがあり、穏やかで、何を心の内に思っているのかと見る人も気づまりなほどだったが、少し弱いところがあって、優しすぎたせいだろう、どれほどでも、あってはならないことに心を乱し、このように命と引き換えにすべきことだったろうか、人のためにも気の毒で、自分の身も無駄にしてしまうとは、前世の因縁とはいえ、たいそう軽率でつまらないことだと、一人で思うが、妻の雲居の雁にさえ話さず、源氏にも然るべき機会がなくて言い出さない。実のところ、柏木がこんなことをほのめかしたと申し上げて、源氏の様子も見てみたかった。

- 1大大だい將將しょうののの君君きみはははかのかのかの心心こころにににあまりあまりあまりてててほのめかしほのめかしほのめかし出出いでででたりたりたりしししををを、、、いかなるいかなるいかなる事事ことにににかかかありありありけむけむけん、、、少少すこししし物物もの覺覺おぼえええたるたるたるさまさまさまならならならましかましかましかばばばさばかりさばかりさばかりうちうちうち出出いでででそめそめそめたりたりたりしししににに、、、いといといとようようよう氣色氣色けしきををを見見みてててましましましををを、、、いふかひいふかひいうかいなきなきなきとぢめとぢめとじめにてにてにてをりをりおりあしうあしうあしゅういぶせういぶせういぶしょうあはれあはれあわれにににもももありありありしししかなかなかなととと、、、面面おも影影かげ忘忘わすれれれがたくがたくがたくてててはらからはらからはらからののの君君きん達達だちよりよりよりもももしひしひしいててて悲悲かなしししととと覺覺おぼえええ給給たまひひいけりけりけり。。。女女おんな宮宮みやのののかくかくかく世世よををを背背そむききき給給たまへへえるるる有有あり樣樣さまおどろおどろしきおどろおどろしきおどろおどろしきなやみなやみなやみにににもももあらあらあらででですかやかすかやかすかやかにににおぼしおぼしおぼし立立たちちちけるけるける程程ほどよよよ、、、又又またさりともさりともさりとも許許ゆるししし聞聞きこえええ給給たまふふうべきべきべきことことことかかかははは、、、二二に條條じょうのののうへうへうえのののさばかりさばかりさばかり限限かぎりにてにてにてなくなくなくなくなくなく申申もうししし給給たまふふうととと聞聞ききききしししををを、、、いみじきいみじきいみじきことことことにににおぼしおぼしおぼしててて遂遂ついにににかくかくかくかけかけかけとゞめとゞめとどめ奉奉たてまつりりり給給たまへへえるるるものものものをををなどなどなど、、、取取とりりり集集あつめめめててて思思おもひひいくだくくだくくだくににに、、、猶猶なお昔昔むかしよりよりより絕絕たえええずずず見見みゆるゆるゆる心心こころばへばへばええええ忍忍しのばばばぬぬぬ折折おり々々おりもももありありありきききかしかしかし、、、いといといとようようようもてもてもてしづめしづめしずめたるたるたるうはべうはべうわべははは人人ひとよりよりよりけにけにけに用用よう意意いありありあり、、、のどかのどかのどかににに何何なに事事ごとをををこのこのこの人人ひとののの心心こころののの中中なかににに思思おもふふうらむらむらんととと、、、見見みるるる人人ひとももも苦苦くるしきしきしきまでまでまでありありありしかしかしかどどど、、、少少すこしししよわきよわきよわき所所ところつきつきつきてててなよびなよびなよび過過すぎぎぎたりたりたりしししけけけぞぞぞかしかしかし、、、いみじくいみじくいみじくともともともさるさるさるまじきまじきまじき事事ことににに心心こころをををみだりみだりみだり、、、かくかくかくしもしもしも身身みにににかふかふかうべきべきべき事事ことにににやややはははありありありけるけるける、、、人人ひとののの爲爲ためにににもももいとほしういとほしういとおしゅう我我わががが身身みはははたたたいたづらいたづらいたずらにににやややなすなすなすべきべきべき、、、さるさるさるべきべきべき昔昔むかしののの契契ちぎりととといひいひいいながらながらながらいといといとかるがるしうかるがるしうかるがるしゅう味味あじ氣氣きなきなきなきことことことなりなりなりかしかしかしなどなどなど心心こころひとつひとつひとつににに思思おもへへえどどど、、、女女おんな君君ぎみにににだにだにだに聞聞きこえええ出出いででで給給たまははわずずず、、、さるさるさるべきべきべきついでついでついでなうなうのうててて院院いんにににもももまたまたまた聞聞きこえええ出出いででで給給たまははわざりざりざりけりけりけり。。。さるはさるはさるはかゝるかゝるかかる事事ことをををなむなむなんかすめかすめかすめしししととと申申もうししし出出いでででゝゝて、、、御御おん氣色氣色けしきももも見見みまほしかりまほしかりまほしかりけりけりけり。。。
現代語訳
大将の君(夕霧)は、あの柏木が心に余ってほのめかし出したことを、どういうことだったのだろう、少しでも正気のある様子の時だったら、あれほど口に出しかけていたのだから、たいそうよく様子を見て取れただろうに、言っても仕方のない最期の時で、折が悪く、気がかりで哀れなことだったなと、面影が忘れがたくて、柏木の兄弟の君達よりも、ひどく悲しいとお思いになった。女宮(女三の宮)が、このように世をお背きになった有様は、大げさな病気でもないのに、思い切りよく決心なさったものだよ、また、いくら何でも、源氏がお許し申し上げなさってよいことだろうか、二条の上(紫の上)があれほど危篤の状態で、泣く泣く出家をお願い申し上げなさったと聞いたのに、とんでもないことだとお思いになって、ついにこのように引きとどめ申し上げなさったのに、などと、あれこれ取り集めて思い巡らすと、やはり柏木は昔から、絶えず宮への思いが見える気配で、こらえきれない折々もあったよ、たいそうよく落ち着いていたうわべは、人よりいっそうたしなみがあり、穏やかで、何事をこの人は心の中に思っているのだろうと、見る人も気づまりなほどであったけれど、少し弱いところがあって、優しすぎたせいだろうよ、どれほど思いが深くても、あってはならないことに心を乱し、このようにまで命と引き換えにすべきことだっただろうか、相手の人のためにも気の毒で、自分の身もまた無駄にしてよいものか、しかるべき前世の因縁とはいいながら、たいそう軽率で、つまらないことだよ、などと自分の心ひとつで思うけれど、女君(雲居の雁)にさえ申し上げ出しなさらず、しかるべき機会もなくて、源氏にもまた申し上げ出しなさらなかった。実のところは、柏木がこのようなことをほのめかしたと申し出て、源氏のご様子も見てみたかったのである。
意訳
夕霧は、柏木の遺言と女三の宮の出家とを考え合わせて真相に近づき、柏木の弱さを惜しむが、誰にも語らない。
語釈・文法注
文法
- 「すかやか」(すかやかにおぼし立ちける程よ)
- 思い切りがよく、さっぱりしている様子。
- 「なよび過ぐ」(なよび過ぎたりしけぞかし)
- 柔弱すぎる。優しすぎる。
- 「身にかふ」(かくしも身にかふべき事にやはありける)
- 命と引き換えにする。
解説
夕霧は、柏木の遺言と女三の宮の突然の出家とを考え合わせ、二人の間に何かがあったことを察する。夕霧は、猫の事件の時から、柏木の宮への思いに気づいていた。生真面目な夕霧は、恋のために命を捨てた柏木を軽率と批判しながらも、その死を誰よりも悲しむ。
夕霧は真相を誰にも語らないが、源氏の様子を見てみたいと思う。この夕霧の好奇心と、柏木から託された落葉の宮の見舞いとが、次の横笛・夕霧の巻へとつながっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、736–737頁(コマ79)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日