源氏物語 第36帖 柏木(20)
岩根の松
女房たちがそっと退いた間に、源氏は宮のそばに寄って、この子をどうご覧になるか、こんな子を捨てて出家しきってしまわなければならない世だったのか、ああつらいと、はっとさせるように言うので、宮は顔を赤らめている。源氏は、いつの世に種をまいたのかと人が尋ねたら、岩根の松は何と答えるだろう、哀れなことだとひそかに詠むが、宮は返事もせずにうつ伏している。源氏はもっともだと思って、無理には言わない。宮はどう思っているだろうか、深く物を考える人ではないが、どうして平気でいられようかと推し量るのも、たいそう心苦しい。

- 1人々人々ひとびとすべりすべりすべり隱隱かくれれれたるたるたる程程ほどににに宮宮みやののの御御お許許もとににによりよりより給給たまひひいててて「「「このこのこの人人ひとをををばばばいかゞいかゞいかが見見み給給たまふふうややや。。。かゝるかゝるかかる人人ひとををを捨捨すてててゝゝて背背そむきききはてはてはて給給たまひひいぬぬぬべきべきべき世世よにににやややありありありけるけるける。。。あなあなあな心心こころううう」」」とととおどろかしおどろかしおどろかし聞聞きこえええ給給たまへへえばばば顏顏かおうちうちうち赤赤あかめめめててておはすおはすおわす。。。「「「たたたががが世世よにににかかかたねたねたねはははまきまきまきしししととと人人ひととはとはとわゞゞばいかゞいかゞいかが岩岩いわ根根ねののの松松まつはははこたへこたへこたえむむん。。。哀哀あわれなりなりなり」」」などなどなど忍忍しのびびびててて聞聞きこえええ給給たまふふうににに、、、いらへいらへいらえもももなうなうのうてててひれひれひれふしふしふし給給たまへへえりりり。。。ことわりことわりことわりとととおぼせおぼせおぼせばばばしひしひしいてててももも聞聞きこえええ給給たまははわずずず、、、いかにいかにいかにおぼすおぼすおぼすらむらむらん、、、物物もの深深ふこうううなどなどなどはははおはせおはせおわせねねねどどど、、、いかでいかでいかでかかかはははたゞたゞただにににはははととと推推おししし量量はかりりり聞聞きこえええ給給たまふふうもももいといといと心苦心苦こころぐるしうしうしゅうなむなむなん。。。
現代語訳
女房たちがそっと退いて隠れている間に、源氏は宮のおそばに寄りなさって、「この子を、どうご覧になりますか。このような子を捨てて、出家しきってしまわなければならない世だったのでしょうか。ああ、つらい」と、はっとさせるように申し上げなさると、宮は顔を赤らめていらっしゃる。「いつの世に種をまいたのかと人が尋ねたら、岩根の松(この子)は、何と答えるでしょうか。哀れなことです」などと、ひそかに申し上げなさるが、宮は返事もなさらず、うつ伏していらっしゃる。源氏はもっともだとお思いになるので、無理には申し上げなさらない。宮はどうお思いだろうか、深く物を考えるような方ではいらっしゃらないが、どうして平気でいられようかと、推し量り申し上げなさるのも、たいそう心苦しいことである。
意訳
源氏は宮に、この子の父は誰かと人が尋ねたら何と答えるかと歌を詠みかけ、宮はうつ伏して答えない。
語釈・文法注
文法
- 「岩根の松」(いかゞ岩根の松はこたへむ)
- 岩の根もとに生える松。若君をたとえる。「種をまく」は子をもうけることをいう。
- 「おどろかす」(あな心うとおどろかし聞え給へば)
- はっとさせる。気づかせる。
- 「ひれふす」(いらへもなうてひれふし給へり)
- うつ伏す。身を伏せる。
解説
源氏の「たが世にか」の歌は、若君の本当の父は誰かと、宮に直接問いかけるものである。これまで源氏は秘密を知りながら口に出さなかったが、ここで初めて、歌という形で宮に真相を突きつける。
宮は答えることができず、うつ伏す。源氏は無理に問い詰めず、宮の心を推し量って心苦しく思う。短い場面だが、源氏と宮の間の緊張が最も高まる瞬間である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、734–737頁(コマ78–79)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日