源氏物語 第36帖 柏木(17)
柏木の死
柏木の妹の弘徽殿女御はいうまでもなく、夕霧の妻の雲居の雁もひどく嘆く。柏木は心配りが行き届き、兄らしい人だったので、鬚黒の北の方(玉鬘)もこの君だけを親しく思っていたので、あれこれ嘆いて祈祷などを特にさせたが、病を治す薬ではないので、かいがなかった。柏木は妻の女二の宮(落葉の宮)にも、ついに会えないまま、泡が消えるように亡くなった。長年、心の底から深く愛していたわけではないが、表向きはたいそう申し分なく大切に扱い、親しみやすく気立てもよく、礼儀を崩さずに過ごしたので、宮には特につらい思いもなかった。ただ、このように短い命だったので、不思議と世の中をつまらなく思っていたのだと思い出して、深く悲しみに沈む様子はたいそう心苦しい。母の一条御息所も、人笑えで残念だと見て、限りなく嘆く。父大臣や母北の方は、まして言いようもなく、自分こそ先に死ぬべきなのに、道理に合わないつらいことだと思い焦がれるが、何のかいもない。尼宮(女三の宮)は、大それた柏木の心を嫌だとばかり思って、長生きしてほしいとも思わなかったが、亡くなったと聞くと、さすがにたいそう哀れである。若君のことを柏木が自分の子だと思っていたのも、本当にそうなるべき宿縁だったのか、思いのほかにつらいこともあったのだろうと思い至ると、さまざまに心細くなって、泣いてしまう。

- 1女女にょうご御御ごをををばばば更更さらにににももも聞聞きこえええずずずこのこのこの大大だい將將しょうののの御御おん方方かたなどなどなどもももいみじういみじういみじゅう歎歎なげききき給給たまふふう。。。心心こころおきておきておきてのののあまねくあまねくあまねく人人ひとのののこのかみこのかみこのかみ心心こころににに物物ものししし給給たまひひいけれけれければばば、、、右右みぎののの大大おお殿殿とのののの北北きたののの方方かたもももこのこのこの君君きみをををのみのみのみぞぞぞむつまじきむつまじきむつまじきものものものににに思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまひひいけれけれければばば、、、よろづよろづよろず思思おもひひいなげきなげきなげき給給たまひひいててて御御おんいのりいのりいのりなどなどなどとりわきとりわきとりわきてててせせせさせさせさせ給給たまひひいけれけれけれどどど、、、やむやむやむくすりくすりくすりならならならねねねばばばかひかひかいなきなきなきわざわざわざににになむなむなんありありありけるけるける。。。女女おんな宮宮みやにににももも遂遂ついにににえええ對對たい面面めんししし聞聞きこえええ給給たまははわででであわあわあわののの消消きえええいるいるいるやうやうようにてにてにてうせうせうせ給給たまひひいぬぬぬ。。。年年とし比比ごろしたしたしたののの心心こころこそこそこそねんごろねんごろねんごろににに深深ふかくくくもももなかりなかりなかりしかしかしか、、、大大おおかたかたかたにににはははいといといとあらまほしくあらまほしくあらまほしくもてもてもてなしなしなしかしづきかしづきかしずき聞聞きこえええてててけけけなつかしうなつかしうなつかしゅう心心こころばへばへばえをかしうをかしうおかしゅううちうちうちとけとけとけぬぬぬさまさまさまにてにてにてすぐいすぐいすぐい給給たまひひいけれけれければばばつらきつらきつらきふしふしふしもももことことことににになしなしなし。。。唯唯ただかくかくかく短短みじかりかりかりけるけるける御御おん身身みにてにてにてあやしくあやしくあやしくなべてなべてなべてののの世世よすさまじくすさまじくすさまじく思思おもひひいたまふたまふたまうなりなりなりけりけりけりととと思思おもひひい出出いでででたまふたまふたまうににに、、、いみじういみじういみじゅうててておぼしおぼしおぼし入入いりりりたるたるたるさまさまさまいといといと心心こころぐるしぐるしぐるし。。。
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現代語訳
女御(弘徽殿女御、柏木の妹)は言うまでもなく、この大将(夕霧)の御方(雲居の雁、柏木の妹)なども、ひどくお嘆きになる。柏木は心配りが行き届いて、誰に対しても兄らしい心でいらっしゃったので、右大臣(鬚黒)の北の方(玉鬘)も、この君だけを親しい者とお思い申し上げていらっしゃったので、あれこれと思い嘆きなさって、ご祈祷などを特別におさせになったけれど、病の治る薬ではないので、かいのないことであった。柏木は女宮(落葉の宮)にも、ついにお会い申し上げることもおできにならずに、泡が消え入るようにお亡くなりになった。長年、心の底の愛情こそ、細やかに深くもなかったけれど、表向きには、たいそう申し分なく大切にお扱い申し上げて、親しみやすく気立ても美しく、なれなれしくならない態度でお過ごしになったので、宮にはつらい思いをすることも特になかった。ただ、このように短かったご寿命で、不思議と世の中全体をつまらなくお思いになっていたのだったと思い出しなさると、ひどく悲しくて、深く思い沈んでいらっしゃる様子は、たいそう心苦しい。
母の御息所(一条御息所)も、ひどく人笑いになって残念なことだと拝見して、お嘆きになることは限りない。父大臣や母北の方などは、まして言いようもなく、「私こそ先に死ぬべきなのに。世の道理に合わない、つらいことよ」と思い焦がれなさるが、何のかいもない。尼宮(女三の宮)は、柏木の大それた心も、ただいやなものとお思いになって、世に長生きしてほしいともお思いにならなかったが、このように亡くなったなどとお聞きになるのは、さすがにたいそう哀れなことである。若君のことを、柏木が自分の子だと思っていたのも、本当にそうなるはずの宿縁であって、思いのほかにつらいこともあったのだろうかとお思い寄りになると、さまざまに何となく心細くて、お泣きになった。
意訳
柏木は妻の落葉の宮に会えないまま、泡が消えるように亡くなる。宮は深く悲しみに沈む。
両親は道理に合わない死を嘆き、女三の宮も、若君の父である柏木の死を聞いて、さすがに哀れに思い泣く。
語釈・文法注
文法
- 「このかみ心」(あまねく人のこのかみ心に物し給ひければ)
- 兄らしい心。年長者として人の面倒をよく見る心。
- 「やむくすりならねば」(やむくすりならねばかひなきわざに)
- 病の治る薬ではないので。祈祷が病を治すものではないことをいう。
- 「あわの消えいるやうにて」(あわの消えいるやうにてうせ給ひぬ)
- 泡が消え入るように、はかなく亡くなるさま。
解説
柏木の死は、「あわの消えいるやうにて」と簡潔に描かれる。物語の大きな転換点となる死が、静かに、はかなく語られる。柏木は、妻の落葉の宮に会うこともできずに亡くなった。
女三の宮は、柏木を疎んじていたが、その死を聞いてさすがに哀れに思う。若君の父の死に、宮は宿縁の深さを思い、心細く泣く。宮の心にようやく柏木への哀れが芽生えたが、それはあまりに遅かった。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、732–733頁(コマ77)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日