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源氏物語 第36帖 柏木(13)

六条御息所の物の怪

登場人物:女三の宮・光源氏・朱雀院・六条御息所

宮はなお弱々しく、消え入るような様子で、父院をはっきりと見送ることもできず、言葉も申し上げない。源氏も、夢のように思い乱れる心の惑いで、昔を思わせるこの御幸のお礼も申し上げられない無作法は、改めて参上してお詫びすると言い、見送りに人々を付ける。院は、自分の命が今日明日かと思われた頃、宮が頼る人もなく漂うことが哀れで見捨てがたく思い、源氏の本意ではなかっただろうが、託して長年安心していた、もし宮が命をとりとめたら、尼姿で人の多い住まいは不似合いだろうが、山里などに離れて住むのもやはり心細いだろう、状況に従って、やはり見捨てないでほしいと頼む。源氏は、このようにまで言われるとかえって恥ずかしく、心が乱れて何も分からないと、本当に耐えがたそうである。後夜の加持で物の怪が現れ、こうしてやったぞ、紫の上一人はうまく取り返したと思っていたのがひどく悔しかったので、この辺りにそれとなく潜んでいた、今は帰ろうと言って笑う。源氏は驚きあきれ、さては物の怪がここにも離れずにいたのかと、宮が気の毒で悔しく思う。宮は少し生き返ったようだが、やはり頼りなげに見える。仕える人々もふがいなく思うが、こうしてでも無事でさえいてくれればと祈りながら、修法を延長して絶え間なく行わせる。

夜更けの六条院で、源氏が物の怪の言葉に立ち尽くし、女三の宮のそばで僧が祈祷している場面(AI生成)
夜更けの六条院で、源氏が物の怪の言葉に立ち尽くし、女三の宮のそばで僧が祈祷している場面
  1. 1宮みや宮みやみやははは猶なほ猶なほなおよわうよわうよおう消き消ききえええいるいるいるやうやうようにににししし給たま給たまたまひひいででではかばかしうはかばかしうはかばかしゅうもももえええ見み見みみ奉たてまつ奉たてまつたてまつらららずずず物もの物ものものなどなどなどももも聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまははわずずず。。。おとゞおとゞおとどももも「「「夢ゆめ夢ゆめゆめのののやうやうようににに思おも思おもおもひひい給たま給たまたまへへえ亂みだ亂みだみだるゝるゝるる心こころ心こころこころまどひまどひまどいにににかうかうこう昔むかし昔むかしむかし覺おぼ覺おぼおぼえええたるたるたるみゆきみゆきみゆきのののかしこまりかしこまりかしこまりをををもももえええ御覽ごらん御覽ごらんごらんぜぜぜられられられぬぬぬらうがはしさらうがはしさろうがわしさははは殊こと殊ことこと更さら更さらさらににに參まゐ參まゐまいりりり侍はべ侍はべはべりりりててて」」」などなどなど聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふう。。。御おん御おんおん送おくり送おくりおくりににに人々ひとびと人々ひとびとひとびと參まゐ參まゐまいらららせせせ給たま給たまたまふふう。。。「「「世よ世よよののの中なか中なかなかのののけふけふきょうかかかあすあすあすかかかににに覺おぼ覺おぼおぼえええ侍はべ侍はべはべりりりししし程ほど程ほどほどににに、、、又また又またまたしるしるしる人ひと人ひとひともももなくなくなくてててたゞよはたゞよはただよわむむんことことことののの哀あはれ哀あはれあわれにににさりさりさり難がた難がたがとううう覺おぼ覺おぼおぼえええ侍はべ侍はべはべりりりしかしかしかばばば、、、御おん御おんおんほほほ意い意いいにににはははあらあらあらざりざりざりけめけめけめどどど、、、かくかくかく聞きこ聞きこきこえええつけつけつけててて年とし年としとし比ごろ比ごろごろははは心こころ心こころこころ安やす安やすやすくくく思おも思おもおもひひい給たま給たまたまへへえつるつるつるををを、、、もしももしももしもいきいきいきとまりとまりとまり侍はべ侍はべはべらららばばばさまさまさまことことことにににかはりかはりかわりててて人ひと人ひとひと繁しげ繁しげしげききき住す住すすまひまひまいはははつきなかるつきなかるつきなかるべきべきべきををを、、、さるさるさるべきべきべき山やま山やまやま里ざと里ざとざとなどなどなどにににかけかけかけ離はな離はなはなれれれたらたらたらむむん有あり有ありあり樣さま樣さまさまももも又また又またまたさすがさすがさすがににに心こころ心こころこころぼそかるぼそかるぼそかるべくべくべくややや。。。さまさまさまにににしたがひしたがひしたがいててて猶なほ猶なほなおおぼしおぼしおぼし放はな放はなはなつつつまじくまじくまじくなむなむなん」」」ととと聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまへへえばばば、、、「「「更さら更さらさらにににかくかくかくまでまでまで仰おほ仰おほおおせせせらるゝらるゝらるるなむなむなんかへりてかへりてかえりて耻はづか耻はづかはずかしうしうしゅう思おも思おもおもひひい給たま給たまたまへへえらるゝらるゝらるるみだりみだりみだり心こころ心こころこころちちち、、、とかくとかくとかく亂みだ亂みだみだれれれ侍はべ侍はべはべりりりててて何なに何なになに事ごと事ごとごとももも得え得ええ辨わきま辨わきまわきまへへえ侍はべ侍はべはべらららずずず」」」とてとてとてげにげにげにいといといと堪た堪たたへへえがたげがたげがたげにににおぼしおぼしおぼしたりたりたり。。。
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

宮は、やはり弱々しく、消え入るようになさっていて、父院をはっきりとお見送りすることもできず、ものなども申し上げなさらない。源氏も、「夢のように思い乱れております心の惑いのために、このように昔を思わせる御幸へのお礼も、ご覧に入れることのできない無作法は、改めて参上いたしまして」などと申し上げなさる。お送りに人々を参上させなさる。院は、「この世の命が今日か明日かと思われました頃に、ほかに世話をする人もなくて宮が頼りなくさまようことが哀れで、見捨てがたく思われましたので、あなたのご本意ではなかったでしょうが、このようにお頼み申し上げて、長年は安心しておりましたが、もしも宮が命をとりとめましたら、様子がすっかり変わって、人の多い住まいは不似合いでしょうが、しかるべき山里などに離れて暮らすような有様も、またやはり心細いことでしょう。その時々の状況に応じて、やはりお見捨てにならないでください」と申し上げなさると、源氏は、「まったく、このようにまでおっしゃいますのが、かえって恥ずかしく存じられます。乱れた気持ちが、あれこれと乱れておりまして、何事もわきまえられません」と言って、本当にたいそう耐えがたそうにお思いになっている。

後夜のご加持に、物の怪が現れ出て、「こうなったぞ。たいそう見事に取り返したと、一人(紫の上)のことはお思いになっていたのが、ひどくねたましかったので、このあたりにそれとなく、ここ数日控えていたのだ。今は帰ろう」と言って笑う。源氏はたいそうあきれて、それでは、この物の怪がここにも離れずにいたのだろうかとお思いになると、宮が気の毒で悔しくお思いになる。宮は少し生き返りなさったようだけれど、やはり頼りなげにばかりお見えになる。お仕えする人々も、たいそうふがいなく思うけれど、こうなってでも、せめて無事でいらっしゃればと祈りながら、御修法をまた延長して、怠りなく行わせるなど、万事に手を尽くしなさる。

意訳

朱雀院は源氏に、尼となった宮を見捨てないよう頼み、源氏は乱れた心で何も分からないと答える。

後夜の加持で、紫の上を取り返されたのを恨んでいた物の怪が現れ、今度は宮に取り憑いていたと言って笑う。

語釈・文法注

文法

「後夜」(後夜の御加持に)
夜半から明け方までの時刻。また、その時に行う勤行。
「一人をばおぼしたりしが」(いとかしこう取りかへしつと一人をば)
一人とは紫の上を指す。紫の上を蘇生させたことを源氏が喜んでいたことをいう。
「ねたし」(いとねたかりしかば)
いまいましい、しゃくにさわる。

解説

女三の宮の出家の直後に、六条御息所の死霊とされる物の怪が現れ、高笑いする。紫の上を取り返されたのが悔しくて、今度は宮に取り憑いて出家させたというのである。宮の出家が物の怪のしわざだったとも読める構成になっている。

源氏はあきれ、宮を気の毒に思う。しかし宮の出家の本当の原因は、源氏の冷淡さと、柏木との密通にある。物の怪の登場は、出来事の原因を曖昧にし、源氏の責任をぼかす役割も果たしている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、726–729頁(コマ74–75)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日