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源氏物語 第36帖 柏木(8)

女三の宮の出家の願い

登場人物:女三の宮・光源氏・薫

女三の宮は、あれほどか弱い身で、慣れないお産を恐ろしく思い、薬湯なども飲まず、わが身のつらさをこのことにつけても思い詰めて、いっそこの機会に死んでしまいたいと思う。源氏は人目はよく取り繕うが、まだむさくるしい赤子を取り立てて見ようともしないので、年老いた女房たちは、なんと冷淡な、珍しくお生まれになった若君がこれほど美しいのにと言う。宮はそれを小耳にはさんで、これからますます隔てを置かれるのだろうと恨めしく、わが身がつらくて、尼になりたいという気持ちが起こる。源氏は夜も宮の所には泊まらず、昼に少し顔を出すだけである。源氏は、世のはかなさを見るにつけ心細く、勤行がちになっているので、こうした産後の騒がしい所には参りにくい、ご気分はさわやかになりましたかと、几帳のそばからのぞく。宮は頭を上げて、やはり生きられそうにない、このような者は罪も重い、尼になって、それで命が助かるか試し、また死ぬとしても罪を消すことになるかと思うと、いつもより大人びて言う。源氏は、縁起でもないことを、どうしてそこまで思うのか、お産は恐ろしいものだが、それで死ぬわけでもないと答える。

産後の六条院で、女三の宮が床の上に身を起こし、源氏に出家の願いを伝えている場面(AI生成)
産後の六条院で、女三の宮が床の上に身を起こし、源氏に出家の願いを伝えている場面
  1. 1宮みや宮みやみやはははさばかりさばかりさばかりひわづひわづひわずなるなるなる御おん御おんおんさまさまさまにてにてにていといといとむくつけうむくつけうむくつきょうならはならはならわぬぬぬことことことののの恐おそろ恐おそろおそろしうしうしゅう思おぼ思おぼおぼささされれれけるけるけるににに、、、御おん御おんおんゆゆゆなどなどなどももも聞きこ聞きこきこしめさしめさしめさずずず、、、身み身みみののの心こころ心こころこころうきうきうきことことことをををかゝるかゝるかかるにににつけつけつけてててもももおぼしおぼしおぼし入い入いいれれればばば、、、さばれさばれさばれこのこのこの序ついで序ついでついでにににももも死し死ししなななばやばやばやとととおぼすおぼすおぼす。。。おとゞおとゞおとどはははいといといとようようよう人ひと人ひとひと目め目めめをををかざりかざりかざりおぼせおぼせおぼせどどど又また又またまたむつかしげむつかしげむつかしげにににおはするおはするおわするなどなどなどををを、、、とりわきとりわきとりわきてててももも見み見みみ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまははわずずずなどなどなどあれあれあればばば、、、老お老おおいいいしらへしらへしらえるるる人ひと人ひとひとなどなどなどははは「「「いでやいでやいでやおろかおろかおろかにににももも坐おは坐おはおわしますしますしますかなかなかな。。。珍めづら珍めづらめずらしうしうしゅうさしさしさし出い出いいででで給たま給たまたまへへえるるる御おん御おんおん有あり有ありあり樣さま樣さまさまのののかばかりかばかりかばかりゆゝしきゆゝしきゆゆしきまでまでまでにににおはしますおはしますおわしますををを」」」とととうつくしみうつくしみうつくしみ聞きこ聞きこきこゆれゆれゆればばば、、、かたかたかた耳みゝ耳みゝみみににに聞き聞ききききき給たま給たまたまひひいてててさささのみのみのみこそこそこそはははおぼしおぼしおぼし隔へだ隔へだへだつるつるつることことこともももまさらまさらまさらめめめととと、、、怨うら怨うらうらめしうめしうめしゅう我わ我わわががが身み身みみつらくつらくつらくててて尼あま尼あまあまにににもももなりなりなりなななばやばやばやののの御心みこころ御心みこころみこころつきつきつきぬぬぬ。。。よるよるよるなどなどなどもももこなたこなたこなたにににははは大おほ大おほおお殿との殿とのとの籠ごも籠ごもごもらららずずず、、、晝ひる晝ひるひるつつつ方かた方かたかたなどなどなどぞぞぞさしさしさしのぞきのぞきのぞき給たま給たまたまふふう。。。
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

宮は、あれほどか弱いご様子で、たいそう気味悪く、経験のないお産のことが恐ろしくお思いになったうえに、薬湯なども召し上がらず、わが身のつらさを、このことにつけても深く思い込みなさるので、ままよ、この機会にでも死んでしまいたいとお思いになる。源氏は、たいそうよく人目を取り繕っていらっしゃるけれど、まだ生まれたばかりでむさくるしい様子でいらっしゃる若君などを、取り立てて見申し上げなさらないなどということがあるので、年老いて物知り顔の女房などは、「まあ、冷淡でいらっしゃいますこと。珍しくお生まれになった若君のご様子が、これほど恐ろしいまでにお美しくいらっしゃるのに」と、若君をかわいがり申し上げるので、宮はそれを小耳にお挟みになって、これからは、そのようにばかり、ますます隔てを置かれることも多くなるのだろうと、恨めしく、わが身がつらくて、尼にでもなってしまいたいというお気持ちが生じた。源氏は、夜などもこちらにはお休みにならず、昼間などに、少しのぞきにいらっしゃる。

源氏は、「世の中のはかなさを見るにつけて、行く末も短く、何となく心細くて、勤行がちになっておりますので、このようなお産の頃の騒がしい気持ちがするため、参上できずにおりますが、いかがですか、ご気分はさわやかにおなりになりましたか。お気の毒で」と言って、御几帳のそばからおのぞきになった。宮は御髪をもたげなさって、「やはり生きていられそうにない気持ちがいたしますが、このような者(お産で死ぬ者)は罪も重いと申します。尼になって、もしかしたらそれで命が助かるかと試し、また死ぬとしても、罪を消すことにでもなろうかと存じます」と、いつものご様子よりは、たいそう大人びて申し上げなさるのを、源氏は「たいそういやな、縁起でもないことです。どうしてそこまでお思いになるのですか。このようなお産のことは、そのように恐ろしいもののようですが、それで生きながらえないというのならともかく」と申し上げなさる。

意訳

女三の宮は、若君を顧みない源氏の冷淡さを女房の言葉から知り、尼になりたいと思う。

宮は源氏に出家の願いを大人びた口調で訴えるが、源氏は縁起でもないと取り合わない。

語釈・文法注

文法

「ひわづ」(さばかりひわづなる御さまにて)
か弱く、きゃしゃなこと。
「さばれ」(さばれこの序にも死なばや)
ままよ、どうにでもなれ。「さはあれ」の約。
「らうがはし」(かゝる程のらうがはしき心ちする)
乱雑だ、騒がしい。
「かゝる人は罪もおもかなり」(かゝる人は罪もおもかなり)
お産で死ぬ女は罪が重いとされた。

解説

源氏は、人前では取り繕うが、若君を抱こうともしない。年老いた女房の何気ない言葉が、女三の宮に源氏の冷淡さを突きつける。宮は、この先ますます隔てを置かれることを悟り、出家を思い立つ。

宮の「尼になりても」という言葉は、いつもより大人びていると描かれる。幼く頼りなかった宮が、苦しみの中で初めて自分の意志を示す。源氏はそれを縁起でもないと退けるが、宮の決意は次第に固まっていく。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、722–725頁(コマ72–73)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日