源氏物語 第36帖 柏木(7)
産養の儀
産養の儀式は盛大で仰々しい。御方々がそれぞれに用意する産養の品は、世間並みの折敷、衝重、高坏などの趣向にも、ことさらに競い合う心が見える。五日の夜は、秋好中宮から、産婦の御膳や、女房たちにも身分に応じた品が、公式の行事として厳かに用意される。御粥や屯食五十具、所々の饗応、院の下部や庁の召次所まで、隅々まで盛大である。中宮職の大夫をはじめ冷泉院の殿上人が皆参る。七夜は帝からで、これも公式の扱いである。致仕の大臣(柏木の父)は本来なら格別に奉仕すべきところだが、この頃は何事も考えられず、ひととおりの見舞いだけであった。宮たちや上達部が大勢参る。世間の様子も比類ないほど大切に扱っているが、源氏は心の内に心苦しく思うことがあって、それほどもてはやすこともせず、管弦の遊びもなかった。

- 1御御おんうぶやうぶやうぶやののの儀儀ぎ式式しきいかめしういかめしういかめしゅうおどろおどろしおどろおどろしおどろおどろし。。。御御おん方方かた々々がたさまざまさまざまさまざまにににしいでしいでしいで給給たまふふう御御おんうぶやしなひうぶやしなひうぶやしない、、、世世よのののつねつねつねのののをしきをしきおしきついかさねついかさねついかさね、、、たかつきたかつきたかつきなどなどなどのののこゝろばへこゝろばへこころばえももも、、、殊殊こと更更さらににに心心こころ々々ごころいとましさいとましさいとましさ見見みえええつゝつゝつつなむなむなん。。。五五いつ日日かののの夜夜よははは中中ちゅう宮宮ぐうののの御御おん方方かたよりよりよりこもちこもちこもちののの御御お前前まえのののものものもの女房女房にょうぼうののの中中なかにににもももしなじなしなじなしなじなににに思思おもひひいあてあてあてたるたるたるきはきはきはきはきわきわ、、、おほやけおほやけおおやけごとごとごとににに嚴嚴いかめしうめしうめしゅうせせせさせさせさせ給給たまへへえりりり御御おん粥粥かゆ、、、とんじきとんじきとんじき五五ご十十じゅう具具ぐ、、、所所ところ々々どころののの饗饗きょう、、、院院いんののの下下しも部部べ、、、廳廳ちょうののの召召めし次次つぎ所所どころ、、、なになになにかかかのののくまくまくまゝゝまでででいかめしういかめしういかめしゅうせせせさせさせさせ給給たまへへえりりり。。。宮宮みやづかさづかさずかさ大大だい夫夫ぶよりよりよりはじめはじめはじめててて院院いんののの殿殿てん上上じょう人人びとみなみなみな參參まいれれれりりり。。。七七しち夜夜やはははうちうちうちよりよりよりそれそれそれもももおほやけおほやけおおやけざまざまざまなりなりなり。。。致致ち仕仕じのののおとゞおとゞおとどなどなどなど心心こころ殊殊ことににに仕仕つかうまつりうまつりうまつり給給たまふふうべきべきべきににに、、、このこのこの比比ごろははは何何なに事事ごともももおぼさおぼさおぼされれれでででおほざうおほざうおおぞうののの御御おんとぶらひとぶらひとぶらいのみのみのみぞぞぞありありありけるけるける。。。宮宮みや達達たち上達部上達部かんだちめなどなどなどあまたあまたあまた參參まいりりり給給たまふふう。。。大大おおかたかたかたののの氣色氣色けしきももも世世よににになきなきなきまでまでまでかしづきかしづきかしずき聞聞きこえええ給給たまへへえどどどおとゞおとゞおとどののの御心御心みこころのののうちうちうちににに心苦心苦こころぐるしししとととおぼすおぼすおぼすことことことありありありててていたういたういとうももももてもてもてはやしはやしはやし聞聞きこえええ給給たまははわずずず御御おんあそびあそびあそびなどなどなどはははなかりなかりなかりけりけりけり。。。
現代語訳
御産養の儀式は盛大で仰々しい。御方々がそれぞれにご用意なさる御産養の品々は、世間並みの折敷、衝重、高坏などの趣向にも、ことさらに、めいめいの競い合う気持ちが見えていた。五日の夜は、中宮(秋好中宮)の御方から、産婦の御前の御膳や、女房の中にも身分身分に応じて考えて配った品々を、公式の行事として厳かにおさせになった。御粥、屯食五十具、所々の饗応、院の下部や、院の庁の召次所まで、何かの隅々まで盛大におさせになった。中宮職の役人は大夫をはじめとして、冷泉院の殿上人が皆参上した。七夜は帝からで、それも公式の扱いである。致仕の大臣(柏木の父)なども格別に奉仕なさるはずなのに、この頃は何事もお考えになれず、ひととおりのお見舞いだけがあった。宮たちや上達部などが大勢参上なさる。世間一般の様子も、比類ないほど大切にお扱い申し上げなさるけれど、源氏のお心の内に心苦しくお思いになることがあって、それほどもてはやし申し上げなさらず、管弦のお遊びなどはなかった。
意訳
若君の産養は、中宮や帝からも公式に盛大に行われるが、源氏は心苦しさから管弦の遊びもさせない。
語釈・文法注
文法
- 「うぶやしなひ」(さまざまにしいで給ふ御うぶやしなひ)
- 産養。出産後の三日、五日、七日、九日の夜に行う祝宴。
- 「とんじき」(とんじき五十具)
- 屯食。強飯を握り固めたもの。宴の際に下仕えの者に振る舞う。
- 「おほざう」(おほざうの御とぶらひのみ)
- ひととおり、通り一遍であること。
解説
若君(薫)の産養は、中宮や帝からの公式の祝いもあって、この上なく盛大に行われる。世間から見れば、源氏の晩年に高貴な女三の宮から生まれた男子であり、祝福されるべき子である。
しかし源氏は心の内に秘密を抱えて、祝宴をもてはやさない。本当の祖父である致仕の大臣は、息子の病のために通り一遍の見舞いしかできない。華やかな祝宴の陰に、源氏と柏木の家の二つの苦しみが隠されている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、722–723頁(コマ72)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日