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源氏物語 第36帖 柏木(4)

小侍従への述懐

登場人物:柏木・小侍従・女三の宮・光源氏

柏木は小侍従に語る。陰陽師が女の霊と占ったが、本当に宮の執心が自分に取り憑いているのなら、厭わしいこの身もかえって尊いものになるだろう。それにしても、大それた心を抱いて過ちを犯し、人の名を汚し、身を顧みない例は昔もあったと思い直してみても、やはり源氏にこの罪を知られて生きながらえるのはまばゆく恐ろしく、それは源氏の格別な威光のせいだろう。深い過ちもないのに、源氏と目を見合わせたあの夕べから、心が乱れて魂が身に戻らなくなった、六条院の内をさまよっていたら結びとめてほしいと、弱々しく抜け殻のような様子で、泣いたり笑ったりして語る。小侍従は、宮もただ恥ずかしく気がひける様子でいると語る。柏木は、沈んで面やせした宮の姿が目に浮かび、本当に魂が通っていくのだろうかと乱れて、今さら宮のことは口にすまい、この世ははかなく過ぎたが、来世の妨げになっては困る、ご出産が無事だとだけでも聞いておきたい、見た夢を一人で思い合わせて、語る人もないのがひどく気がふさぐと、深く思い詰める。小侍従は、一方では恐ろしく思いながらも、哀れさをこらえきれず、ひどく泣く。

夜の柏木の病室で、やせ衰えた柏木が小侍従に向かい、泣きながら笑いながら胸の内を語り、小侍従が袖で涙をぬぐっている場面(AI生成)
夜の柏木の病室で、やせ衰えた柏木が小侍従に向かい、泣きながら笑いながら胸の内を語り、小侍従が袖で涙をぬぐっている場面
  1. 1「「「かれかれかれ聞き聞ききききき給たま給たまたまへへえ。。。何なに何なになにののの罪つみ罪つみつみととともももおぼしおぼしおぼしよらよらよらぬぬぬににに占うらな占うらなうらなひひいよりよりよりけむけむけん女をんな女をんなおんなののの靈りやう靈りやうりょうこそこそこそ誠まこと誠まことまことにににさるさるさる御おん御おんおんしうしうしゅうののの身み身みみにににそひそひそいたるたるたるならならならばばば、、、いとはしきいとはしきいとわしき身み身みみもももひきひきひきかへかへかえやんごとなくやんごとなくやんごとなくこそこそこそなりなりなりぬぬぬべけれべけれべけれ。。。さてもさてもさてもおほけなきおほけなきおおけなき心こころ心こころこころありありありてててさるさるさるまじきまじきまじきあやまちあやまちあやまちをををひきひきひき出い出いいでででゝゝて、、、人ひと人ひとひとののの御おん御おんおん名な名ななをををもももたてたてたて身み身みみをををもももかへりみかへりみかえりみぬぬぬたぐひたぐひたぐい昔むかし昔むかしむかしののの世よ世よよにににもももなくなくなくやややはははありありありけるけるけるととと思おも思おもおもひひいなほすなほすなおすににに、、、猶なほ猶なほなおけはひけはひけわいわづらはしうわづらはしうわずらわしゅう、、、かのかのかの御心みこころ御心みこころみこころにににかゝるかゝるかかる咎とが咎とがとがをををしらしらしられれれ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりててて世よ世よよにににながらへながらへながらへむむんことことこともももいといといとまばゆくまばゆくまばゆく覺おぼ覺おぼおぼゆるゆるゆるはははげにげにげにことことことなるなるなる御おん御おんおん光ひかり光ひかりひかりなるなるなるべしべしべし。。。深ふか深ふかふかきききあやまちあやまちあやまちもももなきなきなきににに見み見みみ合あは合あはあわせせせ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりししし夕ゆふべ夕ゆふべゆうべのののほどほどほどよりよりよりやがてやがてやがてかきかきかきみだりみだりみだり惑まど惑まどまどひひいそめそめそめにににしししたましひたましひたましいののの身み身みみにににもももかへらかへらかえらずずずなりなりなりにににしししををを、、、かのかのかの院ゐん院ゐんいんののの內うち內うちうちにににあくがれあくがれあくがれありかありかありかばばば結むす結むすむすびびびとゞめとゞめとどめ給たま給たまたまへへえよよよ」」」などなどなどいといといとよわげよわげよわげにににからからからのののやうやうようなるなるなるさまさまさましししててて泣な泣ななきききみみみ笑わら笑わらわらひひいみみみ語かた語かたかたらひらひらい給たま給たまたまふふう。。。
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

柏木は、「あれをお聞きなさい。何の罪ともお思い当たりにならないのに、占いで言い当てたという女の霊、それが本当に、そのような宮のご執心がこの身に取り憑いているのなら、厭わしいこの身も、うって変わって尊いものになるにちがいない。それにしても、大それた心があって、あってはならない過ちを引き起こして、人のお名前をも汚し、自分の身をも顧みない類いは、昔の世にもなかっただろうかと思い直してみるが、やはり何となく気づまりで、あの方(源氏)のお心にこのような罪を知られ申し上げて、世に生きながらえることも、たいそうまばゆく恐ろしく思われるのは、なるほど格別なご威光なのだろう。深い過ちもないのに、目をお見合わせ申し上げたあの夕べから、そのまま心が乱れて惑いはじめた魂が、身にも戻らなくなってしまったのを、あの院の内にさまよい歩いていたら、結びとめてくださいよ」などと、たいそう弱々しく、抜け殻のような様子で、泣いたり笑ったりしながら語りなさる。

小侍従は、宮もひたすら恥ずかしく、気がひけるとお思いになっている様子を語る。柏木は、そうしてしおれて、面やせしていらっしゃるだろう宮のご様子が、面影に見え申し上げる気がして、思いやられなさるので、本当にさまよい出る魂が通っていくのだろうかなどと、いっそうひどい気分の中でも心が乱れるので、「今さら、この宮のことは、決して申すまい。この世はこのようにはかなく過ぎてしまったが、来世の妨げにでもなっては困ると思うのだ。たいそうお気の毒な、心苦しいご出産のことを、無事に済んだとだけでも、何とかしてお聞きしておきたい。見た夢を自分の心ひとつに思い合わせて、ほかに語る人もないのが、ひどく気がふさぐことだよ」などと、あれこれと深く思い詰めていらっしゃる様子の深いのを、小侍従は、一方ではたいそういやで恐ろしく思うけれど、哀れさはこらえきれず、この人もひどく泣く。

意訳

柏木は、源氏に罪を知られたことが恐ろしく、あの夕べから魂が身を離れてしまったと、泣き笑いしながら小侍従に語る。

宮の様子を聞いた柏木は、せめて出産が無事だと聞きたいと言い、小侍従も哀れさに泣く。

語釈・文法注

文法

「御しう」(誠にさる御しうの身にそひたるならば)
御執。宮の執心。宮が自分を思って取り憑いているのなら、という柏木の願望。
「見合せ奉りし夕」(見合せ奉りし夕のほどより)
試楽の日の夕べ、源氏と目を見合わせた時を指す。
「あくがるゝたま」(げにあくがるゝたまやゆき通ふらむ)
身体から抜け出してさまよう魂。思いが深いと魂が抜け出して相手のもとへ行くと考えられた。
「見し夢」(見し夢を心ひとつに思ひ合せて)
宮と逢った時に見た猫の夢。懐妊を暗示する夢であった。

解説

柏木は、病の原因が女の霊だという占いを聞いて、それが宮の執心であってくれればと願う。罪の意識と恋の思いとが、柏木の中で入り混じっている。源氏と目を見合わせたあの夕べから、魂が身を離れてしまったという言葉は、源氏の威光への恐れが柏木を死に追いやったことを示している。

柏木は、宮の出産が無事であることだけでも聞きたいと願う。宮が産むのは自分の子である。見た夢を誰にも語れないという柏木の孤独は深い。小侍従は、柏木の思いの深さに、恐ろしさを感じながらも泣かずにはいられない。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、720–721頁(コマ71)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日