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源氏物語 第35帖 若菜下(53)

源氏の皮肉

登場人物:光源氏・柏木・太政大臣

源氏は、年を取るにつれて、酔い泣きはとどめがたいものだ、衛門督が目をとめてほほえむのは、たいそう恥ずかしい、それでも今しばらくのことだ、逆さまには流れない年月よ、老いは逃れられないものだと言って、柏木を見やる。柏木は人よりいっそうまじめに沈んでいて、本当に気分もたいそう悪いので、すばらしい舞も目に入らない心地でいるのに、源氏はわざわざその柏木を名指しして、空酔いをしながらこう言う。冗談のようだが、柏木はいっそう胸がつぶれ、杯が回ってくるのも頭が痛く思われるので、形ばかりにして紛らわすが、源氏は見とがめて、杯を持たせたまま何度も無理に勧めるので、柏木はきまり悪く困っている。その様子は普通の人とは違って美しい。柏木は気分が乱れて耐えがたく、まだ宴も終わらないうちに退出したが、そのままひどく苦しみ、いつものひどい酔いでもないのに、どうしてこうなったのか、気がひけて物思いをしていたので、気がのぼったのか、それほど臆病な心弱さとも思えないのに、ふがいないことだと思い知る。それは一時の酔いの迷いではなかった。そのまま柏木は重い病にかかる。父の大臣と母北の方は心配して、別々に住んでいてはたいそう気がかりだと、自邸に引き取ろうとする。

夜の六条院の宴で、源氏が空酔いをしながら柏木を見つめて杯を無理に勧め、青ざめた柏木が杯を手に困惑している場面(AI生成)
夜の六条院の宴で、源氏が空酔いをしながら柏木を見つめて杯を無理に勧め、青ざめた柏木が杯を手に困惑している場面
  1. 1あるじあるじあるじののの院ゐん院ゐんいん「「「過す過すすぐるぐるぐる齡よはひ齡よはひよわいにににそへそへそえてててはははゑひゑひえいなきなきなきこそこそこそとゞめとゞめとどめ難かた難かたかたきききわざわざわざなりなりなりけれけれけれ衛ゑ衛ゑえ門もん門もんもん督かみ督かみかみ心こころ心こころこころとゞめとゞめとどめてててほゝゑまほゝゑまほほえまるゝるゝるるいといといと心こころ心こころこころ恥はづか恥はづかはずかしししややや。。。さりともさりともさりとも今いま今いまいま暫しば暫しばしばしししならならならむむんさかさまさかさまさかさまにににゆかゆかゆかぬぬぬ年とし年としとし月つき月つきつきよよよ、、、老お老おおいいいはははえええ遁のが遁のがのがれれれぬぬぬわざわざわざなりなりなり」」」とてとてとてうちうちうち見み見みみやりやりやり給たま給たまたまふふうににに、、、人ひと人ひとひとよりよりよりけにけにけにまめだちまめだちまめだちくつしくつしくつしててて誠まこと誠まことまことににに心地ここち心地ここちここちもももいといといと惱なや惱なやなやましけれましけれましければばば、、、いみじきいみじきいみじき事こと事ことこともももめめめもももとまらとまらとまらぬぬぬ心地ここち心地ここちここちするするする人ひと人ひとひとをををしもしもしもさしさしさしわきわきわきててて空そら空そらそら醉ゑ醉ゑえひひいしししつゝつゝつつかくかくかくののの給のたま給のたまのたまふふう。。。たはぶれたはぶれたわぶれのののやうやうようなれなれなれどどどいとゞいとゞいとど胸むね胸むねむねつぶれつぶれつぶれてててさかづきさかづきさかずきのののめぐりめぐりめぐりくるくるくるももも頭かしら頭かしらかしらいたくいたくいたく覺おぼ覺おぼおぼゆれゆれゆればばば氣色けしき氣色けしきけしきばかりばかりばかりにてにてにてまぎらはすまぎらはすまぎらわすををを御覽ごらん御覽ごらんごらんじじじとがめとがめとがめててて持も持ももたたたせせせながらながらながらたびたびたびたびたびたびしひしひしい給たま給たまたまへへえばばばはしたなくはしたなくはしたなくてててもてもてもて煩わづら煩わづらわずらふふうさまさまさま、、、なべてなべてなべてののの人ひと人ひとひとににに似に似ににずずずをかしをかしおかし。。。
  2. 2心地ここち心地ここちここちかきかきかき亂みだ亂みだみだりりりててて堪た堪たたへへえがたけれがたけれがたければばばまだまだまだ事こと事ことこともももはてはてはてぬぬぬににに罷まか罷まかまかででで給たま給たまたまひひいぬるぬるぬるまゝまゝままににに、、、いといといといたくいたくいたく惑まど惑まどまどひひいててて、、、例れい例れいれいのののいといといとおどろおどろしきおどろおどろしきおどろおどろしき醉ゑひ醉ゑひえいにににもももあらあらあらぬぬぬををを、、、いかなれいかなれいかなればばばかゝるかゝるかかるならならならむむん、、、つゝましつゝましつつましととと物もの物ものものををを思おも思おもおもひひいつるつるつるにににけけけののののぼりのぼりのぼりぬるぬるぬるにににややや、、、いといといとさささいふいふいうばかりばかりばかりおくすおくすおくすべきべきべき心こころ心こころこころよわさよわさよわさとととははは覺おぼ覺おぼおぼえええぬぬぬををを、、、いふかひいふかひいうかいなくなくなくもももありありありけるけるけるかなかなかなとととみづからみづからみずから思おも思おもおもひひい知し知ししらららるるる。。。しばししばししばしのののゑひゑひえいののの惑まど惑まどまどひひいにににもももあらあらあらざりざりざりけりけりけり。。。やがてやがてやがていといといといたくいたくいたく煩わづら煩わづらわずらひひい給たま給たまたまふふう。。。おとゞおとゞおとど母はゝ母はゝはは北きた北きたきたののの方かた方かたかたおぼしおぼしおぼしさわぎさわぎさわぎてててよそよそよそよそよそよそにてにてにていといといと覺おぼ覺おぼおぼ束つか束つかつかなしなしなしとてとてとて殿との殿とのとのにににわたしわたしわたし奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまふふうををを、、、

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

主人の院(源氏)は、「過ぎていく年齢とともに、酔い泣きこそとどめがたいものだな。衛門督が目をとめて、ほほえんでいらっしゃるのは、たいそう恥ずかしいよ。そうはいっても、若さも今しばらくのことだろう。逆さまには流れない年月よ。老いは逃れることのできないものなのだ」と言って、柏木をご覧になると、柏木は人よりいっそうまじめに沈み込んでいて、本当に気分もたいそう悪いので、すばらしいことも目にとまらない気持ちでいるのに、源氏はその人をわざわざ名指しして、空酔いをしながら、このようにおっしゃる。冗談のようだけれど、柏木はいっそう胸がつぶれて、杯が回ってくるのも頭が痛く思われるので、形ばかりにして紛らわすのを、源氏はお見とがめになって、杯を持たせたまま何度も無理にお勧めになるので、柏木はきまり悪くて困っている様子は、普通の人とは違って美しい。

柏木は気分が乱れて耐えがたいので、まだ宴も終わらないうちに退出なさったが、そのままたいそうひどく苦しんで、いつものひどい酔い方でもないのに、「どうしてこうなったのだろう。気がひけて物思いをしていたので、気がのぼってしまったのだろうか。それほど言うほど臆病な心の弱さとは思われないのに、ふがいないことだった」と、自分でお思い知りになる。それは、しばらくの酔いの迷いでもなかった。そのまま、たいそうひどく病みつきなさる。父の大臣と母北の方は心配して騒いで、別々に住んでいてはたいそう気がかりだと言って、ご自分の邸にお移し申し上げなさるのを、

意訳

源氏は宴で空酔いをして、柏木を名指しし、老いは逃れられないと皮肉を言い、杯を無理に勧める。

柏木は耐えがたくなって退出し、そのまま重い病にかかり、両親は自邸に引き取ろうとする。

語釈・文法注

文法

「さかさまにゆかぬ年月」(さかさまにゆかぬ年月よ)
逆さまには流れない年月。若い者もいずれ老いるという意味を含み、柏木への皮肉となっている。
「空醉ひ」(空醉ひしつゝかくの給ふ)
酔ったふりをすること。
「けののぼる」(つゝましと物を思ひつるにけののぼりぬるにや)
気がのぼる。のぼせる。

解説

源氏が空酔いをして柏木を名指しする場面は、若菜下の巻の中でも最も緊張に満ちた場面である。源氏の「さかさまにゆかぬ年月よ、老いはえ遁れぬわざなり」という言葉は、若い柏木への皮肉であり、柏木もいずれ老いるのだという警告でもある。源氏は、自分の老いを嘲笑う若者として、柏木を責めているのである。

源氏が杯を無理に勧めるのは、柏木への静かな復讐である。柏木はこの宴の後、重い病にかかり、それがもとで亡くなる。源氏のこの夜の振る舞いは、柏木の死の直接の引き金となった。光源氏という人物の暗い一面が、ここに鮮やかに描かれている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、714–717頁(コマ68–69)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日