源氏物語 第35帖 若菜下(44)
女三の宮と源氏
源氏は、宮がいじらしく悩み続ける様子を気の毒に思い、このように思い放つにつけては、かえって、つらさにも紛れない恋しさが苦しく、宮のもとへ行って会うにつけても胸が痛む。祈祷などをさまざまにさせ、表向きは以前と変わらず、かえっていたわり大切に扱う。しかし親しく語らう時は、心がすっかり隔たって気まずいので、人目だけを取り繕い、心の中で思い乱れるばかりである。源氏が手紙を見たとも言わないのに、宮が自分でひどく困っている様子も、幼い。このようでいらっしゃるからこそ、あんなことになったのだ、よいとは言っても、あまりに頼りないと思うにつけ、世の中がすべて心配になり、明石の女御があまりに柔らかでおっとりしているのも、思いを寄せる人がいたら、まして心が乱れるだろうと思う。女はこのように、きっぱりしたところがなく、なよなよしているのを、人も侮るのか、あってはならない人がふと目をとめ、心の弱い過ちを犯すのだと思う。それに比べ、鬚黒の北の方(玉鬘)は、確かな後見もなく、幼い頃から頼りない境遇で育ったが、才気があって賢く、自分も親らしくふるまいながら、憎い心がないわけでもなかったのを、穏やかにさりげなくかわし、鬚黒が心ない女房と心を合わせて入り込んだ時も、はっきりと拒んだ様子を人にも見せ、ことさら許された形にして、自分から罪を犯したことにはしなかった、今思えば、なんと賢いことだったか、宿縁の深い仲なので、結局同じことになったとしても、自分から進んで起こしたことであれば、世の人も軽々しく思っただろう、たいそうよくふるまったものだと思い出す。

- 1宮宮みやはははいといといとらうたげらうたげろうたげにてにてにて惱惱なやみみみわたりわたりわたり給給たまふふうさまさまさまののの猶猶なおいといといと心苦心苦こころぐるしくしくしくかくかくかく思思おもひひいはなちはなちはなち給給たまふふうにににつけつけつけてててははは、、、あやにくあやにくあやにくにににうきうきうきにににまぎれまぎれまぎれぬぬぬ戀戀こいしさしさしさののの苦苦くるしくしくしくおぼさおぼさおぼさるれるれるればばば、、、渡渡わたりりり給給たまひひいててて見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうにににつけつけつけてててももも胸胸むねいたくいたくいたくいとほしくいとほしくいとおしくおぼさおぼさおぼさるるる。。。御御おんいのりいのりいのりなどなどなどさまざまさまざまさまざまにににせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。大方大方おおかたのののことことことはははありありありしししにににかはらかはらかわらずずず、、、なかなかなかなかなかなかいたはしくいたはしくいたわしくやんごとなくやんごとなくやんごとなくもてなしもてなしもてなし聞聞きこゆるゆるゆるさまさまさまをををましましまし給給たまふふう。。。氣氣け近近じかくくくうちうちうち語語かたらひらひらい聞聞きこえええ給給たまふふうさまさまさまはははいといといとこよなくこよなくこよなく御心御心みこころ隔隔へだたりたりたりてててかたはらいたけれかたはらいたけれかたわらいたければばば、、、人人ひと目目めばかりばかりばかりをををめやすくめやすくめやすくもてなしもてなしもてなしててておぼしおぼしおぼしのみのみのみ亂亂みだるゝるゝるるににに、、、このこのこの御心御心みこころのののうちうちうちしもしもしもぞぞぞ苦苦くるしかりしかりしかりけるけるける。。。さるさるさることことこと見見みきききともともともあらはしあらはしあらわし聞聞きこえええ給給たまははわぬぬぬににに、、、みづからみづからみずからいといといとわりなくわりなくわりなくおぼしおぼしおぼしたるたるたるさまさまさまももも心心こころをさなしをさなしおさなし。。。いといといとかくかくかくおはするおはするおわするけけけぞぞぞかしかしかし。。。よきよきよきやうやうようととといひいひいいながらながらながらあまりあまりあまり心心こころもとなくもとなくもとなく後後おくれれれたるたるたる賴賴たのもしげもしげもしげなきなきなきわざわざわざなりなりなりとととおぼすおぼすおぼすににに、、、世世よののの中中なかなべてなべてなべてうしろめたくうしろめたくうしろめたく女御女御にょうごのののあまりあまりあまりやはらかやはらかやわらかにににおびれおびれおびれ給給たまへへえるるるこそこそこそ、、、かやうかやうかようににに心心こころかけかけかけ聞聞きこえええむむん人人ひとはははましてましてまして心心こころ亂亂みだれれれなむなむなんかしかしかし。。。女女おんなはははかうかうこうはるけはるけはるけ所所どころなくなくなくなよびなよびなよびたるたるたるををを人人ひともももあなづらはしきあなづらはしきあなずらわしきにににややや、、、さるさるさるまじきまじきまじきにににふとふとふと目目めとまりとまりとまり心心こころ强强ずよからからからぬぬぬあやまちあやまちあやまちはははししし出出いづるづるずるなりなりなりけりけりけりとととおぼすおぼすおぼす。。。
- 2右右みぎのののおとゞおとゞおとどののの北北きたののの方方かたののの取取とりりり立立たてててたるたるたるうしろみうしろみうしろみもももなくなくなく幼幼おさなくくくよりよりより物物ものはかなきはかなきはかなきよよよにににさすらふるさすらふるさすらうるやうやうようにてにてにて生生おひひい出出いででで給給たまひひいけれけれけれどどど、、、かどかどしくかどかどしくかどかどしくらうらうろうありありありててて我我わももも大方大方おおかたにににはははおやおやおやめきめきめきしかしかしかどどど、、、にくきにくきにくき心心こころのののそはそはそわぬぬぬにににしもしもしもあらあらあらざりざりざりしししをををなだらかなだらかなだらかにににつれなくつれなくつれなくもてなしもてなしもてなしてててすぐしすぐしすぐし、、、このこのこのおとゞおとゞおとどのののさるさるさるむしんむしんむしんののの女房女房にょうぼうににに心心こころ合合あわせせせててて入入いりりり來來きたりたりたりけむけむけんにににもももけざやかけざやかけざやかにににもてもてもて離離はなれれれたるたるたるさまさまさまををを人人ひとにににももも見見みえええ知知しららられれれ、、、殊殊こと更更さらににに許許ゆるささされれれたるたるたる有樣有樣ありさまにににしなししなししなしててて我我わががが心心こころととと罪罪つみあるあるあるにににはははなさなさなさずずずなりなりなりにににしししなどなどなど、、、今今いま思思おもへへえばばばいかにいかにいかにかどかどかどあるあるあることことことなりなりなりけりけりけり、、、契契ちぎり深深ふかききき中中なかなりなりなりけれけれければばば長長ながくくくかくかくかくてててたもたたもたたもたむむんことことことはははとてとてとてもももかくかくかくてててももも同同おなじじじことことことあらあらあらましましましものものものからからから心心こころもてもてもてありありありしししことことことゞもゞもども世世よののの人人ひとももも思思おもひひい出出いでででばばば少少すこしししかるがるしきかるがるしきかるがるしき思思おもひひい加加くわはりはりわりなななましましまし、、、いといといといたくいたくいたくもてなしもてなしもてなしてててしししわざわざわざなりなりなりとととおぼしおぼしおぼし出出いづづず。。。
現代語訳
宮が、たいそういじらしく悩み続けていらっしゃる様子が、やはりたいそう心苦しく、このように思い放ちなさるにつけては、あいにく、つらさにも紛れない恋しさが苦しくお思いになるので、源氏はお越しになって、宮を拝見なさるにつけても、胸が痛くお気の毒にお思いになる。御祈祷などを、さまざまにおさせになる。表向きのことは以前と変わらず、かえっていたわしく、大切にお扱い申し上げる様子を、増していらっしゃる。しかし、親しくお話し申し上げなさる様子は、たいそうこの上なくお心が隔たって気まずいので、人目だけを見苦しくないように取り繕って、お思い乱れになるばかりなので、このお心の内こそ苦しいのであった。源氏が、あのことを見たともお打ち明けにならないのに、宮が自分でたいそう困っていらっしゃる様子も、幼いことである。「たいそうこのようでいらっしゃるせいなのだ。おっとりしているのはよいといっても、あまりに頼りなく、劣っていて、頼りにならないことだ」とお思いになると、世の中のことがすべて気がかりで、「女御(明石の女御)が、あまりに柔らかでおっとりしていらっしゃるのこそ、このように心をかけ申し上げる人がいたら、まして心が乱れるだろう。女はこのように、きっぱりしたところがなく、なよなよしているのを、人も侮るのであろうか、あってはならない人がふと目をとめて、心の弱い過ちを犯すのだ」とお思いになる。
「右大臣(鬚黒)の北の方(玉鬘)は、取り立てた後見もなく、幼い頃から頼りない境遇でさすらうようにしてお育ちになったけれど、才気があって物慣れていて、私も表向きは親らしくふるまったが、憎い心が添わないわけでもなかったのを、穏やかにさりげなくかわして過ごし、この大臣(鬚黒)が、あのような心ない女房と心を合わせて入り込んだ時にも、はっきりと拒んでいる様子を人にも見せ知られて、ことさら許された形にして、自分から罪を犯したことにはしないでしまったなど、今思えば、どんなに才気のあることだったか。宿縁の深い仲だったので、結局このように長く連れ添うことになったのは、どちらにしても同じことであったろうが、自分から進んで起こしたことであったら、世の人も思い出したら、少し軽々しいという思いが加わっただろう。たいそう見事にふるまったものだ」と、お思い出しになる。
意訳
源氏は宮に表向きは変わらず接するが、心は隔たり、宮の頼りなさを思って、明石の女御のことまで案じる。
源氏は、かつて玉鬘が、源氏の恋情や鬚黒の侵入を賢くかわしたことを思い出し、その賢さを宮と比べる。
語釈・文法注
文法
- 「おびる」(女御のあまりやはらかにおびれ給へるこそ)
- おっとりしている、のんびりしている。
- 「はるけ所」(女はかうはるけ所なくなよびたるを)
- 晴るけ所。気持ちのはっきりしたところ、きっぱりしたところ。
- 反実仮想「ましものから」(とてもかくても同じことあらましものから)
- 「どちらにしても同じことであったろうが」。
解説
源氏は表向き宮を大切に扱いながら、心はすっかり離れてしまう。この「人目ばかりをめやすくもてなして」という態度は、宮にとっても源氏にとっても苦しいものである。宮の幼さを責めながら、源氏は自分の娘の明石の女御のことまで心配する。
源氏が玉鬘を思い出すのは興味深い。玉鬘は源氏の養女でありながら源氏に恋情を寄せられ、鬚黒に強引に結婚させられたが、そのいずれにも賢く対処した。宮との対比で、玉鬘の才気が改めて評価される。かつて自分が玉鬘に「にくき心」を抱いたことを認める源氏の内省も、この場面の重要な要素である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、704–705頁(コマ63)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日