源氏物語 第35帖 若菜下(43)
柏木のおののき
柏木はなおもひどく思いを訴えてくるが、小侍従も困りはてて、こういうことがあったと告げる。柏木はひどく驚き、いつの間にそんなことが起こったのか、このようなことは、続けていれば自然と様子にも表れるだろうかと思っただけでも気がひけ、空に目がついているように思っていたのに、まして、あれほど紛れようのない手紙を源氏が見たとはと、恥ずかしく、恐れ多く、いたたまれず、朝夕の涼しさもない頃なのに、身も凍る思いがする。長年、公私につけて源氏に親しく召し使われ、人よりも細やかに目をかけてもらっていたのに、あきれるほど大それた者として疎まれたら、どうして顔を合わせられよう、かといって、まったく参上しないのも人目に怪しく、源氏も思い当たるだろうと、心穏やかでなく、気分も悪くなって、宮中にも参らない。それほど重い罪にはあたらないとしても、身の破滅のような気がして、やはりそうなったかと、自分の心をつらく思う。そして、宮は奥ゆかしい様子の見えない方だった、まず、あの御簾の隙間もあってはならないことで、夕霧が軽々しいと思っていた様子が見えたと、今になって思い当たる。しいてこの恋を冷まそうと思うあまり、宮の欠点を探したいのだろうか。いくらよいといっても、あまりにひたすらおっとりした高貴な人は、世の中のことも知らず、仕える女房にも用心しないので、このように、ご自身のためにも人のためにも、ひどいことになるのだと思いながら、宮のことの心苦しさも思い捨てられない。

- 1かのかのかの人人ひともももいみじげいみじげいみじげにににのみのみのみいひいひいいわたれわたれわたれどもどもども小小こ侍侍じ從從じゅうももも煩煩わずらはしくはしくわしく思思おもひひい歎歎なげきききててて「「「かゝるかゝるかかることことことなむなむなんありありありししし」」」ととと告告つげげげてててけれけれければばばいといといとあさましくあさましくあさましくいついついつののの程程ほどにににさるさるさることことこと出出いででできききけむけむけん、、、かゝるかゝるかかることことことはははありありありふれふれふればばばおのづからおのづからおのずから氣色氣色けしきにてにてにてももも漏漏もりりり出出いづるづるずるやうやうようもももやややととと思思おもひひいしししだにだにだにいとゞいとゞいとどつゝましくつゝましくつつましく、、、空空そらにににめめめつきつきつきたるたるたるやうやうようににに覺覺おぼえええてててしししををを、、、ましてましてましてさばかりさばかりさばかり違違たがふふうべくべくべくもももあらあらあらざりざりざりししし事事ことどもどもどもををを見見み給給たまひひいてててけむけむけん、、、耻耻はずかしくしくしくかたじけなくかたじけなくかたじけなくかたはらいたきかたはらいたきかたわらいたきににに、、、朝朝あさ夕夕ゆうすゞみすゞみすずみもももなきなきなき比比ころなれなれなれどどど身身みもももしむるしむるしむる心地心地ここちしししててていはいはいわむむんかたかたかたなくなくなく覺覺おぼゆゆゆ。。。年年とし比比ごろまめまめまめごとごとごとにににもももあだあだあだごとごとごとにににももも召召めしししまつはしまつはしまつわし參參まいりりりなれなれなれつるつるつるものものものををを、、、人人ひとよりよりよりはははこまやかこまやかこまやかにににおぼしおぼしおぼしとめとめとめたるたるたる御御おん氣色氣色けしきののの哀哀あわれににになつかしきなつかしきなつかしきをををあさましくあさましくあさましくおほけなきおほけなきおおけなき物物ものににに心心こころおかおかおかれれれ奉奉たてまつりりりてててはははいかでいかでいかでかはかはかは目目めをををももも見見み合合あわせせせ奉奉たてまつらららむむん、、、さりとてさりとてさりとてかきかきかきたえたえたえほのめきほのめきほのめき參參まいらららざらざらざらむむんももも人人ひとめめめあやしくあやしくあやしくかのかのかの御心御心みこころにににもももおぼしおぼしおぼし合合あわせせせむむんことことことのののいみじさいみじさいみじさなどなどなど安安やすからからからずずず思思おもふふうににに、、、心地心地ここちもももいといといとなやましくなやましくなやましくてててうちうちうちへへへももも參參まいらららずずず。。。
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現代語訳
あの人(柏木)も、ひどく苦しげにばかり言い続けるけれど、小侍従も困りはてて嘆いて、「このようなことがありました」と告げてしまったので、柏木はたいそうあきれて、「いつの間に、そのようなことが起こったのだろう。このようなことは、長く続けていれば、自然と様子にも漏れ出ることもあろうかと思っただけでさえ、いっそう気がひけて、空に目がついているように思っていたのに、まして、あれほど紛れようのなかったことを、院がご覧になったのだろう」と、恥ずかしく、恐れ多く、いたたまれないので、朝夕の涼しさもない頃だけれど、身も凍るような気がして、言いようもなく思われる。「長年、まじめなことにも風流なことにも、召しまとわりつかせ、参上し慣れてきたのに、人よりも細やかに目をかけてくださったご様子が、しみじみと慕わしかったのに、あきれるほど大それた者として疎まれ申し上げては、どうして目を見合わせ申し上げられようか。そうかといって、ふっつりと少しも参上しないのも、人目に怪しく、あのお心にもお思い当たりになるだろうことの恐ろしさ」などと、心穏やかでなく思うので、気分もたいそう悪くて、宮中へも参上しない。
それほど重い罪にあたるはずのことではないけれど、身が破滅してしまった気がするので、やはりそうだったのかと、一方では自分の心もたいそうつらく思われる。「いやもう、落ち着いた奥ゆかしい様子がお見えにならない方であるよ。まず、あの御簾の隙間も、あってよいことだろうか。軽々しいと大将(夕霧)が思っていらっしゃった様子が見えたよ」などと、今になって思っていらっしゃる。しいてこの思いを冷まそうと思うあまり、むやみに宮に難をつけ申し上げたいのであろうか。「よいといっても、あまりにひたすらおっとりとして高貴な人は、世の中のこともわからず、一方ではお仕えする女房に用心なさることもなくて、このように、気の毒なご自身のためにも、人のためにも、ひどいことになるのだな」と、あの宮のことの心苦しさも、思い捨てることがおできにならない。
意訳
小侍従から手紙が源氏に見つかったと聞いた柏木は、身も凍る思いで、源氏に顔を合わせることもできず、宮中にも参らない。
柏木は宮の不用心さを思い、恋を冷まそうと宮の欠点を探すが、宮への心苦しさも捨てられない。
語釈・文法注
文法
- 「空にめつきたるやうに」(空にめつきたるやうに覺えてしを)
- 空に目がついているように。天に見られているような恐ろしさ。
- 「なんづく」(あながちになんづけ奉らまほしきにやあらむ)
- 難付く。欠点を見つけて非難する。
- 反語の「いかでかは…む」(いかでかは目をも見合せ奉らむ)
- 「どうして目を見合わせ申し上げられようか、いや、できない」。
解説
柏木は、源氏に手紙を見られたと知って、「身もしむる心地」がする。柏木にとって源氏は、長年目をかけてくれた恩人であり、その源氏に知られたことが、何よりも恐ろしい。この恐れが、柏木の心身を蝕んでいく。
柏木が今になって宮の不用心さを責めるのは、恋を冷まそうとする心の働きであると語り手は言う。宮を責めながらも、宮への心苦しさを捨てられない柏木の心の揺れは、柏木という人物の弱さと誠実さとを、同時に表している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、702–705頁(コマ62–63)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日