源氏物語 第35帖 若菜下(38)
女三の宮を見舞う源氏
女三の宮は、罪の意識から源氏に顔を合わせるのも恥ずかしく、話しかけられても返事もしない。源氏は、長く来なかったのを恨んでいるのかと気の毒に思い、何かとなだめる。年配の女房に容体を尋ねると、普通でないご気分で、懐妊のようだと答える。源氏は、何年も子のできなかった人々でもないのに、今になって珍しいことだとだけ言い、心の中では、長年連れ添った人々にもなかったことなので、確かなことだろうかと思うが、何も言わず、苦しそうな宮の様子をいとおしく思う。久しぶりに来たので、すぐには帰れず、二、三日滞在する間も、紫の上が気がかりで、手紙ばかり書く。事情を知らない女房たちは、いつの間にあれほどの言葉が積もるのか、穏やかでない夫婦仲だと言う。小侍従は、それにつけても胸騒ぎがする。柏木も、源氏が来たと聞いて、身の程知らずにも心を乱して、長々と手紙を書いてよこす。源氏が少しの間対の屋に行った隙に、小侍従はひそかに宮に見せる。宮は、煩わしいものを見せないで、気分がいっそう悪いのにと言って横になるが、小侍従は、この端書きがお気の毒なのですと言って広げる。そこへ人が来たので、小侍従は几帳を引き寄せて去る。宮が胸をつぶしているところへ源氏が入ってきたので、宮はうまく隠すこともできず、御褥の下に挟み込む。夜になって、源氏は二条院へ戻ると暇を請う。

- 1宮宮みやははは御心御心みこころのののおにおにおにゝゝに見見みえええ奉奉たてまつらららむむんもももはづかしくはづかしくはずかしくつゝましくつゝましくつつましくおぼすおぼすおぼすににに、、、物物ものなどなどなど聞聞きこえええたまふたまふたまう御御おんいらへいらへいらえももも聞聞きこえええ給給たまははわねねねばばば、、、日日ひごろごろごろのののつもりつもりつもりをををさすがにさすがにさすがにさりげなくさりげなくさりげなくてててつらしつらしつらしとととおぼしおぼしおぼしけるけるけるととと心苦心苦こころぐるしけれしけれしければばば、、、とかくとかくとかくこしらへこしらへこしらえ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。おとなびおとなびおとなびたるたるたる人人ひと召召めしししててて御御おん心心こころちちちのののさまさまさまなどなどなど問問とひひい給給たまふふう。。。「「「例例れいのののさまさまさまならならならぬぬぬ御御おん心心こころちちちににになむなむなん」」」ととと煩煩わずらひひい給給たまふふう御御おんありさまありさまありさまををを聞聞きこゆゆゆ。。。「「「あやしくあやしくあやしくほどほどほどへへへててて珍珍めずらしきしきしき御御おん事事ことにににももも」」」とととばかりばかりばかりのたまひのたまひのたまいててて御心御心みこころのののうちうちうちにににははは年年とし比比ごろ經經へぬるぬるぬる人々人々ひとびとだにだにだにももも、、、さるさるさることことことなきなきなきををを、、、ふぢやうふぢやうふじょうなるなるなる御御おんことことことにににもももやややとととおぼせおぼせおぼせばばば、、、ことことことにににともかくもともかくもともかくものたまひのたまひのたまいあへしらひあへしらひあえしらい給給たまははわででで唯唯ただ打打うちちち惱惱なやみみみ給給たまへへえるるるさまさまさまのののいといといとらうたげらうたげろうたげなるなるなるをををあはれあはれあわれととと見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。辛辛かろうううじてじてじておぼしおぼしおぼし立立たちちちててて渡渡わたりりり給給たまひひいしかしかしかばばばふとふとふともももえええ歸歸かえりりりたまはたまはたまわででで、、、二二に三三さん日日にちおはするおはするおわするほどほどほど、、、いかにいかにいかにいかにいかにいかにととと後後うしろめたくめたくめたくおぼさおぼさおぼさるれるれるればばば、、、御御おん文文ふみをををのみのみのみ書書かききき盡盡つくししし給給たまふふう。。。
- 2「「「いついついつののの間間まにににつもるつもるつもる御御おん言言ことののの葉葉はにににかかかあらあらあらむむん。。。いでやいでやいでややすからやすからやすからぬぬぬ世世よをををももも見見みるるるかなかなかな」」」ととと若若わか君君ぎみののの御御おんあやまちあやまちあやまちををを知知しらららぬぬぬ人人ひとはははいふいふいう。。。侍侍じ從從じゅうぞぞぞかゝるかゝるかかるにににつけつけつけてててももも胸胸むねうちうちうちさわぎさわぎさわぎけるけるける。。。かのかのかの人人ひともももかくかくかく渡渡わたりりり給給たまへへえりりりととと聞聞きくくくににに、、、おほけなくおほけなくおおけなく心心こころあやまりあやまりあやまりしししててていみじきいみじきいみじき事事ことどもどもどもををを書書かききき續續つづけけけててておこせおこせおこせ給給たまへへえりりり。。。對對たいにににあからさまあからさまあからさまににに渡渡わたりりり給給たまへへえるるる程程ほどににに、、、人人ひとまままなりなりなりけれけれければばば忍忍しのびびびててて見見みせせせ奉奉たてまつるるる。。。「「「むつかしきむつかしきむつかしき物物もの見見みするするするこそこそこそいといといと心心こころうけれうけれうけれ心地心地ここちのののいとゞいとゞいとど惡惡あしきしきしきににに」」」とてとてとて臥臥ふししし給給たまへへえれれればばば、、、「「「猶猶なおたゞたゞただこのこのこのはしはしはしがきがきがきのののいとほしげいとほしげいとおしげににに侍侍はべるるるぞぞぞややや」」」とてとてとて廣廣ひろげげげたれたれたればばば人人ひとののの參參まいるるるにににいといといと苦苦くるしくしくしくててて御御み几几き帳帳ちょうひきひきひき寄寄よせせせててて去去さりりりぬぬぬ。。。いとゞいとゞいとど胸胸むねつぶるゝつぶるゝつぶるるににに院院いん入入いりりり給給たまへへえばばば、、、えええよくよくよくもももかくしかくしかくし給給たまははわででで、、、御御おんしとねしとねしとねののの下下したにににさしさしさしはさみはさみはさみ給給たまひひいつつつ。。。夜夜よさりさりさりつかたつかたつかた二二に條條じょう院院いんへへへわたりわたりわたり給給たまははわむむんとてとてとて御御おん暇暇いとま聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
現代語訳
宮は、心の鬼(良心の呵責)から、院にお目にかかるのも恥ずかしく気がひけてお思いになるので、源氏が何か申し上げなさるお返事も申し上げなさらないので、源氏は、この頃の途絶えの積もったことを、さすがにさりげなく、つらいとお思いになったのだと心苦しいので、何かとおなだめ申し上げなさる。年配の女房を呼んで、ご気分の様子などをお尋ねになる。「普通ではないご気分で」と、お悩みのご様子を申し上げる。源氏は、「不思議と、ずいぶん時が経ってから、珍しいことで」とだけおっしゃって、お心の中では、長年連れ添ってきた人々でさえ、そういうことはなかったのに、確かでないことではなかろうかとお思いになるので、特に何ともおっしゃらず、相手にもなさらないで、ただ苦しんでいらっしゃる様子がたいそういじらしいのを、しみじみと拝見なさる。ようやくお思い立ちになってお越しになったので、すぐにもお帰りになれずに、二、三日いらっしゃる間も、紫の上がどうか、どうかと気がかりにお思いになるので、お手紙ばかり書き尽くしなさる。
「いつの間に積もるお言葉なのでしょう。まあ、穏やかでない夫婦仲を見ることよ」と、若君(宮)の過ちを知らない女房は言う。侍従(小侍従)は、このようなことにつけても胸騒ぎがするのだった。あの人(柏木)も、源氏がこのようにお越しになったと聞くと、大それたことに心が乱れて、ひどいことを書き続けてよこしなさった。源氏が対の屋にちょっとお渡りになった間に、人のいない時だったので、小侍従はひそかに宮にお見せ申し上げる。宮は、「煩わしいものを見せるのは、たいそうつらいことです。気分がいっそう悪いのに」と言って横におなりになると、小侍従は「やはりただ、この端書きがお気の毒なのでございますよ」と言って広げたところに、人が参るので、たいそう困って、御几帳を引き寄せて去ってしまった。宮がいっそう胸のつぶれる思いでいるところに、院がお入りになったので、うまく隠すこともおできにならず、御褥の下に挟み込みなさった。夜になる頃、源氏は二条院へお帰りになろうとして、お暇を申し上げなさる。
意訳
源氏は宮の懐妊を聞き、長年子のできなかった人々を思って不審に思うが、何も言わない。
柏木からの手紙を小侍従が宮に見せたところへ源氏が来て、宮はあわてて手紙を御褥の下に隠す。
語釈・文法注
文法
- 「心のおに」(御心のおにゝ見え奉らむもはづかしく)
- 心の鬼。良心の呵責、やましさ。
- 「ふぢやう」(ふぢやうなる御ことにもや)
- 不定。確かでないこと。源氏は懐妊を疑わしく思う。
- 「あへしらふ」(ことにともかくものたまひあへしらひ給はで)
- 応対する、相手にする。
解説
源氏は女三の宮の懐妊を聞いて「ふぢやうなる御ことにもや」と疑う。紫の上や花散里など、長年連れ添った人々にも子がなかったのに、という源氏の疑念は、真実に近づいている。しかし源氏はそれを口にせず、宮をいたわる。
柏木の手紙が御褥の下に隠される場面は、次の場面で源氏がそれを発見する伏線となっている。小侍従の不用意さ、宮の幼さ、柏木の大胆さが重なって、密通は露見へと向かっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、698–699頁(コマ60)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日