源氏物語 第35帖 若菜下(24)
紫の上の発病
対の屋では、源氏がいない夜はいつものように夜更かしして、女房たちに物語を読ませて聞く。昔物語にも、浮気な男や色好み、二心ある男に関わった女のことが書かれているが、最後には頼る所があるようだ。自分は不思議と浮いたまま過ごしてきた、源氏の言うように人に勝る宿縁はあったが、人が耐えがたく思う物思いから離れられない身で終わるのだろうかと、紫の上は思い続ける。夜更けに休むと、明け方から胸を病む。女房たちが源氏に知らせようとするが、紫の上は止め、苦しさをこらえて夜を明かす。体は熱く、気分もひどく悪いが、源氏がすぐには来ないので知らせない。明石の女御から使いがあり、具合が悪いと返事をすると、女御が驚いて源氏に知らせ、源氏は急いで戻る。体を探るとひどく熱く、昨日の厄年の話を思い合わせて恐ろしくなる。粥も口にせず、源氏は一日中付き添う。果物も口にせず、起き上がることもなく日が過ぎる。祈祷を数知れず行い、加持をさせるが、どこともなくひどく苦しみ、胸の発作に苦しむ。御賀の評判も静まり、朱雀院からも見舞いがある。二月も過ぎ、源氏は言いようもなく嘆いて、場所を変えようと二条院に移す。

- 1對對たいにににははは例例れいのののおはしまさおはしまさおわしまさぬぬぬ夜夜よはははよひよひよいゐゐいししし給給たまひひいててて、、、人々人々ひとびとににに物語物語ものがたりなどなどなど讀讀よままませせせててて聞聞きききき給給たまふふう。。。かくかくかく世世よのののたとひたとひたといにににいひいひいい集集あつめめめたるたるたる昔昔むかし語語がたりどもどもどもにににももも、、、あだあだあだなるなるなる男男おとこ、、、色色いろごのみごのみごのみ、、、二二ふた心心ごころあるあるある人人ひとにににかゝづらひかゝづらひかかずらいたるたるたる女女おんな、、、かやうかやうかようなるなるなる事事ことをををいひいひいい集集あつめめめたるたるたるにににももも遂遂ついににによるよるよる方方かたありありありてててこそこそこそあめれあめれあめれ、、、怪怪あやしくしくしくうきうきうきてててもももすぐしすぐしすぐしつるつるつる有樣有樣ありさまかなかなかな、、、げにげにげにのたまひのたまひのたまいつるつるつるやうやうようににに、、、人人ひとよりよりよりことことことなるなるなるすぐせすぐせすぐせもももありありありけるけるける身身みながらながらながら、、、人人ひとののの忍忍しのびびび難難かたくくく飽飽あかかかぬぬぬことことことにににするするする物思物思ものおもひひいはなれはなれはなれぬぬぬ身身みにてにてにてややや止止やみみみなむなむなんとととすすすらむらむらん、、、味味あじ氣氣きなくなくなくもももあるあるあるかなかなかなゝどゝどなど思思おもひひいつゞけつゞけつづけててて、、、夜夜よ更更ふけけけててて大大おお殿殿との籠籠ごもりりりぬるぬるぬる曉曉あかつき方方がたよりよりより御御おん胸胸むねををを惱惱なやみみみ給給たまふふう。。。人々人々ひとびと見見み奉奉たてまつりりりあつかひあつかひあつかいててて「「「御御おんせうそこせうそこしょうそこ聞聞きこえええさせさせさせむむん」」」ととと聞聞きこゆるゆるゆるををを、、、「「「いといといとびんないびんないびんないことことこと」」」とととせいしせいしせいし給給たまひひいててて堪堪たへへえ難難かたきききをををおさへおさへおさえててて明明あかししし給給たまひひいつつつ。。。御御おん身身みもももぬるみぬるみぬるみててて御御おん心地心地ここちもももいといといと惡惡あしけれしけれしけれどどど、、、院院いんもももとみとみとみにににわたりわたりわたり給給たまははわぬぬぬ程程ほどかくかくかくなむなむなんともともとも聞聞きこえええずずず。。。女御女御にょうごののの御御おん方方かたよりよりより御御おんせうそこせうそこしょうそこあるあるあるににに、、、「「「かくかくかくなやましくなやましくなやましくてててなむなむなん」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえるるるににに驚驚おどろきききてててそなたそなたそなたよりよりより聞聞きこえええ給給たまへへえるるるににに胸胸むねつぶれつぶれつぶれててて急急いそぎぎぎわたりわたりわたり給給たまへへえるるるにににいといといと苦苦くるしげしげしげにてにてにておはすおはすおわす。。。
- 2「「「いかなるいかなるいかなる御御おん心地心地ここちぞぞぞ」」」とてとてとて探探さぐりりり奉奉たてまつりりり給給たまへへえばばば、、、いといといとあつくあつくあつくおはすれおはすれおわすればばば昨昨きの日日う聞聞きこえええ給給たまひひいししし御御おんつゝしみつゝしみつつしみのののすぢすぢすじなどなどなどおぼしおぼしおぼし合合あわせせせ給給たまひひいててていといといとおそろしくおそろしくおそろしくおぼさおぼさおぼさるるる。。。御御おんかゆかゆかゆなどなどなどこなたこなたこなたににに參參まいらせらせらせたれたれたれどどど御覽御覽ごらんじじじももも入入いれれれずずず。。。日日ひ一一ひと日日ひ添添そひひいおはしおはしおわしててて萬萬よろずににに見見み奉奉たてまつりりり嘆嘆なげききき給給たまふふう。。。はかなきはかなきはかなき御御おんくだものくだものくだものをををだにだにだにいといといと物物ものうくうくうくししし給給たまひひいててて、、、起起おきききあがりあがりあがり給給たまふふうことことこと絕絕たえええててて日日ひ比比ごろへへへぬぬぬ。。。いかならいかならいかならむむんとととおぼしおぼしおぼし騷騷さわぎぎぎててて、、、御御おんいのりいのりいのりどもどもども數數かず知知しらららずずず始始はじめめめさせさせさせ給給たまふふう。。。僧僧そうめしめしめしててて御御おんかぢかぢかじなどなどなどせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。そこそこそこところところところともともともなくなくなくいみじくいみじくいみじく苦苦くるしくしくしくしししたまひたまひたまいててて、、、胸胸むねははは時時とき々々どきおこりおこりおこりつゝつゝつつ煩煩わずらひひい給給たまふふうさまさまさま堪堪たへへえ難難かたくくく苦苦くるしげしげしげなりなりなり。。。さまざまさまざまさまざまののの御御おんつゝしみつゝしみつつしみ限限かぎりなけれなけれなけれどどど、、、しるししるししるしももも見見みえええずずず。。。重重おもしししととと見見みれれれどどどおのづからおのづからおのずからをこたるをこたるおこたるけぢめけぢめけじめあらあらあらばばばたのもしきたのもしきたのもしきををを、、、いみじくいみじくいみじく心心こころぼそくぼそくぼそく悲悲かなしししととと見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうににに、、、ことことことごとごとごとおぼさおぼさおぼされれれねねねばばば御御おん賀賀がののの響響ひびきもももしづまりしづまりしずまりぬぬぬ。。。かのかのかの院院いんよりよりよりもももかくかくかく煩煩わずらひひい給給たまふふうよしよしよし聞聞きこししし召召めしししててて、、、御御おんとぶらひとぶらひとぶらいいといといとねんごろねんごろねんごろにににたびたびたびたびたびたび聞聞きこえええ給給たまふふう。。。同同おなじじじさまさまさまにてにてにて二二きさら月月ぎももも過過すぎぎぎぬぬぬ。。。いふいふいうかぎりかぎりかぎりなくなくなくおぼしおぼしおぼし歎歎なげきききててて試試こころみににに所所ところをををかへかへかへ給給たまははわむむんとてとてとて二二に條條じょう院院いんににに渡渡わたししし奉奉たてまつりりり給給たまひひいつつつ。。。
現代語訳
対の屋では、源氏がいらっしゃらない夜はいつものように夜更かしをなさって、女房たちに物語などを読ませてお聞きになる。「このように世の例として言い集めた昔物語にも、浮気な男、色好み、二心のある男に関わった女、このようなことを言い集めたものにも、最後には頼る所があるようだ。私は不思議と浮いたまま過ごしてきたことよ。なるほど院のおっしゃったように、人より格別な宿縁もあった身ではあるが、人が耐えがたく、満たされないこととする物思いから離れられない身で終わってしまうのだろうか。情けないことよ」などと思い続けて、夜が更けてお休みになった明け方から、お胸をお病みになる。女房たちがお世話申し上げて、「お知らせ申し上げましょう」と申し上げるのを、紫の上は「たいそう不都合なこと」とお止めになって、耐えがたいのを抑えて夜を明かしなさった。お体も熱くなって、ご気分もたいそう悪いけれど、院(源氏)もすぐにはお戻りにならない間は、こうだともお知らせしない。女御の御方からお便りがあったので、「このように具合が悪くて」とお返事申し上げなさったので、女御が驚いて、そちらから源氏に申し上げなさると、源氏は胸がつぶれる思いで、急いでお戻りになると、紫の上はたいそう苦しそうにしていらっしゃる。
「どんなご気分なのか」と言ってお体をお探りになると、たいそう熱くていらっしゃるので、昨日申し上げなさった、厄年のお慎みのことなどを思い合わせなさって、たいそう恐ろしくお思いになる。お粥などをこちらに差し上げたけれど、目もおくれにならない。源氏は一日中付き添っていらっしゃって、何かとお世話してお嘆きになる。ちょっとした果物さえ、たいそうおっくうがりなさって、起き上がりなさることもなくなって、日数が過ぎた。どうなるだろうかとお騒ぎになって、御祈祷を数知れず始めさせなさる。僧を呼んで御加持などをおさせになる。どこともなく、ひどく苦しみなさって、胸は時々発作が起こってお苦しみになる様子は、耐えがたく苦しそうである。さまざまのお慎みは限りないけれど、効き目も見えない。重いと見ても、自然と快方に向かうきざしがあれば頼もしいのだが、たいそう心細く悲しいと拝見なさるので、ほかのことはお考えになれないので、御賀の騒ぎも静まってしまった。あの院(朱雀院)からも、このようにお患いになっていることをお聞きになって、お見舞いをたいそう丁重にたびたび申し上げなさる。同じ様子で二月も過ぎた。源氏は言いようもなくお嘆きになって、試しに場所を変えてみようと、二条院にお移し申し上げなさった。
意訳
紫の上は、物語の女たちと比べて自分の満たされない人生を思い、その明け方に胸を病む。
源氏は急いで戻り、祈祷を尽くすが効き目がなく、二月も過ぎ、紫の上を二条院に移す。
語釈・文法注
文法
- 「よひゐ」(よひゐし給ひて)
- 宵居。夜遅くまで起きていること。
- 「よる方」(遂による方ありてこそあめれ)
- 頼る所、落ち着く所。
- 「せいす」(とせいし給ひて)
- 制す。止める。
解説
紫の上が物語を聞きながら自分の人生を思う場面は、物語の中で物語が読まれる、印象的な場面である。物語の女たちは最後には頼る所があるのに、自分は「うきてもすぐしつる」と、紫の上は自分の人生の不確かさを嘆く。正妻ではない紫の上の立場の不安定さが、ここに凝縮されている。
紫の上の発病は、女楽の夜の直後、源氏が女三の宮のもとにいる夜に起こる。紫の上が苦しみをこらえて源氏に知らせないのは、源氏を宮のもとから呼び戻すことへの遠慮であり、紫の上の誇りでもある。この発病によって、物語は大きく動き始める。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、680–683頁(コマ51–52)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日