源氏物語 第35帖 若菜下(14)
女楽の支度
源氏は、来月になると賀の準備で騒がしくなり、合奏の音も試楽めいて人に言われるだろうから、静かな今のうちに試みようと、紫の上を寝殿に移す。女房たちは皆ついて行きたがるが、源氏は年配でたしなみのある者だけを選ぶ。紫の上の童女は、赤色に桜の汗衫など華やかに装わせ、明石の女御方も、明石の君方も、女三の宮方も、それぞれ童女の装いに趣向をこらす。廂の間の襖を外し、几帳で仕切って、中の間に源氏の座を設ける。拍子合わせには童を呼び、鬚黒の三男に笙の笛を、夕霧の長男に横笛を吹かせる。明石の君に琵琶、紫の上に和琴、女御に箏の琴、宮には大げさな琴は弾きこなせないかと危ぶんで、いつも弾き慣れた琴を調えて渡す。源氏は、箏の琴は合奏の折に琴柱が乱れやすいので、夕霧に調弦させようと呼ぶ。女君たちは夕霧に聞かれるのを恥ずかしく思う。源氏は、明石の君以外は皆自分の弟子なので、夕霧に聞かれて恥ずかしくないようにと気を配る。女御は帝の前でもいつも合奏しているので安心だが、和琴は決まった型がなく、女には難しいので、紫の上が乱れはしないかと気の毒に思う。

- 1「「「月月つきたゝたゝたたばばば御御おんいそぎいそぎいそぎ近近ちかくくく物物もの騷騷さわがしからがしからがしからむむんにににかきかきかきあはせあはせあわせ給給たまははわむむん御御おん琴琴ことのののねねねもももしがくしがくしがくめきめきめきててて人人ひとのののいひいひいいなさなさなさむむんををを、、、このこのこのころころころ靜靜しずかなるなるなるほどほどほどににに試試こころみみみ給給たまへへえ」」」とてとてとてしんしんしん殿殿でんにににわたしわたしわたし奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。御御おん供供ともにににわれわれわれもももわれわれわれもももととと物物ものゆかしがりゆかしがりゆかしがりてててまうまうもう上上のぼらららまほしがれまほしがれまほしがれどどどこなたこなたこなたににに遠遠とおきききをををばばばえりえりえりとゞめとゞめとどめさせさせさせ給給たまひひいててて少少すこしししねびねびねびたれたれたれどどどよしよしよしあるあるあるかぎりかぎりかぎりえりえりえりてててさぶらはさぶらはさぶらわせせせ給給たまふふう。。。わらはわらはわらわべべべはははかたちかたちかたちすぐれすぐれすぐれたるたるたる四四よ人人たり赤赤あか色色いろににに櫻櫻さくらのののかざみかざみかざみ薄薄うす色色いろののの織織おり物物もののののあこめあこめあこめうきうきうきもんもんもんのののうへうへうえののの袴袴はかま、、、紅紅くれないのののうちうちうちたるたるたるさまさまさまもてなしもてなしもてなしすぐれすぐれすぐれたるたるたるかぎりかぎりかぎりををを召召めしししたりたりたり。。。女御女御にょうごののの御御おん方方かたにににももも御御おんしつらひしつらひしつらいなどなどなどいとゞいとゞいとど改改あらたまれれれるるる比比ころののの曇曇くもりりりなきなきなきにににおのおのおのおのおのおのいどましくいどましくいどましく盡盡つくしししたるたるたるよそひよそひよそいどもどもどもあざやかあざやかあざやかににに二二になしなしなし。。。童童わらわははは靑靑あお色色いろにににすあうすあうすおうのののかざみかざみかざみ、、、からからからあやあやあやのののうへうへうえののの袴袴はかま、、、あこめあこめあこめははは山山やま吹吹ぶきなるなるなるからからからのののきききををを同同おなじじじさまさまさまににに整整ととのへへえたりたりたり。。。明明あか石石しののの御御おん方方かたのののはははことごとしからことごとしからことごとしからででで紅紅こう梅梅ばいふたりふたりふたり櫻櫻さくらふたりふたりふたり、、、あをしあをしあおしのののかぎりかぎりかぎりにてにてにてあこめあこめあこめ濃濃こくくく薄薄うすくくくうちうちうちめめめなどなどなどえええならならならででで着着きせせせ給給たまへへえりりり。。。宮宮みやののの御御おん方方かたにににもももかくかくかくつどひつどひつどい給給たまふふうべくべくべく聞聞ききききたまひたまひたまいてててわらはわらはわらわべべべののの姿姿すがたばかりばかりばかりははは殊殊ことにににつくろはつくろはつくろわせせせ給給たまへへえりりり。。。あをあをあおにににににに柳柳やなぎのののかざみかざみかざみ、、、えびぞめえびぞめえびぞめののの袖袖そでなどなどなど殊殊ことにににこのましくこのましくこのましく珍珍めずららしきらしきらしきさまさまさまにににはははあらあらあらねねねどどど大方大方おおかたのののけはひけはひけわいのののいかめしくいかめしくいかめしく氣氣け高高だかきききことことことさささいへいへいえどどどならびならびならびなしなしなし。。。ひさしひさしひさしののの中中なかののの御御おんさうじさうじそうじをををはなちはなちはなちてててこなたこなたこなたかなたかなたかなた御御み几几き帳帳ちょうばかりばかりばかりをををけぢめけぢめけじめにてにてにて中中なかののの間間まははは院院いんのののおはしますおはしますおわしますべきべきべきおましおましおましよそひよそひよそいたりたりたり。。。
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現代語訳
源氏は、「月が改まったら、御賀の準備が近づいて騒がしくなるだろうから、合奏なさる御琴の音も試楽めいて人が取り沙汰するだろう。この頃の静かな時に試してごらんなさい」と言って、紫の上を寝殿にお移し申し上げなさる。お供に我も我もと、物見をしたがって参上したがるけれど、源氏は、こちらの音楽に疎い者は選び残させなさって、少し年はとっているが、たしなみのある者だけを選んでお仕えさせなさる。童女は、容貌の優れた四人を、赤色の上衣に桜の汗衫、薄色の織物の衵、浮紋の表袴、紅の打衣を着せて、様子や振る舞いの優れた者だけをお召しになった。女御の御方でも、御設えなどがいっそう改まった頃の晴れやかな時なので、それぞれ競い合って尽くした装いは、鮮やかで比べるものがない。童女は、青色の上衣に蘇芳の汗衫、唐綾の表袴、衵は山吹色の唐の綺を、同じようにそろえていた。明石の御方の童女は、仰々しくなくて、紅梅襲を二人、桜襲を二人、青磁色ばかりにして、衵の濃い薄い、打目など、何ともいえず見事に着せていらっしゃった。宮の御方でも、このように皆様がお集まりになると聞きなさって、童女の姿だけは特に整えさせなさった。青丹の上衣に柳の汗衫、葡萄染の衵の袖など、特に好ましく珍しい様子ではないけれど、全体の雰囲気が威厳があって気高いことは、そうはいっても並ぶものがない。廂の間の中の御襖を外して、あちらこちら御几帳だけを仕切りにして、中の間には院(源氏)がいらっしゃるはずの御座所を設えてある。
今日の拍子合わせには童を呼ぼうということで、右大臣(鬚黒)の三男で、尚侍の君(玉鬘)のお腹の兄君に笙の笛を、左大将(夕霧)のご長男に横笛を吹かせて、簀子にお控えさせなさる。御簾の内には御褥を並べて、御琴類を一通りお配りする。秘蔵していらっしゃる御琴類で、立派な紺地の袋などに入れてあるのを取り出して、明石の御方に琵琶、紫の上に和琴、女御の君に箏の御琴、宮には、このように大げさな琴はまだお弾きになれないのではないかと危ぶまれて、いつもお弾き慣れになっている琴を調弦して差し上げなさる。源氏は、「箏の御琴は、弦がゆるむことはないけれど、やはりこのように他の楽器と合わせる折の調子によって、琴柱の位置が乱れるものだ。よくその心づかいをして整えるべきなのに、女性はしっかりと張りきることができないだろうから、やはり大将を呼び寄せるのがよいだろう。この笛吹きたちはまだたいそう幼くて、拍子を整えるには頼りにならない」とお笑いになって、「大将、こちらへ」とお呼びになると、御方々は恥ずかしく、気を遣っていらっしゃる。明石の君をのぞいては、どなたも皆、捨てがたいご自分の御弟子たちなので、源氏はお心を配って、大将がお聞きになるのに難がないようにとお思いになる。女御は、いつも帝がお聞きになる時にも、他の楽器と合わせながら弾き慣れていらっしゃるので安心だが、和琴こそ、たいした調べではないものの、決まった型がなくて、かえって女性はとまどうに違いない。春の琴の音は、皆と掻き合わせるものなので、紫の上が乱れるところもあるのではないかと、何となく気の毒にお思いになる。
意訳
源氏は静かなうちに女楽を試みようと紫の上を寝殿に移し、女君たちの童女も華やかに装う。
明石の君に琵琶、紫の上に和琴、女御に箏、宮に琴が配られ、源氏は夕霧を呼んで箏の調弦をさせる。
語釈・文法注
文法
- 「しがく」(御琴のねもしがくめきて)
- 試楽。本番の前に行う予行演習。
- 「かざみ」(赤色に櫻のかざみ)
- 汗衫。童女が表に着る、裾の長い衣。
- 「ことぢ」(ことぢのたちど亂るゝものなり)
- 琴柱。箏などの弦を支えて音の高さを調える小さな柱。
解説
女楽の準備は、六条院の女君たちの華やかさを示すものである。それぞれの童女の装いの描き分けは、紫の上、明石の女御、明石の君、女三の宮の個性と立場を反映している。宮の方は「珍らしきさまにはあらねど」、皇女としての気高さで並ぶものがない。
楽器の割り当ても意味深い。明石の君の琵琶は明石の巻以来の得意の楽器、紫の上の和琴は日本の楽器、女御の箏は宮中で弾き慣れた楽器、宮の琴は源氏から伝えられた難しい楽器である。源氏は紫の上の和琴を案じるが、次の場面で、その心配は杞憂に終わる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、666–669頁(コマ44–45)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日