源氏物語 第35帖 若菜下(11)
朱雀院の賀の準備
朱雀院は、死期が近いような心細さから、この世のことは顧みまいと思うが、女三の宮にもう一度会いたい、恨みが残ってはいけないので、大げさでない形で来てほしいと源氏に伝える。源氏ももっともだと思い、宮を院のもとに参上させる準備をする。ただ訪ねるのではなく、何かの催しをして院にお見せしようと考え、院が五十歳になる年なので、若菜を献上して賀を祝うことにする。法服や精進の料理などの準備を、女君たちが心を尽くして整える。院は昔から音楽を好んでいたので、舞人や楽人も優れた者を選ぶ。鬚黒の子ども二人、夕霧の子三人、蛍兵部卿宮の孫王など、七歳以上の子どもたちを殿上させて舞わせることにし、殿上の君達も容姿のよい者を選んで、多くの舞の準備をする。

- 1朱朱す雀雀ざく院院いんののの今今いまはははむげむげむげににに世世よ近近ちかくくくなりなりなりぬるぬるぬる心地心地ここちしししててて物物もの心心こころぼそきぼそきぼそきををを更更さらにににこのこのこの世世よののの事事こと顧顧かえりみみみじじじととと思思おもひひい捨捨すつれつれつれどどど、、、對對たい面面めんなむなむなん今今いま一一ひと度度たびあらあらあらまほしきまほしきまほしきををを、、、もしもしもしうらみうらみうらみのこりのこりのこりもももこそこそこそすれすれすれ、、、ことごとしきことごとしきことごとしきさまさまさまならならならででで渡渡わたりりり給給たまふふうべくべくべく聞聞きこえええ給給たまひひいけれけれければばば、、、おとゞおとゞおとどもももげにげにげにさるべきさるべきさるべきことことことなりなりなり、、、かゝるかゝるかかる御御おん氣色氣色けしきなからなからなからむむんにてにてにてだにだにだに進進すすみみみ參參まいりりり給給たまふふうべきべきべきをををましてましてましてかうかうこうまちまちまち聞聞きこえええ給給たまひひいけるけるけるががが心苦心苦こころぐるしきしきしきことことことゝゝと參參まいりりり給給たまふふうべきべきべき事事ことおぼしおぼしおぼしまうくまうくもうく。。。ついでついでついでなくなくなくすまじきすまじきすまじきさまさまさまにてにてにてやはやはやははひはひはいわたりわたりわたり給給たまふふうべきべきべき、、、なになになにわざわざわざをををしししてててかかか御覽御覽ごらんぜぜぜさせさせさせ給給たまふふうべきべきべきとととおぼしおぼしおぼしめぐらすめぐらすめぐらす。。。このこのこのたびたびたびたりたりたり給給たまははわむむん年年とし若若わか菜菜ななどなどなどてうじてうじちょうじてててやややとととおぼしおぼしおぼしてててさまざまさまざまさまざまののの御御おん法法ほう服服ぶくのののことことこと、、、いもひいもひいもいののの御御おんまうけまうけもうけのののしつらひしつらひしつらい何何なにくれくれくれとととさまさまさまことことことににに變變かわれれれるるる事事ことどもどもどもなれなれなればばば、、、人人ひとののの御御おん心心こころしらひしらひしらいどもどもども入入いりりりつゝつゝつつおぼしおぼしおぼしめぐらすめぐらすめぐらす。。。いにしへいにしへいにしえももも遊遊あそびびびののの方方かたににに御心御心みこころ留留とどめめめさせさせさせ給給たまへへえりりりしかしかしかばばばまひまひまいびとびとびと樂樂がく人人にんなどなどなどををを、、、心心こころことことことににに定定さだめめめすぐれすぐれすぐれたるたるたるかぎりかぎりかぎりををを整整ととのへへえさせさせさせ給給たまふふう。。。
- 2右右みぎ大大おおい殿殿どのののの御御み子子こどもどもどもふたりふたりふたり、、、大大だい將將しょうののの御御み子子こないないないしししのののすけすけすけばらばらばらののの加加くわへへえててて三三み人人たり、、、又又またちひさきちひさきちいさき七七ななつつつよりよりよりかみかみかみのののははは皆皆みな殿上殿上てんじょうせせせさせさせさせ給給たまふふう兵兵ひょう部部ぶ卿卿きょうののの宮宮みやのののわらはわらはわらわそんわうそんわうそんおうすべてすべてすべてさるべきさるべきさるべき宮宮みや達達たちののの御御み子子こどもどもども、、、家家いえのののこのこのこの君君きん達達だち皆皆みなえらびえらびえらび出出いででで給給たまふふう。。。殿上殿上てんじょうののの君君きん達達だちもももかたちかたちかたちよくよくよく同同おなじきじきじき舞舞まいののの姿姿すがたももも心心こころことことことなるなるなるべきべきべきををを定定さだめめめててて數數あま多多たののの舞舞まいのののまうけまうけもうけをををせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。いみじかるいみじかるいみじかるべきべきべきたびたびたびのののことことことゝゝとてててみなみなみなひとひとひと心心こころををを盡盡つくししし給給たまひひいてててなむなむなん。。。
現代語訳
朱雀院は、今はひどく死期が近くなったような気がして、何となく心細いので、もうこの世のことは顧みまいと思い捨てていらっしゃるけれど、女三の宮との対面だけはもう一度したいので、もしも恨みが残ったら困るから、大げさな形でなくお越しになるようにと申し上げなさったので、大臣(源氏)も、「なるほど、そうあるべきことだ。このようなご意向がなくてさえ、進んで参上なさるべきなのに、まして、このようにお待ち申し上げていらっしゃったのはお気の毒なことだ」と、宮が参上なさるべきことをお考えになる。「何のきっかけもなく、何の催しもないような様子で、そっと参上なさってよいものか。どんなことをしてご覧に入れたらよいだろう」とお思いめぐらしになる。「院がこの度、五十歳におなりになる年に、若菜などを調えて差し上げようか」とお思いになって、さまざまの御法服のことや、精進の御料理の準備、設えなど、何やかやと普通とは違ったことなので、女君たちのお心づかいも加わりながら、お思いめぐらしになる。院は昔も音楽の方面にお心を留めていらっしゃったので、舞人や楽人などを、格別に選定して、優れた者だけをおそろえになる。
右大臣(鬚黒)の御子二人、大将(夕霧)の御子は典侍腹の子を加えて三人、また小さい子でも七歳以上の者は皆、殿上させなさる。兵部卿の宮の童の孫王、すべてしかるべき宮たちの御子たち、良家の子弟たちも、皆選び出しなさる。殿上の君達も、容貌がよく、同じ舞の姿も格別であるはずの者を定めて、たくさんの舞の準備をおさせになる。たいそうすばらしいはずの催しのことだからと、皆が心を尽くしなさって。
意訳
朱雀院は女三の宮にもう一度会いたいと願い、源氏は院の五十の賀を催して宮を参上させることにする。
源氏は法服や精進料理を整え、良家の子どもたちに舞を習わせて、賀の準備を進める。
語釈・文法注
文法
- 懸念の「もこそ」(もしうらみのこりもこそすれ)
- 「…すると困る」という懸念。「もし恨みが残ったら困る」。
- 反語の「やは…べき」(ついでなくすまじきさまにてやははひわたり給ふべき)
- 「何のきっかけもない様子で、そっと参上なさってよいものか、いや、よくない」。
- 「そんわう」(兵部卿の宮のわらはそんわう)
- 孫王。親王の子で、まだ王号を賜っていない者。
解説
朱雀院が女三の宮に会いたいと願うのは、自分の死期を悟ってのことである。源氏は院の五十の賀を催すことにするが、この賀は、女三の宮の懐妊や紫の上の発病などによって、何度も延期されることになる。
源氏が良家の子どもたちに舞を習わせる準備は、若菜上の巻の源氏の四十の賀を思わせる。しかし今度の賀は、華やかな準備の裏で、柏木と女三の宮の密通という深刻な事態が進んでいく中で行われることになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、664–665頁(コマ43)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日