源氏物語 第35帖 若菜下(10)
女三の宮の二品
出家した朱雀院は勤行に励み、帝のことにも口を出さないが、女三の宮のことだけは思い放てず、源氏を後見と頼み、帝にも宮を気にかけるよう頼む。女三の宮は二品に叙せられ、ますます華やかになる。紫の上は、宮の声望が年々高まるのを見て、自分は源氏ひとりの寵愛に頼るだけで、年を取ればその心も衰えるだろう、そうなる前に自分から世を捨てたいと思い続けるが、賢しげに思われるのをはばかって、はっきりとは言い出せない。帝も宮を気にかけているので、源氏は宮のもとへ通うことが次第に紫の上と等しくなる。紫の上は、当然とは思いながらも心穏やかでないが、表面は変わらず過ごす。紫の上は、東宮の妹の女一の宮を引き取って育て、源氏の来ない夜の寂しさを慰める。花散里も、夕霧と藤典侍の間の子を迎えて育て、源氏もかわいがる。源氏は、少ないと思っていた子孫が増えたのを慰めとする。鬚黒も六条院に親しく出入りし、玉鬘も紫の上と親しく交わる。ただ女三の宮だけが、変わらず幼いままで、明石の女御は宮を幼い娘のように世話をする。

- 1入入にゅう道道どうのののみかどみかどみかどはははおこなひおこなひおこないをををいみじくいみじくいみじくししし給給たまひひいてててうちうちうちののの御御おん事事ことをををももも聞聞きききき入入いれれれ給給たまははわずずず、、、春春はる秋秋あきののの行行ぎょう幸幸こうににになむなむなん昔昔むかし思思おもひひい出出いでででられられられ給給たまふふうことことこともももまじりまじりまじりけるけるける。。。姫姫ひめ宮宮みやののの御御おん事事ことをををのみのみのみぞぞぞ猶猶なおえええおぼしおぼしおぼしはなたはなたはなたでででこのこのこの院院いんをををばばば猶猶なお大方大方おおかたののの御御おんうしろみうしろみうしろみににに思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまひひいてててうちうちうちうちうちうちののの御御おん心心こころよせよせよせあるあるあるべくべくべくそうそうそうせせせさせさせさせ給給たまふふう。。。二二に品品ほんににになりなりなり給給たまひひいてててみふみふみふなどなどなどまさるまさるまさる、、、いよいよいよいよいよいよ花花はなやかやかやかににに御御おん勢勢いきおいそふそふそう。。。對對たいののの上上うえかくかくかく年年とし月月つきにににそへそへそえてててかたがたかたがたかたがたにににまさりまさりまさり給給たまふふう御御おんおぼえおぼえおぼえににに我我わががが身身みはははたゞたゞただ一一ひと所所ところののの御御おんもてなしもてなしもてなしににに人人ひとにににははは劣劣おとらららねねねどどどあまりあまりあまり年年とし積積つもりりりなななばばばそのそのその御御おん心心こころばへばへばえももも遂遂ついににに衰衰おとろへへえなむなむなん。。。さらさらさらむむん世世よををを見見みはてはてはてぬぬぬさきさきさきににに心心こころととと背背そむきききにににしがなしがなしがなとととたゆみたゆみたゆみなくなくなくおぼしおぼしおぼしわたれわたれわたれどどどさかしきさかしきさかしきやうやうようにににやややおぼさおぼさおぼさむむんとととつゝまつゝまつつまれれれててて、、、はかばかしくはかばかしくはかばかしくもももえええ聞聞きこえええ給給たまははわずずず。。。うちうちうちのののみかどみかどみかどさへさへさへ御御おん心心こころよせよせよせことことことににに聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、おろかおろかおろかににに聞聞きかかかれれれ奉奉たてまつらららむむんもももいとほしくいとほしくいとおしくててて渡渡わたりりり給給たまふふう事事ことやうやうやうやうようようひとしきひとしきひとしきやうやうようににになりなりなりゆくゆくゆく。。。さるべきさるべきさるべき事事ことことわりことわりことわりとととははは思思おもひひいながらながらながら、、、さればよさればよさればよとととのみのみのみ安安やすからからからずずずおぼさおぼさおぼされれれけれけれけれどどど猶猶なおつれなくつれなくつれなく同同おなじじじさまさまさまにてにてにて過過すぐししし給給たまふふう。。。
- 2春宮春宮とうぐうののの御御おんさしさしさしつぎつぎつぎののの女女おんな一一いちののの宮宮みやをををこなたこなたこなたににに取取とりりりわきわきわきてててかしづきかしづきかしずき奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。そのそのその御御おんあつかひあつかひあつかいににになむなむなんつれづれつれづれつれずれなるなるなる御御おんよよよがれがれがれのののほどほどほどももも慰慰なぐさめめめ給給たまひひいけるけるける。。。いづれいづれいずれもももわかわかわかずずずうつくしくうつくしくうつくしく悲悲かなしししととと思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。夏夏なつののの御御おん方方かたはははかくかくかくとりどりとりどりとりどりなるなるなる御御おんうまごうまごうまごあつかひあつかひあつかいををを羨羨うらやみみみててて大大だい將將しょうののの君君きみのののないないないしししのののすけすけすけばらばらばらののの君君きみををを切切せちににに迎迎むかへへえてててぞぞぞかしづきかしづきかしずき給給たまふふう。。。いといといとをかしげをかしげおかしげにてにてにて心心こころばへばへばえもももほどほどほどよりよりよりはははざれざれざれおよすげおよすげおよすげたれたれたればばばおとゞおとゞおとどののの君君きみもももらうたがりらうたがりろうたがり給給たまふふう。。。少少すくなきなきなき御御おんつぎつぎつぎとととおぼしゝおぼしゝおぼししかかかどどど末末すえにににひろごりひろごりひろごりてててこなたこなたこなたかなたかなたかなたいといといと多多おおくくくなりなりなり添添そひひい給給たまふふうををを今今いまははは唯唯ただこれこれこれをををうつくしみうつくしみうつくしみあつかひあつかひあつかい給給たまひひいてててぞぞぞつれづれつれづれつれずれもももなぐさめなぐさめなぐさめ給給たまひひいけるけるける。。。右右みぎののの大大おおとのとのとのののの參參まいりりり仕仕つかうまつりうまつりうまつり給給たまふふうことことこといにしへいにしへいにしえよりよりよりもももまさりまさりまさりててて、、、親親おやしくしくしく今今いまははは北北きたののの方方かたもももおとなびおとなびおとなびはてはてはてゝゝて、、、かのかのかの昔昔むかしのののかけがけしきかけがけしきかけがけしきすぢすぢすじ思思おもひひいはなれはなれはなれ給給たまふふうにににややや、、、さるべきさるべきさるべき折折おりもももわたりわたりわたり給給たまひひいつゝつゝつつ對對たいののの上上うえにににももも御御おん對對たい面面めんありありありててて、、、あらまほしくあらまほしくあらまほしく聞聞きこえええかはしかはしかわし給給たまひひいけりけりけり。。。姫姫ひめ宮宮みやのみのみのみぞぞぞ同同おなじじじさまさまさまににに若若わかくくくおほどきおほどきおおどきててておはしますおはしますおわします。。。女御女御にょうごののの君君きみははは今今いまはははおほやけおほやけおおやけざまざまざまににに思思おもひひいはなちはなちはなち聞聞きこえええ給給たまひひいてててこのこのこの宮宮みやをををばばばいといといと心苦心苦こころぐるしくしくしく幼幼おさなからからからむむん御御おんむすめむすめむすめのののやうやうようににに思思おもひひいはぐゝみはぐゝみはぐくみ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
現代語訳
入道の帝(朱雀院)は、勤行をたいそう熱心になさって、帝の御事にも口出しなさらず、春秋の行幸の折に、昔を思い出されることもまじるのだった。姫宮のことだけは、やはり思い放つことがおできにならず、この院(源氏)をやはり一通りのご後見とお思い申し上げなさって、帝にも内々に心を寄せていただくよう奏上なさる。宮は二品におなりになって、御封なども増え、いよいよ華やかにご威勢が加わる。対の上(紫の上)は、このように年月とともに何かとまさっていかれる宮のご声望に対して、「自分はただ院お一人のお扱いに頼るだけで、人には劣らないけれど、あまり年を取ってしまったら、そのお心も最後には衰えるだろう。そうなる世を見届けないうちに、自分から世を捨てたい」と、絶えずお思い続けになるけれど、賢しげに源氏がお思いになるだろうかと遠慮されて、はっきりとも申し上げることがおできにならない。今の帝までも宮に格別にお心を寄せ申し上げなさるので、源氏も、宮をおろそかにしていると帝のお耳に入るのも気の毒で、お通いになることが、だんだん紫の上と等しいようになっていく。紫の上は、そうなるべきことで当然だとは思いながら、「やはりそうなった」とばかり心穏やかでなくお思いになったけれど、やはり平然と、同じ様子でお過ごしになる。
紫の上は、東宮のすぐ下の妹の女一の宮を、こちらで取り分けて大切にお育て申し上げなさる。そのお世話で、源氏の来ない退屈な夜々の寂しさも慰めなさった。どの孫も分け隔てなく、かわいらしくいとしいとお思い申し上げていらっしゃる。夏の御方(花散里)は、このようにそれぞれの御孫のお世話をうらやんで、大将の君(夕霧)の、典侍腹の子を熱心に迎えてお育てになる。たいそうかわいらしくて、気立ても年のわりにはしゃれていて大人びているので、大臣の君(源氏)もかわいがりなさる。少ない跡継ぎとお思いになっていたけれど、末の代に広がって、あちらこちらにたいそう多く増えていかれるので、今はただこの孫たちをかわいがってお世話なさって、退屈も慰めていらっしゃった。右大臣(鬚黒)が参上してお仕えなさることは昔よりもまさって、親しくなり、今は北の方(玉鬘)もすっかり大人びて、あの昔の色めいた筋のことは思い離れなさったのであろうか、しかるべき折にもお越しになりながら、対の上ともご対面があって、申し分なく親しく交わっていらっしゃった。姫宮だけが、同じように若くおっとりしていらっしゃる。女御の君(明石の女御)は、今は帝のことは公のこととしてお任せ申し上げて、この宮を、たいそう気の毒に、幼い御娘のように思って、お世話申し上げなさる。
意訳
女三の宮は二品となって声望が高まり、紫の上は、源氏の寵愛が衰える前に出家したいと思い続けるが、言い出せない。
源氏の宮への通いが紫の上と等しくなり、紫の上は女一の宮を育てて寂しさを慰める。
語釈・文法注
文法
- 願望の「にしがな」(心と背きにしがな)
- 完了の「ぬ」の連用形+願望の「しがな」。「自分から世を背いてしまいたい」。
- 「よがれ」(つれづれなる御よがれのほども)
- 夜離れ。男が女のもとに通わない夜。
- 「二品」(二品になり給ひて)
- 親王・内親王の位の第二等。
解説
女三の宮が二品に叙せられ、源氏の通いが紫の上と等しくなったことで、紫の上は正妻ではない自分の立場を改めて思い知る。「あまり年積りなばその御心ばへも遂に衰へなむ」という不安は、紫の上の孤独の深まりを示している。
紫の上は、子のない寂しさを女一の宮の養育で慰める。かつて明石の姫君を育てたように、紫の上は今度は孫を育てる。紫の上の母性的な愛情は、六条院の女君たちの中でも際立っている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、662–665頁(コマ42–43)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日