源氏物語 第35帖 若菜下(1)
柏木の嘆きと弓の会
小侍従の返事はもっともだと思いながらも、柏木は、このようなありふれた返事ばかりを慰めにしてはいられない、人づてではなく一言でも宮と言葉を交わせる時はないものかと思い、尊敬する源氏に対しても、ゆがんだ心が生まれてくる。三月の末、六条院で弓の会が催され、柏木も花を見て心を慰めようと参上する。夕霧と柏木が加わって、夕暮れまで競い合うが、柏木はひどく物思いに沈んでいて、事情を知る夕霧は、面倒なことが起こりそうだと案じる。柏木は、源氏の前に出ると恐ろしく気後れし、このような心を持つべきではないと思うが、せめてあの猫だけでも手に入れたいと思う。柏木は女御のもとを訪れるが、女御は奥ゆかしく打ち解けない。東宮のもとに参ると、東宮は女三の宮と似通ったところがあるかと思って見つめる。

- 1ことわりことわりことわりととと思思おもへへえどどどうれたくうれたくうれたくもももいへいへいえるるるかなかなかな、、、いでやいでやいでやなぞなぞなぞかくかくかく異異ことなるなるなる事事ことなきなきなきあへしらひあへしらひあえしらいばかりばかりばかりをををなぐさめなぐさめなぐさめにてにてにてははは、、、いかゞいかゞいかがすぐさすぐさすぐさむむん、、、かゝるかゝるかかる人人ひとづてづてずてならならならでででひとひとひとことことことをををももものたまひのたまひのたまい聞聞きこゆるゆるゆる世世よありありありなむなむなんやややととと、、、思思おもふふうにににつけつけつけてててももも大方大方おおかたにてにてにてははは惜惜おしくしくしくめでたしめでたしめでたしととと思思おもひひい聞聞きこゆるゆるゆる院院いんののの御御おんためためためなまなまなまゆがむゆがむゆがむ心心こころやややそひそひそいにににたらたらたらむむん。。。つごもりつごもりつごもりののの日日ひははは人々人々ひとびと數數あま多多た參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。なまなまなまものうくものうくものうくすゞろはしけれすゞろはしけれすずろわしけれどどど、、、そのそのそのあたりあたりあたりののの花花はなののの色色いろをををももも見見みてててややや慰慰なぐさむむむととと思思おもひひいててて參參まいりりり給給たまふふう。。。殿上殿上てんじょうののののりのりのりゆみゆみゆみ二二きさら月月ぎとととありありありしししををを過過すぎぎぎててて三三やよ月月いはははたたた御御おんききき月月ずきなれなれなればばば口惜口惜くちおしししととと人々人々ひとびと思思おもふふうににに、、、このこのこの院院いんにににかゝるかゝるかかるまとゐまとゐまといあるあるあるべしべしべしととと聞聞きききき傳傳つたへへえててて例例れいのののつどひつどひつどい給給たまふふう。。。左左さ右右ゆう大大だい將將しょうさるさるさる御御おんなからひなからひなからいにてにてにて參參まいりりり給給たまへへえばばばすけすけすけたちたちたちなどなどなどいどみいどみいどみかはしかはしかわしててて、、、小小こ弓弓ゆみとととのたまひのたまひのたまいしかしかしかどどどかちかちかちゆみゆみゆみののの勝勝すぐれれれたるたるたる上上じょうずずずどもどもどもありありありけれけれければばば召召めししし出出いでででゝゝて射射いさせさせさせ給給たまふふう殿上人殿上人てんじょうびとどもどもどもゝゝもつきづきしきつきづきしきつきずきしきかぎりかぎりかぎりははは皆皆みなまへまへまえしりへしりへしりえののの心心こころこまどりこまどりこまどりにににかたかたかたわきわきわきててて、、、暮暮くれれれゆくゆくゆくまゝまゝままににに今今け日日きょうにににとぢむるとぢむるとじむる霞霞かすみののの氣色氣色けしきもももあわたゞしくあわたゞしくあわただしく、、、亂亂みだるゝるゝるる夕夕ゆう風風かぜににに花花はなのののかげかげかげいとゞいとゞいとど立立たつつつことことことやすからやすからやすからずずず。。。
- 2人々人々ひとびといたくいたくいたくゑひゑひえいすぎすぎすぎ給給たまひひいてててえんえんえんなるなるなるかけかけかけものものものどもどもどもこなたこなたこなたかなたかなたかなた人々人々ひとびとののの御心御心みこころ見見みえええぬぬぬべきべきべきををを、、、柳柳やなぎののの葉葉はをををもゝもゝももたびたびたびあてあてあてつつつべきべきべきとねりとねりとねりどもどもどものののうけばりうけばりうけばりててていといといとるむじんるむじんるむじんなりなりなりややや。。。すこしすこしすこしこゝしきこゝしきここしき手手てつきつきつきどもどもどもをををこそこそこそいどまいどまいどませせせめめめとてとてとて、、、大大だい將將しょうだちだちだちよりよりより始始はじめめめててておりおりおり給給たまふふうににに、、、衛衛え門門もんののの督督かみ人人ひとよりよりよりけにけにけにながめながめながめをををしししつゝつゝつつ物物ものししし給給たまへへえばばば、、、かのかのかのかたかたかたはしはしはし心心こころ知知しれれれるるる御御おんめめめにににははは見見みつけつけつけつゝつゝつつなほなほなおいといといとけしきけしきけしきことことことなりなりなり煩煩わずらしきしきしきことことこと出出いででで來來きべきべきべきよよよにににやややあらあらあらむむんととと我我わさへさへさへ思思おもひひいつきつきつきぬるぬるぬるこゝちこゝちここちすすす。。。このこのこの君君きん達達だち御御おん中中なかいといといとよしよしよしさるさるさるなからひなからひなからいととといふいふいう中中なかにににももも心心こころかはしかはしかはしてててねんごろねんごろねんごろなれなれなればばばはかなきはかなきはかなきことことことにてにてにてももも物思物思ものおもはしくはしくわしくうちうちうち紛紛まぎるゝるゝるることことことあらあらあらむむんをををいとほしくいとほしくいとおしく覺覺おぼえええ給給たまふふう。。。
- 3みづからみづからみずからもももおとゞおとゞおとどををを見見み奉奉たてまつるるるにににけけけおそろしくおそろしくおそろしくまばゆくまばゆくまばゆくかゝるかゝるかかる心心こころはははあるあるあるべきべきべきものものものかかか、、、なのめなのめなのめならならならむむんにてにてにてだにだにだにけしからけしからけしからずずず、、、人人ひとにににてんてんてんつかつかつかるるるべきべきべきふるまひふるまひふるまいはははせせせじじじととと思思おもふふうものものものををを、、、ましてましてましておほけなきおほけなきおおけなきことことことゝゝと思思おもひひいわびわびわびてててはははかのかのかのありありありししし猫猫ねこをををだにだにだにえええてててしがなしがなしがな、、、思思おもふふうことことこと語語かたらふらふらうべくべくべくはははあらあらあらねねねどどどかたはらかたはらかたわらさびしきさびしきさびしきなぐさめなぐさめなぐさめにににもももなつけなつけなつけむむんととと思思おもふふうににに、、、物物ものぐるほしうぐるほしうぐるおしゅういかでいかでいかでかはかはかは盜盜ぬすみみみ出出いでででむむんととと、、、それそれそれさへさへさへぞぞぞ難難かたきききことことことなりなりなりけるけるける。。。女御女御にょうごののの御御おん方方かたににに參參まいりりりててて物語物語ものがたりなどなどなど聞聞きこえええまぎらはしまぎらはしまぎらわし心心こころみみみるるる、、、いといといと奥奥おく深深ふかくくく心心こころはづかしきはづかしきわずかしき御御おんもてなしもてなしもてなしにてにてにてまほまほまほににに見見みえええ給給たまふふうことことこともももなしなしなしかゝるかゝるかかる御御おんなからひなからひなからいにににだにだにだにけけけどほくどほくどおくならひならひならいたるたるたるををを、、、ゆくりかゆくりかゆくりかににに怪怪あやしくしくしくはははありありありしししわざわざわざぞぞぞかしかしかしとととははは、、、さすがにさすがにさすがにうちうちうち覺覺おぼゆれゆれゆれどどど、、、おぼろげおぼろげおぼろげにににしめしめしめたるたるたる我我わががが心心こころからからから淺淺あさくくくももも思思おもひひいなさなさなされれれずずず。。。
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現代語訳
小侍従の返事はもっともだと思うけれど、柏木は、憎らしいことを言ったものだ、いやもう、どうしてこのように、ありきたりのあしらいばかりを慰めにして、どうして過ごしていられよう、このような人づてではなく、一言でもおっしゃり、申し上げる時があってほしいものだと思うにつけても、普段は惜しくすばらしいとお思い申し上げている院(源氏)に対して、何となくゆがんだ心が生じてしまったのであろうか。三月の末日には、人々が大勢参上なさった。柏木は、何となく気が進まず、落ち着かないけれど、あのあたりの花の色を見て心を慰めようかと思って参上なさる。殿上の賭弓は二月の予定だったのが過ぎて、三月はまた御忌月なので残念だと人々が思っていると、この院でこのような集まりがあるはずだと伝え聞いて、いつものように集まりなさる。左右の大将(鬚黒と夕霧)は、源氏の縁者としての間柄で参上なさるので、次官たちなども張り合って、小弓とおっしゃっていたが、歩弓の優れた名手たちがいたので、召し出して射させなさる。殿上人たちも、ふさわしい者は皆、前方と後方に心を分けて組に分かれ、暮れていくにつれて、今日で終わる春の霞の様子も慌ただしく、乱れる夕風に、花の陰からいよいよ立ち去りにくい。
人々はひどく酔いすぎなさって、「優雅な賭け物が、あちらこちらの方々のお心が見えるようなものなのに、柳の葉を百発百中で射当てるような舎人たちが、我が物顔で射取っていくのは、たいそう情けないことだ。もう少しおっとりした手つきの者たちを競わせよう」と言って、大将たちをはじめとして庭にお下りになると、衛門督(柏木)が人よりいっそう物思いに沈んでいらっしゃるので、あの一端の事情を知っている大将(夕霧)のお目には、それと見つけて、「やはりたいそう様子が違う。面倒なことが起こりそうな成り行きなのだろうか」と、自分までも思い込んでしまう気がする。この君達(夕霧と柏木)は、仲がたいそうよい。そのような親しい間柄という中でも、心を通わせて親密なので、ちょっとしたことでも、柏木が物思いに沈んで心が紛れるようなことがあるのを、夕霧は気の毒にお思いになる。
柏木自身も、大臣(源氏)を拝見すると、何となく恐ろしく、気後れして、「このような心は持ってよいものか。並々の身分のことでさえ、けしからず、人に非難されるような振る舞いはすまいと思っているのに、まして大それたことだ」と思い悩んでは、「せめてあの猫だけでも手に入れたいものだ。思うことを語り合えるわけではないが、そばの寂しさの慰めにも、手なずけよう」と思うにつけても、狂おしいほど、どうして盗み出そうかと思うが、それさえも難しいことであった。女御(明石の女御)の御方に参上して、お話などを申し上げて気を紛らわそうとしてみるが、たいそう奥深く、気後れするほどのおもてなしで、はっきりとお姿をお見せになることもない。このような姉弟のような間柄でさえ、隔てを置く習いであるのに、あれは思いがけない不思議なことだったよと、さすがに思われるけれど、並々でなく思い込んでしまった自分の心からは、浅いこととも思うことができない。
東宮に参上なさって、女三の宮と当然似通っていらっしゃるところがあるだろうと、目をとめて拝見すると、つややかな美しさなどはないご容貌だけれど、あれほどのご身分のご様子は、やはりたいそう格別で、上品で優美でいらっしゃる。
意訳
柏木は宮への思いを募らせ、源氏に対してもゆがんだ心を抱く。六条院の弓の会でも物思いに沈み、夕霧はそれを案じる。
柏木は、せめてあの猫だけでも手に入れたいと思い、女御や東宮のもとを訪れる。
語釈・文法注
文法
- 願望の「てしがな」(かのありし猫をだにえてしがな)
- 「せめてあの猫だけでも手に入れたいものだ」。
- 「てんつかる」(人にてんつかるべきふるまひ)
- 点を付けられる、非難される。
- 「ろなう」(ろなうかよひ給へる所あらむかし)
- 「論なく」のウ音便。言うまでもなく、当然。東宮は女三の宮の兄なので、似通ったところがあるだろうということ。
解説
若菜下の巻は、若菜上の巻の終わりの小侍従の返事を受けて始まる。柏木は宮への思いを抑えきれず、尊敬していた源氏に対しても「なまゆがむ心」を抱くようになる。この心のゆがみが、のちの密通へとつながっていく。
柏木が猫を手に入れたいと願うのは、宮の身代わりとしてである。宮本人には近づけない柏木が、宮の移り香のする猫に執着する姿は、哀れでもあり、危うくもある。東宮の顔に宮の面影を探す姿にも、柏木の思いの深さが表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、651–653頁(コマ36–37)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日