源氏物語 第33帖 藤裏葉(9)
明石の君の後見
明石の君は、雛人形のように美しい姫君の姿を夢のような心地で見て、涙が止まらない。長年さまざまに嘆き、つらい身と思っていた命も延ばしたいほど晴れやかで、住吉の神のご加護を思い知る。明石の君は、思いどおりに姫君の世話をし、行き届かないことのない利発さなので、東宮も姫君を格別に思う。張り合う御方々の女房たちは、身分の低い母が付き添っていることを疵と言うが、それに負けることもない。明石の君は、姫君の周囲を当世風に、奥ゆかしく整え、殿上人たちも心を寄せる。紫の上もしかるべき折には参内し、明石の君とも打ち解けていく。源氏は、入内がかない、夕霧も落ち着いたので、今は出家の本意を遂げようと思う。紫の上には秋好中宮が、姫君には明石の君が、花散里には夕霧がいるので、皆安心だと思う。

- 1いといといと美美うつくしげしげしげにににひゝなひゝなひいなのののやうやうようなるなるなる御御おん有樣有樣ありさまををを夢夢ゆめののの心地心地ここちしししててて見見み奉奉たてまつるるるももも、、、淚淚なみだのみのみのみとゞまらとゞまらとどまらぬぬぬはははひとつひとつひとつものものものとととぞぞぞ見見みえええざりざりざりけるけるける。。。年年とし頃頃ごろよろづよろづよろずににに歎歎なげきききししし罪罪つみさまざまさまざまさまざまうきうきうき身身みととと思思おもひひいくしくしくしつるつるつる命命いのちももも延延のべべべまほしうまほしうまほしゅうはればれしきはればれしきはればれしきにににつけつけつけてててまことにまことにまことに住住すみ吉吉よしののの神神かみもももおろかおろかおろかならならならずずず思思おもひひい知知しらららるるる。。。
- 2思思おもふふうさまさまさまにににかしづきかしづきかしずき聞聞きこえええててて心心こころおよばおよばおよばぬぬぬ事事ことはははたたたをさをさをさをさおさおさなきなきなき人人ひとのののらうらうしさらうらうしさろうろうしさなれなれなればばば、、、大大おおかたかたかたのののよせよせよせおぼえおぼえおぼえよりよりより始始はじめめめ、、、なべてなべてなべてならならならぬぬぬ御御おん有樣有樣ありさまかたちかたちかたちなるなるなるををを、、、宮宮みやももも若若わかききき御御おん心地心地ここちにににいといといと心心こころことことことににに思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまへへえりりりいどみいどみいどみ給給たまへへえるるる御御おんかたがたかたがたかたがたののの人人ひとなどなどなどははは、、、このこのこの母母はは君君きみのののかくかくかくてててさぶらひさぶらひさぶらい給給たまふふうををを疵疵きずにににいひいひいいなしなしなしなどなどなどすれすれすれどどどそれそれそれにににけたけたけたるるるべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。
- 3今今いまめかしくめかしくめかしくならびならびならびなきなきなきことことことをををばばば更更さらにににもももいはいはいわずずず、、、心心こころにくゝにくゝにくくよしよしよしあるあるある御御おんけはひけはひけわいをををはかなきはかなきはかなきことことことにににつけつけつけてててもももあらまほしくあらまほしくあらまほしくもてなしもてなしもてなし聞聞きこえええ給給たまへへえれれればばば、、、殿上人殿上人てんじょうびとなどなどなどももも珍珍めずらしきしきしきいどみいどみいどみ所所どころにてにてにてとりどりとりどりとりどりにににさぶらふさぶらふさぶらう人々人々びとももも心心こころをををかけかけかけたるたるたるににに、、、女房女房にょうぼうののの用意用意ようい有樣有樣ありさまさへさへさへいみじくいみじくいみじくとゝのへとゝのへととのえなしなしなし給給たまへへえりりり。。。うへうへうえもももさるべきさるべきさるべきをりふしをりふしおりふしにににははは參參まいりりり給給たまふふう。。。御御おんなからひなからひなからいあらまほしくあらまほしくあらまほしくうちうちうち解解とけけけ行行ゆくくくにににさりとてさりとてさりとてさしさしさしすぎすぎすぎものものものなれなれなれずずず、、、あなづらはしかるあなづらはしかるあなずらわしかるべきべきべきもてなしもてなしもてなしはたはたはたつゆつゆつゆなくなくなく、、、怪怪あやしうしうしゅうあらまほしきあらまほしきあらまほしき人人ひとののの御御おん有樣有樣ありさま心心こころばへばへばえなりなりなり。。。
- 4おとゞおとゞおとどももも長長ながからからからずずずのみのみのみおぼさおぼさおぼさるゝるゝるる御御おん世世よのののこなたこなたこなたにににとととおぼしおぼしおぼしつるつるつる御御おんまゐりまゐりまいりのののかひかひかいあるあるあるさまさまさまににに見見み奉奉たてまつりりりなしなしなし給給たまひひいててて、、、心心こころからからからなれなれなれどどど世世よににに浮浮うきききたるたるたるやうやうようにてにてにて見見み苦苦ぐるしかりしかりしかりつるつるつる宰相宰相さいしょうののの君君きみももも、、、思思おもひひいなくなくなくめやすきめやすきめやすきさまさまさまににに靜靜しずまりまりまり給給たまひひいぬれぬれぬればばば御心御心みこころおちゐおちゐおちいはてはてはて給給たまひひいててて今今いまはははほほほ意意いももも遂遂とげげげなむなむなんとととおぼしおぼしおぼしなるなるなる。。。對對たいののの上上うえののの御御おん有樣有樣ありさまのみのみのみ捨捨すててて難難がたさささにににももも中宮中宮ちゅうぐうおはしませおはしませおわしませばばばおろかおろかおろかならならならぬぬぬ御御おん心心こころよせよせよせなりなりなり。。。このこのこの御御おん方方かたにににももも世世よににに知知しららられれれたるたるたる親親おやざまざまざまにににはははまづまづまず思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふうべけれべけれべければばば、、、さりともさりともさりともおぼしおぼしおぼしゆづりゆづりゆずりけりけりけり。。。夏夏なつののの御御おん方方かたののの時々時々ときどきにににはなやぎはなやぎはなやぎ給給たまふふうまじきまじきまじきももも、、、宰相宰相さいしょうのののものしものしものし給給たまへへえばばばととと皆皆みなとりどりとりどりとりどりにににうしろめたからうしろめたからうしろめたからずずず覺覺おぼしししなりなりなり行行ゆくくく。。。
現代語訳
明石の君は、たいそうかわいらしく雛人形のようなご様子を、夢のような気持ちで拝見するにつけても、涙ばかりが止まらないのは、うれしい時の涙と悲しい時の涙とは同じものとは見えないのだった。長年何かと嘆いてきた罪も、さまざまにつらい身だと思い沈んでいた命も、延ばしたいほど晴れやかであるにつけて、本当に住吉の神のご加護もおろそかではないと思い知られる。
思いどおりにお世話申し上げて、行き届かないことはほとんどない人の利発さなので、世間一般の信望をはじめとして、並々でないご様子やご容貌であるのを、東宮も若いお心に、たいそう格別にお思い申し上げていらっしゃる。張り合っていらっしゃる御方々の女房などは、この母君がこうしてお仕えしていらっしゃるのを疵として言い立てたりするけれど、それに打ち消されるはずもない。
当世風で並ぶものがないことは言うまでもなく、奥ゆかしく由緒ある姫君のご様子を、ちょっとしたことにつけても申し分なくお扱い申し上げなさるので、殿上人なども珍しい風流の競い所として、それぞれお仕えする女房たちにも心をかけているが、明石の君は、女房たちの心づかいや様子までも、たいそうよく整えさせなさった。紫の上も、しかるべき折々には参内なさる。お二人の仲は申し分なく打ち解けていくけれど、それでも明石の君は出過ぎて馴れ馴れしくすることもなく、軽んじられるような振る舞いもまったくなく、不思議なほど申し分のない人のご様子や心ばえである。
大臣(源氏)も、長くはないとばかりお思いになっているご寿命のうちにと願っていらっしゃった姫君の御入内が、かいのある様子にお見届けになって、自分の心からとはいえ、身が定まらず見苦しかった宰相の君も、心配なく、見苦しくない様子に落ち着きなさったので、お心もすっかり安心なさって、今は出家の本意も遂げようとお思いになる。対の上(紫の上)のご様子だけが見捨てがたいけれど、秋好中宮がいらっしゃるので、並々でないご後見となる。姫君の御方にも、世に知られた親として、まず紫の上を思い申し上げなさるはずなので、それでもとお任せになった。夏の御方(花散里)が、時々に華やかになさることはないだろうけれど、宰相がいらっしゃるからと、皆それぞれに心配はないとお思いになっていく。
意訳
明石の君は、美しい姫君の姿に涙を流し、住吉の神の加護を思い知る。明石の君は姫君の周囲を見事に整え、紫の上とも打ち解けていく。
源氏は、入内がかない、夕霧も落ち着いたので、出家の本意を遂げようと思い、女君たちの後見を思い定める。
語釈・文法注
文法
- 強意の「なむ」(ほ意も遂げなむ)
- 強意の「ぬ」の未然形+意志の「む」。「本意を遂げてしまおう」。
- 「さりとも」(さりともおぼしゆづりけり)
- 「それでも」。自分がいなくなっても、という気持ちを含む。
解説
明石の君の喜びは、長年の忍耐の報いである。明石の浦で源氏と出会い、娘を紫の上に託し、身分の低さを嘆いてきた明石の君が、ようやく娘のそばに仕えることができた。住吉の神への感謝は、明石の入道の祈願がかなったことを示している。
源氏が出家を思い立つのは、栄華の頂点にあって、すべての願いがかなったからである。しかし、この出家の願いは、次の若菜の巻以降、女三の宮の降嫁などによって、容易にはかなえられないことになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、578–581頁(コマ294–295)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日