源氏物語 第33帖 藤裏葉(8)
明石の姫君の入内
入内には紫の上が付き添うべきだが、いつまでも宮中に留まることはできない。源氏は、この機会に実母の明石の君を後見として付き添わせようと考える。紫の上も、明石の君が娘と離れて嘆いているだろうし、姫君ももう母を恋しく思う年頃だと思い、源氏に、明石の君を付き添わせるよう勧める。源氏はよく気がついたと喜び、明石の君に伝えると、明石の君は願いがかなったとたいそう喜んで準備をする。尼君も、姫君の行く末を見届けたいと命を長らえて祈っていた。入内の夜は紫の上が付き添い、明石の君は、輦車に乗る紫の上の後から歩いて従うが、自分が姫君の玉の疵になることを心苦しく思う。三日後、紫の上が退出し、入れ替わりに参上した明石の君と初めて対面する。二人は互いの気高さを認め合い、打ち解けるきっかけとなる。明石の君は、輦車を許されて退出する紫の上の儀式を見て、やはり身分の違いを思う。

- 1かくかくかくててて御御おん參參まいりりりにににははは北北きたののの方方かたそひそひそい給給たまふふうべきべきべきををを常常つねににに長々長々ながながしくしくしくはははえええ添添そひひい侍侍さぶらひひい給給たまははわじじじ。。。かゝるかゝるかかるついでついでついでにににかのかのかの御御おん後後うしろ見見みをををややや添添そへへえましましましとととおぼすおぼすおぼす。。。上上うえもももつひにつひについにあるあるあるべきべきべきことことことのののかくかくかく隔隔へだたりりりててて過過すぐしぐしぐし給給たまふふうをををかのかのかの人人ひともももものしものしものしととと思思おもひひい歎歎なげかかかるるるらむらむらん、、、このこのこの御心御心みこころにににももも今今いまはははやうやうやうやうようよう覺束覺束おぼつかなくなくなく哀哀あわれにににおぼしおぼしおぼし知知しるるるらむらむらん、、、かたがたかたがたかたがた心心こころおかおかおかれれれ奉奉たてまつらららむむんもももあいなしあいなしあいなしととと思思おもひひいなりなりなり給給たまひひいててて
- 2「「「このこのこのをりをりおりににに添添そへへえ奉奉たてまつりりり給給たまへへえまだまだまだいといといとあえかあえかあえかなるなるなる程程ほどもももうしろめたきうしろめたきうしろめたきににに、、、侍侍さぶらふふう人人ひととてとてとてももも若々若々わかわかしきしきしきのみのみのみこそこそこそ多多おおかれかれかれ。。。御御おんめのとめのとめのとたちたちたちなどなどなどももも見見み及及およぶぶぶことことことののの心心こころいたるいたるいたる限限かぎりりりあるあるあるををを、、、みづからみづからみずからはははえええいといといとしもしもしもさぶらはさぶらはさぶらわざらざらざらむむん程程ほどうしろやすかるうしろやすかるうしろやすかるべうべうびょう」」」ととと聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、いといといとよくよくよくおぼしおぼしおぼしよるよるよるかなかなかなととと覺覺おぼしししててて、、、さささなむなむなんとととあなたあなたあなたにににももも語語かたらひらひらいのたまひのたまひのたまいけれけれければばば、、、いみじくいみじくいみじく嬉嬉うれしくしくしく思思おもふふう事事ことかなひかなひかない侍侍はべるるる心地心地ここちしししててて、、、人人ひとのののさうぞくさうぞくそうぞくなにはなにはなにわのののことことことももも、、、やんごとなきやんごとなきやんごとなき御御おん有樣有樣ありさまににに劣劣おとるるるまじくまじくまじくいそぎいそぎいそぎたつたつたつ。。。
- 3尼尼あま君君きみなむなむなん猶猶なおこのこのこの御御おんおひおひおいさきさきさき見見み奉奉たてまつらららむむんののの心心こころ深深ふかかりかりかりけるけるける。。。今今いま一一ひと度度たび見見み奉奉たてまつるるる世世よもももやややととと命命いのちをををさへさへさへまうねうまうねうもうにょうなしなしなしててて念念ねんじじじけるけるけるをををいかにいかにいかにしししてててかかかはははととと思思おもふふうももも悲悲かなししし。。。そのそのその夜夜よははは上上うえそひそひそいててて參參まいりりり給給たまへへえりりり。。。御御おんてててぐるまぐるまぐるまにににももも立立たちちちくだりくだりくだりうちうちうち步步あゆみみみなどなどなど人人ひとわろかるわろかるわろかるべきべきべきをををわがわがわがためためためははは思思おもひひい憚憚はばからららずずず、、、唯唯ただかくかくかく磨磨みがききき奉奉たてまつりりり給給たまふふう玉玉たまのののきずきずきずにてにてにて、、、わがわがわがかくかくかくながらふるながらふるながらうるをををかつかつかつはははいみじういみじういみじゅう心心こころ苦苦ぐるしうしうしゅう思思おもふふう。。。
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現代語訳
こうして御入内には、北の方(紫の上)が付き添いなさるはずだけれど、いつまでも長く付き添ってお仕えなさることはできないだろう。源氏は、この機会に、あの実母を御後見として付き添わせようかとお思いになる。紫の上も、いずれはそうなるはずのことが、このように隔てられたまま過ごしていらっしゃるのを、あの方も不快に思って嘆いていらっしゃるだろう、姫君のお心にも、今はだんだん実母が気がかりで、しみじみと恋しくお思いになっているだろう、どちらからも心隔てを置かれ申し上げるのもつまらないとお思いになって、
源氏に「この機会に、実母を付き添わせ申し上げなさいませ。姫君はまだたいそうか弱い年頃なのも心配ですのに、お仕えする女房といっても、若い者ばかりが多いのです。御乳母たちなども、気がつくことには限りがありますから、私がそれほどずっとはお仕えできない間も、安心できるでしょう」と申し上げなさるので、源氏は、たいそうよく思いつきなさったものだとお思いになって、こういうことだと、あちら(明石の君)にもお話しになると、明石の君はたいそううれしく、思うことがかなったような気がして、女房の装束や何やかやのことも、高貴な紫の上のご様子に劣らないように準備を始める。
尼君(明石の尼君)は、やはりこの姫君の行く末を見届けたいという心が深かった。もう一度お目にかかる世もあろうかと、命までも執念深く長らえて祈っていたのを、どうしたら会えようかと思うのも悲しい。その夜は、紫の上が付き添って参内なさった。明石の君は、紫の上の御輦車にも後れて歩いて従うなど、体裁の悪いことを、自分のためには気にしないが、ただこのように磨き上げなさる玉のような姫君の疵として、自分がこうして生きながらえているのを、一方ではたいそう心苦しく思う。
御入内の儀式は、人の目を驚かすほどのことはするまいと控えめにお思いになるけれど、自然と世の常のさまではないのだった。限りなく大切にお世話して据え申し上げなさって、紫の上は、本当にしみじみとかわいいと思い申し上げなさるにつけても、人に譲るまいと、本当に自分にこのような子があったらとお思いになる。大臣も宰相の君も、ただこの一事だけを、物足りないことだとお思いになった。
三日を過ごして、紫の上は退出なさる。入れ替わって明石の君が参上なさる夜、ご対面がある。紫の上は「このように姫君が大人びていらっしゃる様子に、年月の程も知られますので、よそよそしい隔ては残らないでしょう」と、親しみを込めておっしゃって、お話などなさる。これも打ち解けた初めであろう。明石の君が物などを言う様子など、なるほど源氏が大切にするはずだと、紫の上は目を見張ってご覧になる。
また、たいそう気高く、盛りのご様子を、互いにすばらしいと見て、明石の君は、多くの女君の中でも、すぐれたご寵愛で、並ぶ者のない地位に定まっていらっしゃったのも、もっともなことだと思い知らされるにつけても、これほどまでに肩を並べ申し上げる宿縁は並々ではないと思うものの、紫の上が退出なさる儀式が、たいそう格別に威厳があり、御輦車なども許されて、女御のご様子と変わらないのを思い比べると、さすがに自分の身の程である。
意訳
紫の上の勧めで、実母の明石の君が姫君の後見として宮中に付き添うことになり、明石の君はたいそう喜ぶ。
入内から三日後、紫の上と明石の君は初めて対面し、互いの気高さを認め合って打ち解ける。
語釈・文法注
文法
- 反実仮想の「ましかば」(かゝる事もあらましかば)
- 「このような子があったら」。紫の上が子のないことを嘆く。
- 反語の「やは」(契おろかなりやは)
- 「宿縁は並々であろうか、いや、並々ではない」。
解説
紫の上が自ら、明石の君を後見として付き添わせるよう勧める場面は、紫の上の度量の大きさを示している。長年娘を育ててきた紫の上が、実母に姫君を委ねる決断には、深い愛情と寂しさとが込められている。
紫の上と明石の君の初めての対面は、物語の重要な場面である。互いに相手のすぐれた人柄を認め合いながらも、明石の君は身分の違いを思い知らされる。二人の関係は、この後も微妙な均衡を保ち続ける。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部1(源氏物語 上) 板倉屋書房、明治36年(1903)、576–579頁(コマ293–294)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日